龍の隠れ家飯店と「衣装」の切実な問題
勝利の余韻に包まれながら、一行は一翻市の路地裏にある名店『龍の隠れ家飯店』へ。琳琅が絶賛する小籠包や点心の数々に舌鼓を打ちながら、話題は真白の「底知れぬ雀力」へと及びます。しかし、お腹が満たされた途端に突きつけられたのは「宿なし・金なし・服なし」という切実な現実。記憶喪失の少女を守るため、個性豊かな面々による「真白保護計画」が動き出します。
歩きながら、琳琅があなたの周りを飛び跳ねるようにして話しかけてきます。
琳琅:
「ねえねえ、さっきの『大三元』! あれ、偶然じゃないよね? 牌を引く時の指先が、まるでお宝を探し当てる龍の爪みたいに鋭かったよ! 若き雀士、きみ本当はどこかの国の『雀聖』だったりしない? 異世界のラムネを持ってるくらいだし、もしかして……麻雀で世界を救うために召喚されたヒーローだったりして!」
二階堂美樹:
「琳琅の言う通りよ。一姫のあのデタラメな『リーチにゃ!』は、実は変な魔力が乗っていて、普通の人は振り込まされるか自摸られるかなの。それをあんなに冷静に、しかも役満で直撃(ラス確)させるなんて……。あなたの脳細胞、記憶はなくても『麻雀の回路』だけはフルスロットルで動いてるみたいね」
ワン次郎:
「左様だワン。特筆すべきは、あの『白』を待っていた時の静寂だワン。焦りもせず、奢りもせず、ただ必然として牌を呼び寄せる……。あれは一朝一夕で身につくものではないワン。お嬢さん、お主が何者であれ、その『打牌の品格』は本物だワン」
かぐや姫:
「ふん、少しばかり褒めすぎではないか? ……まあ、妾の目を一瞬でも欺いたことは認めてやろう。お主の放つ気配、どこか月の都の静寂に似ておる。騒がしいこの街において、その『静かなる強運』は、あるいは猛毒にも薬にもなるやもしれぬな」
賑やかな通りを一本入った路地裏。そこには、赤い提燈が揺れ、蒸籠から芳醇な湯気が立ち上る、なんとも食欲をそそる店構えがありました。
琳琅:「着いたよ! ここが琳琅の行きつけ『龍の隠れ家飯店』! ここの小籠包はね、中にスープと一緒に『幸運のエキス』が入ってるって噂なんだから! さあ、中に入ろう!」
店内に入ると、威勢のいい店主(なぜかパンダの被り物をしている)が迎えてくれます。
パンダ店主:「いらっしゃい! おお、琳琅に……そっちの嬢ちゃんは、一姫を役満で沈めたっていう噂の新人さんかい? 景気がいいねぇ! 特等席に案内するよ!」
円卓を囲み、次々と運ばれてくる豪華な点心に目を奪われます。エビ蒸し餃子、フカヒレのスープ、そして山盛りの小籠包。
山のように積まれていた蒸籠が空になり、琳琅が満足げに最後の一口を飲み込んだ頃、店内に満ちていた熱狂がふと落ち着きを見せました。お腹が満たされたことで、彼女はそれまで麻雀の興奮で麻痺していた「現実的な問題」を思い出し、急に顔を青くします。
「……本当に美味しい。こんなに幸せな食事は初めてかもしれません。……って、私、今夜はどうすれば!? 泊まる場所も、着替えも、そもそもこの世界で使えるお金すら持っていません……!」
悲痛な叫びに、円卓を囲む面々がそれぞれの反応を見せます。
琳琅:
「えっ、宿? そんなの琳琅の寝床に来ればいいよ! 龍の宝物庫はちょっと硬いけど、金銀財宝に囲まれて眠るのは最高だよ! ……あ、でも着替えはないかな。琳琅、基本はこの格好か、あとは龍の姿になっちゃうし」
二階堂美樹:
「ちょっと琳琅、この子を財宝と一緒に寝かせる気? 埃っぽくて病気になっちゃうわよ。……宿なら、私の通っている雀荘の仮眠室……は、煙草臭いからダメね。うーん、一番安全なのは……」
かぐや姫:
「おやおや、妾の月宮に来るかえ? 眺めだけは最高じゃぞ。ただし、空気がないので息はできぬがの、くすくす。……冗談じゃ。着替えなら、一翻市のブティック『マジカル雀』に行けばよい。あそこなら、麻雀の勝敗で代金を支払う変なシステムがあるゆえ、お主の腕なら一式揃えるなど造作もないことじゃろう」
ワン次郎:
「皆、無責任だワン。お嬢さん、心配はいらないワン。一翻市には『魂天神社』という、あのアホな猫……一姫が管理している一応は神聖な場所があるワン。あそこは部屋だけは余っているし、一姫が今回の騒動の元凶なのだから、責任を取らせて居候させるのが筋だワン。着替えも、あいつの予備の巫女服や、没収された忘れ物の服が山ほどあるはずだワン」
ワン次郎の提案を聞き、二階堂美樹がポンと手を打ちました。
二階堂美樹:
「そうね。一姫の神社を拠点にするのが一番マシよ。あいつ、今頃神社で『負けたニャ……お腹空いたニャ……』って泣きべそかいてるだろうし。戻って、戦利品のこの点心をお裾分けしてあげる代わりに、一番いい部屋を明け渡させましょう」
琳琅:
「いいこと思いついた! 神社に戻る前に、さっきの『マジカル雀』に寄っていこうよ! 若き雀士、きみのその制服、召喚された時の魔力で少しボロボロだし。新しい服に着替えて、一姫を驚かせちゃおう!」
お腹を満たし、次なる目的地はブティック『マジカル雀』。そこは、可愛い服を賭けて雀士たちが火花を散らす、一翻市ならではの戦場です。真白にとっては、自分自身の新しい姿を見つけるための大切な一歩。果たして彼女は、どんな装いを選び、一姫を驚かせることになるのでしょうか。




