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白銀の正装と不穏な影の接近

魂天神社の片付けを進める真白は、埃を被ったタンスの中から、先代より伝わる白銀の「正装」の巫女服を見つけ出します。それは一姫の不潔な日常とは一線を画す、邪気を払うような気高き衣でした。仲間たちに促され、翌朝その袖を通すことを決意し、真白は深い眠りにつきます。しかしその一方で、昨夜の敗北を根に持つ裏社会の幹部たちが、理不尽な名目を掲げて神社を奪取しようと動き始めていました。

一姫が泣きべそをかきながらカビた箱を運び出し、琳琅がバタバタと羽を動かして埃を外へ追い出す中、真白は奥まった場所にある、ひときわ古びているものの手入れが行き届いた桐のタンスを見つけます。


「……あ、これ。一姫さん、このタンスは何ですか? 中に何か入っているみたいですけど……」


恐る恐るその引き出しを開けると、そこには一姫が着ている「勝負の垢」にまみれた(自称)巫女服とは全く別物の、月光を吸い込んで白銀に輝くような、凛とした空気を纏った数着の巫女服が収められていました。


「……わあ、綺麗。これ、一姫さんの予備ですか? でも、サイズも少し大きめですし、何より……まるで今日おろしたばかりみたいに真っ白で。あの、一姫さん。まさか私、これも着ないといけませんか……?」


一姫:

「にゃ、にゃにゃにゃ!? それは先代……いや、ずっと昔からこの神社に伝わる『正装』の巫女服ニャ! 一姫はサイズが合わないし、なんだか背筋が伸びすぎて肩が凝るから、ずっと奥に封印してたんだニャ!」


二階堂美樹:

「……信じられない。こんな宝物を、あんなカビた点心の隣に放置してたの? ……見て、この刺繍。ただの服じゃないわ。打牌の邪気を払う力が込められているような……。ねえ、あなた。それを着てみなさいよ。今のあなたの『静かなる強気』には、その私服よりもこっちの方がずっと相応しい気がするわ」


かぐや姫:

「ほう、これは見事な……。一姫のような俗物には決して着こなせぬ、高潔な衣じゃな。お主がこれを着て卓に座れば、それこそ本物の『神の化身』に見えるであろう。……くすくす、お主、恥ずかしいと言いながら、その瞳は少しだけその衣に惹かれておるのではないかえ?」


琳琅は、彼女が新しい私服を気に入っていることを知りつつも、その巫女服のあまりの美しさにワクワクが止まらないようです。


琳琅:

「着てみようよ、真白! この服、なんだかきみの『龍のオーラ』をさらに強くしてくれそう! お祓いなんてできなくても、これを着て座ってるだけで、相手は勝手に『この人には勝てない!』って絶望してくれるよ! これぞ一翻市流の心理戦、通称『見た目だけで飛ばす(ハコにする)』作戦だよ!」


「……もう、琳琅さんまで。……でも、確かに。明日、あのガラの悪い人たちが『参拝』に来るなら、この服を着ている方が『主』としての説得力は出るかもしれませんね。……一姫さん、一晩だけお借りしてもいいですか?」


一姫:

「にゃ、にゃはは……。いいニャよ。っていうか、その服に選ばれたのは、あんたの方かもしれないニャ。一姫が着ようとしたら、なぜか帯が蛇みたいに暴れて締まらなかったんだニャ……」


彼女は大切に巫女服を抱え、自分用に片付けた清潔な部屋へと向かいます。


「……ふぅ。とりあえず、今日はもう遅いですし、これ以上は明日にします。一姫さん、私のお布団はどこですか?」


あなたが大きく息をつくと、境内のドタバタが少しだけ落ち着きを見せました。カビた点心の箱も片付き、最低限の清潔さが戻った神社に、夜の静寂が降りてきます。


一姫:

「にゃ、にゃあ……。あんたのお布団は、一番奥の『離れ』にある部屋に用意してあるニャ。そこは昔、偉い雀士が泊まってたところで、神社で一番眺めがいいんだニャ! 一姫がいつもお昼寝に使ってる……じゃなくて、特別に貸してあげるニャ!」


「一姫の昼寝場所だったのは気になるが、あそこは日当たりもよく、今は綺麗に掃除してあるワン。お嬢さん、お主は今日、異世界から来たいきなり役満を和了り、治安の悪い店で服を勝ち取ったんだワン。……魂が相当疲れているはずだワン。ゆっくり休むがいいワン」


琳琅:

「おやすみ、真白! 明日の朝は、琳琅がとびきりの龍の咆哮で起こしてあげ……あ、美樹に『うるさい』って怒られたから、静かに起こしに行くね! 良い夢を見てね、飴の夢とか!」


二階堂美樹:

「おやすみなさい。……明日、そのタンスの中の巫女服を袖を通すあなたを見るのを、楽しみにしてるわ。一翻市の夜は長いけれど、この神社の中なら、私たちが守ってあげるから安心していいわよ」


一人になった部屋で、あなたは窓から見える大きな月を見上げます。

傍らには、明日着る予定の「真っ白な巫女服」。

記憶はないけれど、不思議とこの神社の畳の匂いや、さっきまで騒いでいた「人間ではない友人たち」の気配が、あなたのささくれ立った心を癒やしてくれました。


「(……明日、本当に私がこの神社を切り盛りするのかな。……お祓い、じゃなくて麻雀で)」


新しい私服を脱ぎ、一姫が用意してくれた清潔な寝着に着替えると、吸い込まれるように布団の中へと潜り込みました。



【裏通りの狂乱:マジカル雀の跡地にて】


神社で眠りにつこうとしていた頃、一翻市のネオンが毒々しく光る路地裏では、マジカル雀を襲った「嵐」の余波が続いていました。店先には、黒塗りの高級外車が乱暴にブレーキの音を響かせて停車します。


そこから降りてきたのは、背筋が凍るような威圧感を放つ、一翻市の裏社会を牛耳る組織の幹部らしき男でした。


幹部:

「……なんだ、この惨状は。お前ら、たかが学生一人に店の在庫と点棒をすべて巻き上げられたとでも言うのか?」


ガラの悪い男A:

「へ、へい……。ただのガキだと思ったんですが、南場に入った途端にバケモンみたいになりやがって……。清金勾釣チンキンコウチュウなんて、あんなの人間業じゃねえ……!」


幹部:

「黙れ。イカサマ道具を粉々に砕かれたという報告も受けている。……ふん、面白い。あの『ちんちくりん(一姫)』の神社に、新手の用心棒が現れたというわけか」


幹部は、粉々になった透視眼鏡の破片を踏みつけると、冷徹な笑みを浮かべて部下たちに命じました。


幹部:

「野郎ども、明日の朝一番で魂天神社へ乗り込むぞ。あの一姫が使ったという『怪しげな召喚呪文の道具』……あれの不備で俺たちの商売に損害が出たという名目でな。法外な修理費と損害賠償を突きつけてやる」


ガラの悪い男B:

「もし払えなかったら……?」


幹部:

「決まっている。『即刻退去』だ。あの神社を更地にして、俺たちの新しい雀荘を建ててやる。……もちろん、その『記憶喪失の巫女』とやらも、借金のかたに連れて行くがな」

神聖な巫女服が真白の魂に呼応するように輝く一方で、現実の脅威はすぐそこまで迫っています。記憶を失った少女が、初めて纏う「正装」。それは単なる衣装ではなく、迫りくる悪意から神社を守るための盾であり、一翻市の不条理を射抜くための光となるのでしょうか。

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