聖女の威圧と白き矜持の矯正
新品の白ハイソックスに履き替え、真白はメイド長の冷徹な瞳の前に立つ。神としての合理性よりも、学院の「お嬢様」としての体裁が優先されるこの場所で、真白はさらなる「贅沢」の強制という名の矯正を受けることになる。
白きソックスの聖域、再び
「新品の白ハイソックスに履き替えました……これでよろしいでしょうか。先ほどは、すみませんでした」
私が小さく頭を下げると、メイド長は厳しい表情で、先ほど脱いだばかりのソックスを手に取った。
「これは焼却処分いたします。少しの毛玉や汚れも、真白様のお足元には許されません」
「えっ……まだ数回しか履いていないのですよ? もったいなくないですか?」
私の言葉に、メイド長は深いため息をついた。
「真白様、あまりの庶民の生活への馴染み……もとい、感覚の麻痺に愕然といたします。あなたは神様なのですよ? 人間が大量生産した瑣末な布切れの節約など、真白様には不要。これから貴方様には、毎日新品を履いていただきます。他の高貴な生徒たちも皆、そうしておりますから」
「ですが、神ならば浄化すれば……」
「それはお嬢様たる真白様の矜持が許しますか? このままでは学院の品格に関わります。今後の指導として、贅沢の悦びを叩き込んで差し上げますわ」
メイド長の目は、まるで聞き分けのない子供を見るような怜悧な輝きを帯びていた。私は逃げるようにロビーのソファに座り込み、思念を飛ばした。
「皆様! 一体どういうことですか! 服装まで厳しくなっているなんて……あの『白ハイソックス』の件も、交流会の件も、聞いておりません!」
女神たちの思念が返ってくる。
「あら、何のことかしら? 私たちは何もしていないわよ。交流会は、あなたの品格を磨くために申し込んだだけ。あなたは神なのよ? 貧乏神のように節約してどうするの! 私たちなんて贅沢三昧に飽きるほどよ(笑)」
覚醒の威圧
そこへ、精鋭5名の一人の留学生が近づいてきた。
「Hey, Mashiro! You don't have a part-time job today, do you? Why are you wasting time shopping? We have no time! We will start practicing violin immediately!(「ねぇ、ましろ!今日はアルバイトじゃないわよね?何で買い物なんてしているの?そんな時間はないはずよ!すぐにバイオリンの練習を始めるわ!」)」
その瞬間、頭の中に強烈な睡魔と冷たい波が押し寄せ、私の意識は「覚醒モード」へと切り替わった。
「……うるさい。無礼である」
私は神力を解放した。重力場が歪み、留学生は膝から崩れ落ち、頭を垂れて跪く。
「No one, I repeat, no one shall interfere with my affairs.(何人たりとも私の邪魔はさせぬ)」
私は冷たく言い放つ。
「今は17時30分。練習は19時までと承知しているが、私には夕食の準備がある。18時からであれば許可しよう。用件が済んだら下がりなさい」
留学生は青ざめ、恐怖に震えながら「Yes, Your Majesty...」とだけ呟き、その場から這うように去っていった。
モニター越しにこれを見た女神たちは、一様に息を呑んだ。
調和の桃子(養護):
「あら……あの子、覚醒してまた威圧的な……」
創造の女神(担任):
「完璧な神威だけど、これじゃ交流会以前の問題ね」
知恵のソフィア(書記):
「恐怖で支配しては、信仰が揺らぎますわ。少し指導が必要ね」
美のヴィーナス(副会長):
「あの子の目が……怖いほど冷徹だわ」
勝負の女神(1年):
「先輩、やりすぎっす! 交流相手に何してるんすか!」
豊穣のデメテル(会計):
「せっかくの清楚な白ハイソックスも、威圧的な態度の前では霞んでしまいますわ」
芸術の女神(2年):
「神としての誇りか、生徒としての品格か。混ざり合っているな」
慈愛の女神(3年):
「可哀想に、留学生の子が震えていたわ。真白ちゃん、落ち着いて……」
龍神の翠(役員):
「威厳は十分じゃが、やりすぎは毒になるぞ!」
私はハッとして、女神たちに尋ねた。
「分家の皆様、今の彼女は何を言っていたのでしょうか? 私にわかるように説明を……」
「真白! あの子は先輩よ! あなたは2年生、彼女は3年生。そんな態度をとってはいけません!」
「うぅ……また失敗してしまいました。人間の扱いは、覚醒していないときの私に任せましょう。謝罪してきます!」
私は急いで留学生を追いかけた。
「先ほどは……大変、申し訳ありませんでした!」
留学生はまだ震えていたが、私の平謝りに目を丸くし、かろうじて口を開いた。
「……いえ、会長。あなたの……その……神々しいまでの迫力に、圧倒されただけですわ。18時、承知いたしました……」
その瞳には、恐怖と、得体の知れない「畏敬」が混ざり合っていた。
真白は今日もまた、神としての力と、生徒としてのお嬢様作法の間で揺れ動いている。贅沢の強制と白きソックス、そして無自覚な神威。女神たちが描く「完璧なお嬢様」への道は、平坦なものではない。しかし、真白がどれほど威圧しても、彼女の足元には今日も新品の白ハイソックスが眩い光を放っているのである。




