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醜と美そして陰謀論、を物語る。  作者: 神谷尚明
第三章 反逆×クーデタ×陰謀
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敵を全知全能の悪魔化するこれも一つの陰謀論。私はいつも監視されている!

 

 以下のような言説がある。


 女の方が観察力がありそれは女の勘といったもので……と言われるものの神話的といえる。


 それは男女の脳の差というよりかはシンプルにその対象を見ている頻度によるものが大半である。毎日12時間子供を見ている人と毎日1時間子供を見ている人であったら、どちらのほうが些細な変化に気づけるかどうかはまず前者であろう。


 勘とか超能力ではなく時間をかけることによって観察力は磨かれるという単純極まるお話。医者も老人の方が良いとはこれによる。


 よく聞くアイドルの顔が見分けがつかないというのも加齢とかが原因ではなくその類のものを見ている頻度による。


 中年になると知り合う若者の数が減少するのだから若い子の顔に見分けがつかなくなるのは当然である。


 逆もそうで若者も中年の知り合いが少ないため顔の見分けがつかないのと同じこと。見分けがつかないからおっさんはおっさんと雑にまとめ、理解できないから最近の若者はみんな同じでみんな駄目、と人類史におけるいつもの繰り返し。


 柴犬だって10頭と生活していたらすぐにそれぞれの違いの認識がつくだろうし、アイドルグループだって応援し始めたら同じ衣装を着ているが各々がきちんと確立させている個性にすぐに気づくのだ。


 興味がなければ個性は見分けられず、なろう小説は全部なろう系でゲーム機は全てファミコンで四輪なら車で二輪ならバイクか自転車で、全部一緒の無関心領域でお隣から聞こえる無慈悲な銃声も凄惨な悲鳴だって関心なければただの生活音。


 知らないからこそ同じに見える、関心がないからこそ一緒に見える、愛がないからこそ変化に気づけない。


 一言にいえば愛がなければそれは存在しない、そう、愛こそすべて、と洋楽のタイトルみたいな結論に到達。



 さてサビはアカメには愛は抱いていないが警戒心を抱き恐怖という関心があるからこそ小さな変化に気づいた。


 もしかしてこの人……自分に何かやましいことを抱いているのでは?


 いつもなに仕出かすからよくよく見ておかないとならないからなぁ……そう感じ取った嫌われる勘の良いガキ思考をしながら顔を伏せたまま尋ねた。


「次期王の件はどなた様に御決定なさりましたか?」


「うむ……ジン王子が次期王となった」


 アカメはこの想定された問答を帰路で繰り返し行った練習通りにやれた。


 いつも以上に厳めしい態度で以って答え次の質問にも構えてみせて、さぁどっからでもいくらでも尋ねるが良い全てはじき返してやるわ! この意気込みは完璧であるも、しかし足元がおろそかであった。


 不要なそわそわとした動きをしているのをサビは見た。とりつくろった顔など見ても分からぬ、だから反射的な部分に注目する。そうだとも足元を見ているわけだ。


 無論サビはアカメの答えに驚愕している。馬鹿な……そんなことはあり得ない……と。


 しかしそれと同時に観察している。アカメの今の動きは……何かを誤魔化している反応かもしれない。


 なんたって浮き足立っているという表現そのままに地に足がついていないのだ。


 この人は普段はこういう動きはしない。だがこれはただ単に足がかゆかったり痛かったからに過ぎないものである可能性は高い。


 そもそもなんでもかんでもいちいちメッセージとして受け取り己の脳内であれこれと接続させて世界を解釈する、これこそ陰謀論の一里塚どころか到着地のど真ん中1-1への最短ルートだ。


