深夜のブティック「マジカル雀」欲望と戦慄の試着室
着替えを求めて琳琅に案内された先は、一翻市の裏通りに佇むブティック『マジカル雀』。そこは可愛い服が並ぶ一方で、点棒が通貨として流通し、敗者がすべてを失う「弱肉強食」の社交場でした。記憶を失い、所在なげな制服姿の真白を「カモ」と見なして囲む男たち。しかし、彼らはまだ知りません。目の前の少女が、一翻市の秩序を牌一つで書き換える「神の巫女」であることを。
琳琅の案内で辿り着いたのは、ネオンが毒々しく明滅する路地裏のブティックでした。店内は高級なドレスや可愛い衣装が並んでいるものの、中央には数台の麻雀卓が鎮座し、紫煙の向こう側には見るからにガラの悪い男たちが陣取っていました。
「……うぅ、場違いなところに来ちゃった気がします。みんな、こっちを睨んでるし……」
着古された制服の裾をぎゅっと握りしめて立ち尽くしていると、卓を囲んでいた大男の一人が鼻で笑いながら声をかけてきます。
ガラの悪い男A:
「おいおい、なんだぁ? 見ねえツラだな。その変な制服、どこの学校だ? お受験に失敗して、こんな掃き溜めの店に服を買いに来たのかよ」
ガラの悪い男B:
「ケッ、学生服のガキが迷い込む場所じゃねえんだよ。ここは『麻雀で支払う』のがルールだ。一着数万点、あるいはそれ以上の『代償』を払える度胸があんなら話は別だがな」
ガラの悪い男C:
「おい、見ろよ。横にいるのは龍の一族のガキじゃねえか。……へぇ、そのお嬢ちゃんが新しい『カモ』ってわけか。いいぜ、俺たちの点棒を吸い取って服が買えるか、それとも身ぐるみ剥がされて泣いて帰るか、試してやろうじゃねえか」
彼らにとって、彼女はただの「迷い込んだ世間知らずの学生」に過ぎません。召喚されたことも、一姫を役満で沈めたことも知らない彼らは、下卑た笑いを浮かべてあなたを囲みます。
琳琅(幼龍):
「ちょっと、そこどいて! この子は琳琅の大切な『ラムネ供給係』……じゃなくて、真白なんだから! きみたちの汚い点棒なんて、この子が指先一つで全部溶かしちゃうんだからね!」
二階堂美樹:
「……ふぅ。どこにでもいるわね、こういう分をわきまえない人たち。ねぇ、あなた。記憶がないなら『新しい自分』をここで作っちゃいなさい。あそこの一番高い棚にある、最高級の生地の服……あれ、あなたの今の制服よりずっと似合うと思うわよ?」
かぐや姫:
「くすくす、無知とは罪じゃのう。獅子の群れに飛び込む兎だと思っておるのか? 逆じゃよ、これは餓えた龍の前に並べられた、ただの『点棒の山』に過ぎぬというのに」
男たちはニヤニヤしながら、あなたに卓に着くよう促します。彼らの後ろには、あなたが欲しそうな「清潔で可愛い着替え」が、非情な値札(点数)をぶら下げて飾られています。
ガラの悪い男A:
「さあ、始めようぜ、お嬢ちゃん。東風戦、ウマ抜き。俺たちに勝てたら、その棚の服でも何でも持ってきな。だが負けたら……そうだな、『その奇妙な制服』脱いでもらおうか!」
ガラの悪い男たちに囲まれ、ジャラジャラと牌を混ぜる音や荒々しい怒号が飛び交う中、あなたは不安そうに首をすくめ、隣にいる琳琅たちにそっと耳打ちします。
「あの……ここ、一翻市でしたっけ? ……もしかして、あんまり治安、良くないのでしょうか……?」
その問いかけに、一翻市の「日常」に慣れきった面々が三者三様の反応を見せます。
琳琅:
「治安? うーん、悪くはないと思うよ! だって、強盗に襲われても麻雀で勝てば許してもらえるし、お財布を盗まれても麻雀で勝てば倍になって返ってくるもん。……あ、でも麻雀に負けると、身ぐるみ剥がされて川に流されることもあるかな。あはは!」
(悪びれる様子もなく、角をパチパチさせながら恐ろしいことを平然と言う)
二階堂美樹:
「……この子(琳琅)の言うことは極端だけど、あながち間違いじゃないわね。ここは『麻雀のルール』が法律よりも優先される街なの。だから、打牌が強い人にとっては天国、弱い人にとっては……そうね、今あなたが感じている通りの場所かもしれないわ」
かぐや姫:
「くすくす、治安などという言葉、この街では死語じゃな。力……いや、『牌力』こそが秩序。お主、あやつらのツラを見てみよ。一見恐ろしげだが、あやつらの魂はすでに、お主が先ほど見せた『大三元』の残光に怯えておる。お主が勝ち続ける限り、ここはお主にとって世界で一番安全な場所になるのじゃよ」
ワン次郎:
「……お嬢さん、不安になるのも無理はないワン。だが、案ずるなワン。拙者がついているし、何よりお主の腕なら、この程度の連中に後れを取ることはないワン。一翻市において、最強の護身術は空手でも柔道でもなく、『正確な押し引き』だワン!」
不安をよそに、男たちが痺れを切らして卓を叩きます。
ガラの悪い男A:
「おいおい、何をコソコソ話してやがる! 治安だぁ? そんなもん気にするなら、お受験塾にでも戻りな! ここじゃあ、この四角い牌を握った奴が王様なんだよ。……さあ、その『見慣れない制服』が、涙と鼻水で汚れる前に、サッサと打てよ!」
深くため息をつき、静かに牌を手に取りました。
「……分かりました。あの、私を怒らせないほうがいいですよ?(ニッコリ)」
微笑んだ瞬間、一姫を沈めた時よりもさらに冷たく、鋭い「役満のプレッシャー」が店内に霧のように広がります。
男たち:「(……な、なんだこのプレッシャーは!? ただのガキじゃないのか……!?)」
「治安を気にするなら、負けなければいい」――一翻市の過酷な真理を突きつけられた真白。しかし、彼女が牌に触れた瞬間に放たれた圧倒的な「雀気」は、すでに勝負の行方を予感させていました。迷い込んだ兎ではなく、静かに獲物を待つ龍の如き威圧感。真白の新しい「衣」を賭けた、負けられない戦いが始まります。




