魂天神社の「参拝客」という名のカモたち
一姫が語る神社の「再建計画」は、参拝客を麻雀でカモにするという、およそ神職とは思えない世俗的なものでした。真白を「代打ちマシーン」として利用しようとする一姫の目論見を見抜いた仲間たちは、逆転の発想を提案します。記憶喪失の少女が神社の「真の主」となり、自堕落な猫を更生させる――。魂天神社の運営体制を根底から覆す、新たな統治が始まろうとしていました。
一姫がドヤ顔で説明するその内容は、およそ神社の神職とは思えない世俗的なものでした。
「参拝=対局」の方程式:
「いいかニャ? この一翻市において、神様に願いを届けるには『麻雀』で誠意を見せるのが常識ニャ! お賽銭箱に金を入れるより、一姫と打って点棒を差し出す方が、よっぽど運気が上がるって評判(一姫調べ)ニャ!」
来るのは「迷える子羊」ではなく「飢えた雀士」:
「ここに来る連中はみんな、最近ツイてないとか、役満を振り込んだとか、そんな奴らばっかりニャ。そいつらを返り討ちにして、身も心も(あと財布も)真っ白にして帰してあげるのが、一姫たちの聖なる仕事ニャ!」
「あんたは最高の『客寄せパンダ』ニャ!」:
「さっきみたいな清楚な私服で、弱々しく『ロンです……』なんて言ってみろニャ。男たちは『次は勝てる!』と勘違いして、次から次へと点棒を持ってやってくる無限ループが完成するニャ! これぞ一姫流、神社の再建計画ニャ!」
琳琅(幼龍):
「つまりね、若き雀士。一姫は自分が負けすぎて減った神社の運営費を、きみのその『圧倒的な強運』で稼がせようとしてるんだよ。悪い猫だよねぇ。……でも、確かにきみの打牌なら、あのアホな男たちが必死に貯めた貯金も、あっという間に『点心代』に変わっちゃうかも!」
ワン次郎:
「……お嬢さん、一姫の言葉を真に受けてはいけないワン。だが悲しいかな、この街では神社ですら雀荘化しているのが現実だワン。放っておくとあのアホ猫は参拝客を怒らせて神社を燃やされかねないワン。お主が適度に勝って、穏便に帰してあげるのが一番の平和解決だワン」
一姫が「さあ、まずは明日の『カモ……じゃなくて参拝客』を迎えるための予習ニャ!」と、変な作戦会議を始めようとしています。
新しい私服の袖をぎゅっと握りしめ、ジト目で一姫を凝視すると、境内を吹き抜ける夜風が少しだけ冷たく感じられました。
「……あの、今のお話を聞いていると、一つ大きな疑問が湧いてきたのですが。一姫さん……もしかして私を『記憶喪失の精霊』として召喚したのは、単に神社の経営難を立て直すための……つまり、効率的にお賽銭(点棒)を稼ぐための『代打ちマシーン』が必要だったから、ではないですよね……?」
その核心を突いた問いに、一姫の動きがピタリと止まりました。
一姫:
「にゃ、にゃにゃにゃにを言ってるんだニャ!? 心外だニャ! 一姫は純粋に、一翻市の平和と、最強の運を求めて儀式をしただけだニャ! ……た、たまたま、召喚されたあんたが麻雀の天才で、たまたま神社にお金がなくて、たまたま明日から予約がいっぱいなのは、全部『運命』の導きニャ!」
(冷や汗を流しながら、視線を泳がせ、手に持った「参拝予約リスト」を背後に隠そうとする)
ワン次郎:
「……お嬢さん、鋭いワン。一姫の顔を見るがいいワン。あれは完全に『図星』を突かれた時の顔だワン。そもそもこの一姫、自分の肉まん代を麻雀で使い果たして、神社の屋根の修理代すら怪しい状態だったのだワン」
(ため息をつきながら、事実を淡々と暴露する)
かぐや姫:
「くすくす、お主も災難じゃな。このちんちくりん(一姫)の強欲さは、月の都まで届くほどじゃ。お主を召喚したのは事故かもしれぬが、それを『金蔓』として利用しようとするあたり、神の使いとしての品格は微塵も持ち合わせておらぬようじゃ」
(優雅に扇子を動かし、一姫の狼狽ぶりを愉悦の表情で眺める)
二階堂美樹:
「……ちょっと一姫、いい加減にしなさい。この子はまだ自分の名前すら思い出せていないのよ? それを客寄せパンダにするなんて、さすがに倫理観を疑うわ。……でも、あなた(主人公)」
「悔しいけれど、一姫の言う通り、あなたがここで『稼ぐ』のは、あなたの身を守ることにも繋がるの。一翻市で無一文の女の子が一人で生きていくのは、今の治安を見ればわかる通り、不可能に近いわ。ここを拠点にして、一姫を『管理』しながら、自分自身の情報を集めるのが一番の近道よ」
琳琅が、一姫が隠していた肉まんをこっそりつまみ食いしながら、妙案を口にします。
琳琅(幼龍):
「ねえねえ、だったらさ、立場を逆にしちゃえば? 一姫に働かされるんじゃなくて、きみがこの神社の『真の主』になって、一姫を召喚獣としてこき使うんだよ! きみが麻雀で勝って稼いだお金は、きみが管理する。一姫には、美味しいお店の情報を教える代わりに、掃除と洗濯を全部やらせる、とか!」
一姫:
「にゃ、にゃにぃー!? それじゃ立場が逆転ニャ! 一姫は神社の主だニャ!」
ワン次郎:
「……悪くないワン。むしろ、今のままではこの神社は破産するワン。お嬢さん、お主が財務大臣となって、このダメ猫を更生させる……というのはどうだワン?」
戸惑いながらも「主を変える」という大胆な提案に首を傾げると、境内の空気はさらに騒がしくなりました。一姫は尻尾を逆立てて、まるで自分の縄張りを荒らされた子猫のように激しく抗議します。
一姫の野望であった「真白を働かせて自分は肉まんを食べる」という計画は、真白の鋭い観察眼と仲間たちの支持によって脆くも崩れ去りました。今日から真白は、単なる「迷い人」ではなく、神社の未来を握る「代理主」としての道を歩み始めます。