 勉強家が陰謀論にハマるのは知識のオーバードーズと言える。勉強のしなさすぎは良くないがしすぎもよくはない。


 そうだとも大事なのは世界はお前にメッセージになど出していないであるし、それはお前がお前自身にメッセージを出しているに過ぎないと認識すること。


 ここでの大事な認識とは、とサビは落ちかけている自身に言いきかせる。


 自分はこのアカメという人のことを信頼していないから言動から嘘のメッセージを受け取りたがっている、こうである。


 そうだ自分はテツが王になれないことに対して信じられないからこそアカメから不信のメッセージを求めている。


 それこそがこの浮足であり、ここから全てを解釈しようとしている。いけない……だからここではこう言った方が良い、とサビは顔を上げた。


「兄(アニ)さん、浮き足立っていますが、どうしました?」


「なななななな、何を言ってるんだ!」


 あまりにも想定外の返事にまるで後頭部への強打を受けたかのように途端に表情が崩壊し狼狽状態に陥りその場で尻餅。


 驚いたサビは立ち上がった。するとどうだろう、アカメは見上げることによってただでさえデカいサビがさらにデカく見える。


 もはや怪物でありアカメの脳内では恐怖心からめくるめく妄想が展開されていく。


 もう、バレているのではないのか? と。どこかから話が漏れてサビの耳に入ったのではないのか? と。


 それは常識的に考えてあり得ない話である。だいたい誰よりも早く帰ったのがアカメなのであり彼より先にサビの耳にチクるやつなどいない。


 しかし不安と恐怖で心がいっぱいな人はそういった常識的な判断などできはしない。


 悪い方へ悪い方へと想像力を膨らませる。心の弱い人間は物事を必ず悪い方向に全力で働かせる。


 つまりサビは既に自分の犯行について何もかもを知っているのであるが、知らないふりをしている。


 だってそうだろう? こいつはテツが落選したことに反応していない、まずそこを聞くはずだ。俺はその経緯を答えようと待ち構えていた。


 ところがこいつは俺に対して「旦那ぁ……あんた浮き足立っていますぜぇ、そら足元がお留守ですよ!」とすっ転ばせにきたじゃないか!


 あっ俺が勝手に転んだか……いや違う! サビに足払いされたんだよ! 嘘はいけませんぜってな!


 そこは足と口の違いに過ぎないし実際俺は転んだのだから同じだ!


 そうだこの醜い復讐鬼なこいつは俺の罪を全部知っている! 俺はこいつに裁かれる! 先ずは前祝いとして血祭りにあげられる!


「サッサビ……許してくれ、テツは王ではないんだ」


「兄(アニ)さん、大丈夫ですか? ほらこの手に掴まって」


「俺を捕まえないでくれ! あと俺の話をよく聞け! テツが王になれないのは仕方がないんだ!」


「はい、聞いていますよ。テツが王になれなかったことは」


「やっぱり聞いていたのか! お前は誰からそれを知った! 」


「あの、いまここで兄(アニ)さんからですが」


「お前は人の心を読めるとでもいうのか!」


 いやいやそんな超能力なんて用いませんよ。もちろん小動物を用いて声を拾いもしません。気づきませんでした? そのこめかみの突起部分。そうですそこ! その埋め込まれたICチップのおかげであんたの行動は全てマルっとお見通しなわけですよ!


 ……とまぁアカメは現在混乱中というか陰謀論に落ちている真っ最中。私はずっと誰かに監視されているんだ! そりゃ自身が自分を監視しているからこれはメタ認知の歪みと言えよう。


 そう敵を全知全能の悪魔化する、これも一つの陰謀論。なんでも知っていてなんでもできる……だからあいつらを差別して弾圧しなきゃ、というなんとも回りくどい論理展開なので頭を使う必要がある。


 そこにあるのは恐怖や不安といったもので脅威論の種類なのだろう。


「あなたどうしたの? 卒中?」


 ここで妻のカツテが現れて夫が病気ではないかと心配しに来た。


「おじ様どうしたの? 兄さん、なにかしたの?」


 次にテツが現れ養父を心配しつつ兄をちょっと非難した。


「疲れたからじゃない。お母さんとテツ、それにサビ、お父さんを寝室まで運ぼうか」


 それからクレナイが現れ無感動に実際的な指揮を執った。


「いや、大丈夫だ。そのだ……テツ、お前は王ではないんだ」


「うん、そうだね。兄さん、おじ様にプレッシャーを掛け過ぎだよ。きっと圧が強くて腰を抜かしちゃったんでしょ」


「テツは王ではないんだ、王ではないんだ……」


「分かったよお父さん。大丈夫そうなら今後のことについて会議を開くから出席してね。テツ君がどうやって王族から王になるかというやつ、まぁお父さんは座っているだけでいいから。王族会議のように特にお願いすることないから大丈夫」


 ……誰もアカメがあのような働きをしたとは微塵にも想像しなかった。外で仕事が出来るお父さんも家ではこう扱われがち。



「次回、テツの美貌を活かして王家へのお婿さん作戦でいこう。どちらのお姫様がいいのやら? とりあえずコンが地雷だとはみなさんご承知の通りだろうが、どうなる」



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