神の知恵袋、節約の美学
女神たちの宴が一段落し、天使たちが伊勢海老の殻を下げようとしたその時、私は思わず声を上げた。
節約という名の黄金律
「あっ、天使の皆様方! その伊勢海老の殻、捨てないでください! もったいないじゃないですか!」
私は大急ぎで立ち上がり、殻を回収する。
「高級そうな伊勢海老なんですから、この殻からは極上のビスクができますし、それと麺を絡めて冷やし中華風にしても最高ですよ。……えっ、皆さんは何故そんなに驚いているのですか?」
調理の女神は、半ば呆れたように、しかし強い興味を隠せない様子で私を見た。
「真白、あなた……天界の食材なんて望めばいくらでも湧いてくるのよ? なのに、どうしてそんなに食材に対して厳格なの?」
「それは……食材には命がありますし、余すことなく使い切るのが一番の供養ですから」
私の言葉に、指示を受けた天使たちは慌てて調理に取り掛かる。
天使A:
「真白様のご教示……! 殻からこれほど芳醇な香りが引き出せるとは!」
天使B:
「ビスクの濃厚な旨味、そして冷やし中華の爽やかな酸味……これは新たな天界料理の歴史です!」
天使C:
「真白様の仰る通り! 捨てようとしていた部位にこそ、神髄が隠されておりました!」
知識の海を渡る少女
「真白、一体その知識はどこから……他にどんな料理を知っているの?」
女神たちが興味津々で迫ってくる。私は小首を傾げた。
「そうですね……例えばそこに玉蜀黍がありますが、芯で出汁を取れば甘みが際立つスープになりますし、粽にしても美味しいですよ。髭や皮だって、乾燥させればお茶になりますし……えっ、料理の女神様なら当然ご存知ですよね?」
調理の女神は苦笑いしながら肩をすくめた。
「えぇ、聞いたことはあるわ。でも、ここは天界よ。ありふれた食材をわざわざそんな手間暇かけて加工なんて、誰もやらないわよ」
私はふぅ、と小さく息を吐いた。
「はぁ……皆様方は本当に贅沢三昧ですからね。もったいない……」
知恵のソフィア(書記):
「天界の富を前にしてなお、その『節約術』を貫くなんて。この子の魂の純度は、まさに質素倹約から生まれているのね」
美のヴィーナス(副会長):
「あの子にとって、料理とは『高級なものを食べる』ことではなく、『命を最大限に活かす』ことなのね。なんて美しい……」
豊穣のデメテル(会計):
「余すことなく活かす……食材が喜びの声を上げているのが聞こえるわ」
龍神の翠(役員):
「ふむ。贅沢に慣れきった我らに、真白は『感謝の心』を説いているのか。実に深い」
勝負の女神(1年):
「玉蜀黍の髭でお茶っすか! 今度あたしらで試してみるっす!」
創造の女神(担任):
「あの子の節約レシピは、ある意味で究極の創造術ね」
調和の桃子(養護):
「真白さんの前世は、きっと素晴らしい料理人だったのでしょうね」
芸術の女神(2年):
「ゴミを価値に変える。これぞ究極の芸術よ!」
慈愛の女神(3年):
「真白ちゃん、私たちに大切なことを教えてくれてありがとう」
料理の女神:
「……参ったわ。私の知識よりも、あなたの『もったいない』という精神の方が、よっぽど神聖だわ」
真白の無自覚な倹約精神は、豪華絢爛な天界の食卓に「新たな彩り」をもたらした。天界の女神たちは、ただ消費するだけの食事から、素材と向き合い、慈しむという「新たな愉しみ」に気づき始めている。真白は、自らが「節約」と言ってのけたその行動で、期せずして女神たちの心を豊かに満たしていたのである。




