天界の宴、神の食卓
22時——学院の就寝時刻を告げる鐘が鳴ると同時に、私は天界へと足を踏み入れた。女神棟にある自分の部屋の布団に意識を残し、神として本来の姿を取り戻す。周囲の空気は、私の圧倒的な神力によって震え、女神たちが放つ力さえも弾き飛ばすほどの重圧に包まれていた。
天界での降臨
「分家の皆さん、お待たせしました」
私は抑制をすべて解き放った。天界では力加減など不要。私の周囲には、神性の極致とも言える純白のオーラが渦巻いている。だが、食卓には厨房担当の天使たちが用意した「筍の春巻き」が並んでいたものの、女神たちの顔には明らかな不満が浮かんでいた。
知恵のソフィア(書紀):「あら……真白、そのオーラ、相変わらず凄まじいわね。それはいいのだけれど……この春巻き、なんだか味が単調よ。真白が作るのと大違いだわ」
調和の女神(桃子):「そうよ真白! 春巻きの食感が均一すぎて、あの『層になった奥行き』がないの。これじゃただの揚げ物だわ」
創造の女神(担任):「真白の作る春巻きの感動が足りないわね。どうしてこうなったのかしら」
美のヴィーナス(副会長):「私の舌は騙せませんことよ。もっと深みが必要ですわ」
豊穣のデメテル(会計):「食材の魂の引き出し方が甘いのかしら……」
勝負の女神(1年):「やっぱり真白様が作るものじゃないとダメっすね!」
芸術の女神(2年):「この平坦な味は芸術的とは言えませんわ」
慈愛の女神(3年):「真白ちゃん、何が違うのかしら……」
龍神の翠(役員):「ふむ。我らの期待を下回る出来じゃな」
真実の伝授
私は厨房に下がり、困惑する天使たちの前に立った。
「天使さんたち、たぶんですが、部分ごとに調理法を変えないと味に深みが出ないのです。同じ調理法では素材の個性が死んでしまいますよ」
私は先ほど借りた本——知恵の女神の記した叡智——を思い出し、その記憶を天使たちに直接流し込む「伝授法」を試みる。神力を光の粒子に変え、天使たちの額へと指を触れた。
知恵のソフィア(書紀):「あら、その記憶の伝授法……あなた、さっき借りた本の内容をもう完全に覚えているの?」
真白:「えっ、あっ、はい。私、記憶力がいいので。一度見れば十分ではないでしょうか?」
天使たちの目つきが変わる。彼女たちは、筍の穂先、根元、姫皮、それぞれの部位が持つ「味の記憶」を真白から直接共有し、神の食卓に相応しい調理法を理解した。
天使A:「はっ、……なんと。この部位にはこの熱伝導率が……理解いたしました!」
天使B:「筍の魂が……聞こえます。これなら、真白様が望まれる味を再現できます!」
天使C:「素晴らしい……! まるで真白様の意志そのものが、私たちの手に宿ったかのようです!」
女神たちは、光に包まれて調理を再開する天使たちを見て、溜息と歓喜が混じった声を漏らした。
知恵のソフィア(書紀):「一度見ただけで……恐ろしい子ね」
調和の桃子(養護):「知識さえあれば、何でも成し遂げる。学問の神たる所以ね」
創造の女神(担任):「私たちの計算すら超えていくわ」
美のヴィーナス(副会長):「この適応力、まさに芸術的」
豊穣のデメテル(会計):「これで今夜の宴は最高のものになるわ!」
勝負の女神(1年):「これぞ神の記憶力っす!」
芸術の女神(2年):「完璧な再現……期待が高まるわ」
慈愛の女神(3年):「天使たちも真白ちゃんに心酔しているわね」
龍神の翠(役員):「素晴らしい。真白、貴女こそがこの宴の真の主じゃ」
真白の圧倒的な神威と、底知れぬ記憶力が天界の宴を支配する。ただの知識が、真白の神力と合わさることで「奇跡」へと変換されていく過程に、女神たちは改めて彼女という存在の深淵を認識した。天使たちは真白の指示通りに調理を進め、やがて食卓には、学院の食堂で食べたものよりも遥かに高貴で、深みのある「至高の筍の春巻き」が並べられることになる。女神たちが喉を鳴らして待つ中、宴の幕は切って落とされたのである。




