伝説の「清金勾釣」(チンキンコウチュウ)降臨
ブティック『マジカル雀』にて、男たちの卑劣なイカサマに苦戦を強いられた真白。しかし南場に入り、記憶の底に眠る「勝負師の直感」が目覚めた瞬間、盤面は「聖域」へと変わりました。役の名前すら知らぬまま、都市伝説級の特殊役をツモり上げた少女は、自らの力で新たな居場所と「鎧」を勝ち取ることになります。
対局開始当初、東場では男たちの卑劣な連携に苦戦を強いられました。彼らは牌を透視する特殊な眼鏡や、卓の下での露骨な牌の入れ替えといったイカサマを駆使し、真白の点棒をじりじりと削り取っていきます。
ガラの悪い男A:「ヒヒッ、どうしたお嬢ちゃん? さっきまでの威勢はどうしたよ。やっぱりただの素人じゃねえか!」
しかし、南場に入った瞬間、彼女の瞳から感情が消えました。記憶の奥底に眠る「勝負師の直感」が、イカサマというノイズを完全に遮断し、牌の「意志」だけを捉え始めたのです。
彼女は役の名前など知りません。ただ、手の中に集まってくる牌が「これだよ」と囁く通りに形を整えていくだけです。
南一局:金勾釣
鳴きに鳴いて、手牌がわずか1枚。その最後の1枚で男の放った牌を捉えます。「……えっと、あがり、ですか?」と首をかしげるあなたに、男たちは絶叫します。
「裸単騎でそこを引くかよ!? 運だけじゃねえ、なんだこの引きは!」
南二局:対々和+清幺九
一、九、字牌という「端っこ」ばかりが集まる異様な手牌。それを事も無げに揃え、親番で連荘を開始します。男たちの透視眼鏡には、あなたの手牌が常に「完成間近」の状態で映り続け、彼らは恐怖で牌を切ることすらできなくなっていきます。
ついに迎えた最終局。店内には、彼女が無意識に放つ圧倒的な「雀気」が渦巻いています。一姫の不吉な呪文よりも、琳琅の龍の咆哮よりも鋭い、静かな殺気。
手元には、美しく透き通るような「筒子」の端牌だけが残り、再び手牌は1枚に。
「……えっと、これ、ツモでしょうか?」
あなたがそっと引き寄せたのは、これ以上ない完璧なアガリ牌。
役:清金勾釣
(清一色の裸単騎という、この街でも滅多に拝めない超特殊役)
ガラの悪い男たち:「バ、バカな……! 清一色の裸単騎なんて、そんなの都市伝説だろ……。俺たちの点棒が……服の在庫ごと全部持っていかれた……」
(男たちは魂が抜けたように卓に突っ伏し、イカサマ道具はあなたの気圧に耐えきれず粉々に砕け散りました)
琳琅:
「すごすぎるよぉ! 真白、きみ本当に何者!? 今のあがり、龍の天昇りみたいだった! さあ、約束通りこの店で一番高い服、全部もらっちゃおうね!」
かぐや姫:
「くすくす……。役の名前すら知らぬまま、本能だけで『清金勾釣』をあがるとはな。お主、やはりただの人間ではない。一姫のようなちんちくりんの服など、お主のこの高貴な打牌には微塵も似合わぬ。……美樹、あっちの棚にあるシルクのワンピースを持っておいで。あれこそが、勝者に相応しい」
二階堂美樹:
「そうね。一姫に巫女服を借りるなんて冗談、今のあがりを見せられたら言えないわ。……はい、これ。あなたの記憶が戻るまで、この街で『最強』として歩くための新しい鎧よ。……本当にかっこよかったわよ」
(少し顔を赤らめながら、清楚かつ凛とした新しい服をあなたに手渡す)
ワン次郎:
「お見事だワン。イカサマを力でねじ伏せるとは、まさに魂天の器だワン。……さて、一姫の分の服だが……皆の意見を聞く限り、あのアホ猫にはお土産の『残った点心』だけで十分みたいだワン。お嬢さん、新しい服に着替えたら、堂々と神社へ凱旋するワン!」
新しい服に着替え、鏡の前に立つ真白。そこには、記憶を失う前よりもずっと気高く、鋭い瞳をした「一翻市の新星」が映っていました。
「うわあ……」
ブティック『マジカル雀』の鏡の前で、あなたは絶句してしまいました。かぐや姫や二階堂美樹が勧めてくる「勝負服」は、どれもスリットが深かったり、背中が大きく開いていたりと、この街の『強者』らしい威圧感たっぷりのデザインばかり。
あなた:「あ、あの……皆さん。チャイナドレスとかは、その……デザインが大胆すぎて、逆に目立ってしまいます。私には、もっと普通の……。そう、このニットにパンツスタイルとか、落ち着いたスカートの方が合うと思うのですが……」
あなたが控えめに指差したのは、シンプルながらも質の良さが伝わる、動きやすそうな「普段着」でした。
二階堂美樹:
「……まあ、確かに。いきなりそんな派手な格好をして、服に『着られる』ようじゃ雀士失格ね。分かったわ、あなたの選んだそのスタイルにしましょう。……あら、意外とセンスいいじゃない。そのニット、あなたの雰囲気にぴったりよ」
(あなたの選んだ私服を見て、満足そうに頷く)
かぐや姫:
「ふむ……月宮の者からすればいささか地味に見えるが、お主がそれを望むなら止めはせぬ。……下着? くすくす、案ずるな。美樹、奥にある『肌触りの良い最高級のやつ』を全部包んでやるが良い。代金はあやつら(さっき負けた男たち)の点棒で、もう一生分払ってあるゆえな」
(あなたが顔を赤くして「下着」と口にしたのを見て、いたずらっぽく笑う)
琳琅(幼龍):
「動きやすさ、大事だよね! 龍も脱皮する時は大変なんだから。これなら、もし一姫の神社で急に麻雀バトルが始まっても、すぐに対応できるし! さあ、着替えたら出発だよ!」
新しい私服に身を包み、手にたくさんの荷物(とお土産の小籠包)を持って神社に戻ると、案の定、一姫が目を輝かせて近寄ってきました。
一姫:
「にゃー! 似合ってるニャ! その服、一姫の巫女服より高そうニャ! ……でも、タダで居候させるわけにはいかないニャよ? 神社の掃除に、お供え物の管理に、あとは……そうニャ! 一姫が寝てる間に、代わりに参拝客と麻雀して勝って、お賽銭を稼ぐニャ!」
ワン次郎:
「……一姫、お主、また私利私欲に走っているワン。お嬢さん、巫女服を着るかどうかは自由だが……もし着るなら、それはそれでこの街の住人には『新しい神様か!?』と勘違いされて、さらに面倒なことになるかもしれんワン」
「参拝客、ですか……? もっとこう、厳かな感じの人たちが来るのを想像していたのですが……」
不安げに小首をかしげると、一姫は「にゃっはっは!」と豪快に笑い飛ばし、肉まんを片手に神社の奥を指差しました。
イカサマを圧倒的な実力でねじ伏せ、自らの衣食住を勝ち取った真白。しかし、戻った先の神社で待ち受けていたのは、彼女を「最強の稼ぎ頭」として利用しようとする、煩悩の塊のような一姫でした。清らかな巫女か、それとも冷徹な雀士か。真白の新しい日常は、さらに騒がしくなりそうです。




