神の休息、偽りの罪悪感
大浴場を後にした真白は、神の衣装へとその身を包み、学院の仮部屋から女神塔の私室へと帰還した。そこは女神たちの監視の目が届かぬ、真白だけの聖域。和室の座椅子に座り、ソフィアから渡された書物を手に取った瞬間、彼女のスマートフォンが淡い光を放った。
文学少女の夜、誤解の果て
真白は礼奈からのメールを読み、少し困惑した表情で指を動かした。
真白からの返信:
「礼奈さん、お疲れ様です。そんなに心配しないでください。テストは一週間前からお休みをいただければ十分ですし、文化交流会も来月の話ですから……。でも、そこまで仰ってくださるなら、交流会が終わるまで長休を取らせていただきますね。本当にありがとうございます。」
数秒後、礼奈から震えるような返信が届いた。
礼奈からの返信:
「真白ちゃん……! 本当によかった! 実はね、お客さんたちがみんな『真白様をこき使いすぎだ』って冷たい目で私を見てくるのよ……。神様ブレンドを少ししか出せないのも、私が無理させてるって思われてるみたいで。だから、安心して休んで! 私が責任を持って説明しておくから!」
(……ええ? 私をこき使っているなんて、そんなはずはありませんのに。皆様、礼奈さんのことを誤解されているのでは……?)
真白は困惑しながらも、女神たちの工作によって歪められた「罪悪感」という名の物語を、そのまま受け入れるしかなかった。
天界で宴の準備を進める女神9人は、その光景を想像しながら、笑んでいる。
知恵のソフィア(会計):
「計画通りね。礼奈というノイズが勝手に罪悪感を抱き、真白を『完璧な休息』へと追い込んだわ」
調和の桃子(養護):
「ええ。これで真白は学院のバイトに縛られることなく、私たちとの宴に全力を注げるというものよ」
創造の女神(担任):
「それにしても、お客さんたちが礼奈に冷たい視線を送っているという誤解、最高に面白いわね」
美のヴィーナス(副会長):
「ええ、真白は『慈悲深いお嬢様』として、礼奈を許す側でいられる。完璧な構図ですわ」
豊穣のデメテル(会計):
「これで心置きなく、真白にあの子たちを遊ばせることができるわ」
勝負の女神(1年):
「あいつら、勘違いしたまま一生懸命働くっすね!」
芸術の女神(2年):
「礼奈の罪悪感、まさに最高の悲劇よ」
慈愛の女神(3年):
「真白ちゃん、ゆっくり休んでね。宴の準備は万端よ」
龍神の翠(役員):
「ふむ。これほど都合よく運ぶとはな。宴の準備も完璧じゃ」
真白は今日、一姫というノイズのせいで本来の友人である「滝守陽葵」——つまり、真白自身の人間モードとしての余暇を十分に過ごせなかった。女神たちはその埋め合わせを、真白に与えた長休という形で演出したのである。「しばらく休日なんだし、今日できなかった分、滝守陽葵ちゃんと遊び尽くしましょう」
そう語り合う女神たちの思念が天界に響く。




