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ゆがプリ! 〜目指すしかない、ノーマルエンド!〜  作者: みちはずれ
2.百合原 橙也 編
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6.選択肢は正解だったのでしょうか



 白雪と一緒に図書室に訪れたのは初めてではない。彼女は熱心な読書家らしく、休み時間や放課後に付き合わされることも少なくはなかった。今日はそれに何故か百合原も加わっている。


「図書室なんかおもしれーの……?」


 昼休みの図書室は人気が少ない。いたとしても図書当番の生徒か、よっぽど本が好きな生徒くらいだった。場違いなオレンジ頭は萎縮して小声で呟くが、誰も反応はしない。白雪がカウンターで本を返している背を見ながら、懲りずに百合原はぼやいた。


「白雪姫って何してても様になるよなぁ」

「ほんとにね」

 同意するべきところはひかりも同意してやる。二人はうんうん、と大仰に頷き合う。彫刻のような横顔は女神様と言っても差し支えないくらいだ。


「……二人とも、なにしてるの?」

「うああ!?」


 白雪に見惚れている二人の間にぬっと押し入ってきたのは、灰司棗だった。静かな空間に百合原の声が響き渡れば、軽蔑の視線が四方八方から突き刺さる。ひかりは肘で百合原の脇腹を小突いた。


「……っ! お、驚かせんじゃねーよ、棗っ」

「ごめんごめん、珍しいセットだからつい」


 あははと笑う灰司を小声で叱る百合原。普通逆ではないのか? なんて失礼なことをひかりは考えていると、本を返し終えた白雪がこちらに駆け寄って来た。


「ほんとうるさい。出禁になればいいのに」

「ご、ごめん……コイツがびびらしてくっからさぁ……」

「ああ、橙也は白雪さんに付いて来たのか。そうじゃないと図書室なんて来ないもんね?」

「うるせーよ」


 いやに親しげな灰司と百合原の会話。ひかりは白雪と顔を見合わせて首を傾げると、灰司は持ち前の察しの良さで二人の疑問に答えてくれた。


「僕と橙也は小学校から一緒なんだ。仲良しなんだよ」

「別に仲良くねーし」

 そうやってそっぽを向く百合原の頬は少し赤い。ひかりは意外な交友関係にぱちぱちと瞬きをする。

「へえ、二人とも結構系統違うのにね」

「……どういう意味だよ」

「そのまんまの意味。不良と優等生、バカと頭脳明晰」

「テメー!!」

「「静かに」」


 白雪と灰司の重なった声が静粛を促す。姫と王子に注意されれば従わぬものなどいない。先に図書室を後にする姫と王子の後ろをシュンとした下民たちは、トボトボとついて歩いた。


「ひかり」


 図書室の外に出ると、辺りはざわざわと小さな騒がしさを取り戻す。その中でひかりを呼ぶ白雪の声は浮いていて、どきりと緊張が走る。


「は、はい……なんでしょう」

「このバカの相手するなって何度も言ってるよね? 無視しとけばいいんだよ、相手をするからつけ上がるの」

「おっしゃる通りで……」


 その"バカ"の前でお説教しないでほしい。けれど、バカはすっかりしょげたひかりと違い、打たれ強く元気に拳を握っていた。


「白雪姫! 俺は百合原橙也って名前で、」

「興味ないから」

「でも覚えてほしい、俺白雪姫と仲良くなりてーんだ!」

「私はなりたくない」


 熱気ある百合原のアピールに白雪は見向きもしない。白雪の視線はひかりにずっと向いている。正直怖いので此方を見ないでほしいのだが、白雪はひかりを見つめるのをやめなかった。

 そんな三角関係(?)に一石を投じる事ができるのは、やはりこの男くらいだった。


「まあまあ、落ち着いて。あのさ、良ければテストも近いし四人で勉強会しない?」


 ひかりに釘付けだった白雪の視線が動く。間に入ってきた灰司に向かって射殺すように。

 ひかりは声にならぬ悲鳴を上げた。白雪の冷気で凍え死んだら、灰司は責任を取ってくれるのだろうか。


「はあ? どうしてそうなるの? 絶対に嫌」

「橙也は悪い子じゃないし、良ければ少しくらいはチャンスくれないかな?」

「悪い子とか良い子とかの問題じゃないの。私の世界にコイツは必要ない。勉強会ならひかりと二人でやるから、ねえひかり?」


 最悪なタイミングでバトンを渡されてしまった。

 灰司と白雪の視線が一斉にこちらに向く。その後ろで百合原は呑気に笑みを見せていた。頼むから一発だけ殴らせてほしい。


「ひかり、早く答えて」

 二人でやろうと言えば彼女は喜んでくれる。


「相良さん、良ければ仲間に入れてくれないかな?」

 ノーマルエンドに向かうのに四人で勉強会をする必要はないだろう。


 しかし、ひかりが意を決して「いや、二人で……」と口を開きかけたところで、灰司は王子様スマイルを崩さずに追い討ちをかけた。


「あの雨の日も傘に入れてくれたもんね、相良さんは優しいから」


 ひかりの時は止まった。

 目の前には相変わらずのピンク枠の選択肢。



 1「シロちゃんとやるよ」

 2「みんなでやったほうが捗るかも」



 選択肢を指で押す。

 ひかりはすでに白雪のご機嫌を取る方法を考えていた。


「み、みんなでやった方が捗るかも……?」


 白雪の美しい顔が見る見るうちに険しくなっていく反面、灰司は変わらぬスマイルをひかりに見せた。


 そういえばそうだった。百合原もこの灰司でさえもひかりの知らぬ歪みを抱えている。

 ひかりは甘酸っぱいリンゴの味を思い出して、ズキズキと痛む頭を押さえたのであった。



 


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