魂天神社の「実態」を巡る冷徹な分析
神社の主権を巡る争いは、意外な形で決着を迎えました。主の座を死守しようと必死に抵抗する一姫でしたが、琳琅が差し出した「お供え物」に隠された、恐るべき「不浄」を真白が発見します。一翻市の欲望にまみれ、管理を放棄された神社の実態に、真白の几帳面な魂が静かに、しかし激しく燃え上がりました。
一姫:
「猛反対だニャ! 断固拒否ニャ! この魂天神社は一姫の城だニャ! あんたみたいな『記憶喪失の精霊(仮)』に主の座を明け渡すなんて、神様もびっくりして天罰を落とすニャよ! 第一、お祓いとか祝詞とか、あんたにできるのかニャ!? 参拝客に『ロン』って言うだけじゃ、神社の権威は守れないニャ!」
一姫の必死の抵抗をよそに、周囲の面々はすでに「運営体制の刷新」に向けて動き出しています。
ワン次郎:
「案ずるなワン。お嬢さん、お主は何も宗教的な知識を学ぶ必要はないワン。そもそも一姫自身、お祓いと称して卓を囲み、参拝客の財布から点棒を吸い取っているだけだワン。お主がそこに座り、ただ静かに牌を打つだけで、あのアホ猫が暴走するよりよっぽど『神聖な静寂』が保たれるというものだワン」
二階堂美樹:
「そうよ。お祓いなんて形だけでいいの。『あなたの悪い運気を、この麻雀の対局で吸い取ってあげますね』って微笑んで、役満を直撃させてあげれば、客は勝手に救われた気分になって帰っていくわ。……むしろ、あなたが主になった方が、この神社の『収支』は劇的に改善されるはずよ。一姫、あんたは今日から『見習い巫女』に降格よ」
かぐや姫:
「くすくす、よいではないか。お主が主となり、このちんちくりん(一姫)を教育する。それがこの街に迷い込んだお主への、運命からの贈り物じゃ。お祓いができぬと言うなら、妾が少しばかり『月光の幻術』を貸してやろう。お主が牌を切るたびに桜を散らせてやれば、誰一人としてお主が素人だとは思うまい」
琳琅は、一姫が隠し持っていた「お供え物の高級まんじゅう」をちゃっかり見つけ出し、あなたに差し出します。
琳琅:
「ほら、食べて食べて! これからはきみがこの神社の『お財布』を握るんだから、遠慮はいらないよ。一姫が反対しても、私たちがきみを支持するから大丈夫。……それにさ、きみがお祓いできなくても問題ないよ。この街じゃ、負けた悔しさでお祓いのことなんてみんな忘れちゃうんだから!」
一姫は地面にひれ伏して「一姫の天下が……一姫の肉まん王国が崩壊するニャ……」と泣き喚いていますが、ワン次郎がそれを前足で優しく(物理的に)制圧しています。
琳琅が自信満々に差し出してきた「お供え物の高級まんじゅう」。それを手に取ろうとしたあなたの視線が、ふと柱に貼られた薄汚れたカレンダーと、箱の隅に印字された日付に釘付けになります。
「あ、あの……琳琅さん。……非常に言いにくいの、ですが……。それ、期限が……一ヶ月以上前に切れて、います。それに、残っている箱の中身をよく見ると……その、ふわふわした……カビのようなものが……」
真白の震える指摘に、その場の時間が凍りつきました。
琳琅:
「……えっ!? 龍の嗅覚をすり抜けるなんて、なんて高度な擬態をするまんじゅうなんだ……! うわっ、本当だ! 白い粉だと思ってたら、これ、動いてない!? ぺっ、ぺっ! 真白、教えてくれてありがとう……危うく龍の歴史がここで途絶えるところだったよ!」
ワン次郎:
「な、なんだとワン!? 一姫、お主、お供え物の管理すら放棄していたのかワン! 神社の主として、もはや一欠片の弁明の余地もないワン! 拙者が時々お腹を壊していたのは、お主の杜撰な管理のせいだったのかワン!」
一姫:
「にゃ、にゃにゃにゃ!? 違うニャ! それは熟成だニャ! 発酵食品だニャ! ……嘘だニャ、ごめんなさいニャ! 掃除しようと思ってたけど、麻雀のイベントが忙しくて、つい……」
(あまりの不潔っぷりに、擁護していた二階堂美樹ですら、そっと三歩後ろに下がった)
かぐや姫:
「……おぞましい。月の都では、このような不浄は万死に値するぞ。お主、やはりこの神社の主権を握るべきは、そのように『まともな目』を持ったお主しかおらぬようじゃな。このままでは、参拝客が救われる前にお腹を壊して全滅してしまうわ」
もはや、一姫に反対する権利など残されていませんでした。あなたは、期限切れの食べ物や埃まみれの祭壇を見て、記憶喪失の不安よりも「このままでは病気になる」という切実な危機感を抱きます。
「……決めました。とりあえず期間限定の『代理』ということで、私がこの神社の管理をさせていただきます。一姫さん……その巫女服、あとで全部まとめて洗濯しますから、今すぐ脱いで出してください。それと、明日の朝一番で、境内の全エリアを消毒します!」
一姫:
「にゃ、にゃあ……。洗濯されたら、一姫の『勝負の垢』が落ちて運気が下がるニャ……。でも、今のあんたの目は、役満を直撃させた時より怖いニャ。……わかったニャ、従うニャ」
二階堂美樹:
「いいわね、その意気よ。私も手伝うわ。まずはそのカビたまんじゅうを廃棄して、台所を徹底的に磨き上げましょう。……大丈夫よ、あなたのその『几帳面さ』があれば、この神社はすぐに一翻市で一番清潔な(そして一番勝てない)パワースポットになるわ」
役満で悪党を退けた真白が、次に挑む相手は「一姫のズボラ」という名の不浄でした。洗濯、消毒、徹底清掃。彼女の几帳面さは、荒廃した魂天神社に真の「神気」を取り戻すための最強の武器となります。記憶を失った少女は、図らずも「掃除と麻雀の鬼」として、この街の伝説への第一歩を踏み出したのでした。




