聖域の排除、招待状の波紋
会議室に放たれた「暗黒ビーム」は、真白の日常を守る結界に触れた瞬間、光の粒子となって消滅した。神の聖域に相応しくない汚れ(一姫)は、専属メイドの手によって、まるでゴミを掃き出すかのように排除される。そして、女神たちの謀略は、真白を「高貴なる生徒」として世間に解き放つ文化交流会へと動き出した。
「ならこれも喰えにゃ! 必殺! 暗黒ビームにゃーー!!」
黒い霧が渦を巻き、破壊の光が一姫から放たれた。しかし、私はため息ひとつ。指先で軽く宙をなぞると、光は春風に変わって霧散した。私は迷わず呼び鈴を鳴らす。
「お呼びでしょうか、真白様」
「あ……あの、溝臭い野良猫さんが校内に……」
「……承知いたしました。こちら、速やかに処理してまいります」
「でたにゃ! はなすにゃ! 剛力メイドめ、動物虐待にゃーっ!!」
一姫の絶叫を背に、メイドは一姫を小脇に抱え、塵一つ残さず姿を消した。戻ってきたメイドは、涼しい顔で丁寧にお辞儀をする。
「ありがとうございました。いえ、お嬢様方が学ばれる大切な聖域。私共が目を光らせておけばと反省しております」
「はっ、お買い物に行かなくては。……門限は厳守ですね」
「はい。過ぎれば厳しい指導が待っておりますので……」
門をくぐる瞬間、私の制服は神衣装束へと切り替わった。バス停まで送るメイドに、私は優雅に手を振る。
調和の桃子(養護):
「あら完璧。あの子はもう、汚れを認識すらしない瑞鳳宮の主ね」
創造の女神(担任):
「完璧な排除。さあ、次は文化交流会よ!」
知恵の女神ソフィア(書記):
「高校生文化交流会の選抜リストを作成しました。最高の布陣ですわ」
美の女神ヴィーナス(副会長):
「お嬢様仕草を徹底させれば、人間など平伏すしかないわ」
勝負の女神(1年):
「これで先輩は完全に『高嶺の花』っす!」
豊穣のデメテル(会計):
「ハンカチには最高級の柔軟剤を染み込ませましたわ。清廉潔白の香りです」
芸術の女神(2年):
「神のヴァイオリン。その旋律は人間を狂わせるだろう」
慈愛の女神(3年):
「たくさん交流して、人間たちを真白ちゃんの虜にしてね」
龍神の翠(役員):
「宴が待ち遠しいのう!」
招待状の波紋
知恵の女神・ソフィアが手配した申し込み内容には、真白を代表とし、海外受賞歴を持つ3年生の精鋭5名を加えた「最強の布陣」が記されていた。
【文化交流会参加申込】
代表者:瑞鳳真白(2年)
参加者:他、海外コンクール受賞歴を有する精鋭5名(3年)
活動:教養カリキュラムによるヴァイオリン演奏
備考:参加者・瑞鳳真白は神格を保持しておりますが、生徒として学業及び教養の一環で参加いたします。
主催校にメールが届いた直後、生徒たちは大パニックに陥っていた。
「嘘でしょ……蒼天女学院って、あの上流階級のお嬢様学校!?」
「しかも真白様自ら演奏!? 私たちの演奏じゃ満足されないんじゃ……!」
「お茶菓子、最高級品じゃないとダメよね!? 粗相があったらどうするの!」
「でも、エテルニテで見た時、神様なのに優しく頭を下げて接客してたよ? すっごく可愛かったし!」
主催校の招待状返信メール
件名:文化交流会へのご参加につきまして
蒼天女学院 生徒会長 瑞鳳真白様
この度は文化交流会へのお申し込み、誠にありがとうございます。
まさか瑞鳳真白様にご参加いただけるとは、生徒・教職員一同、驚きと感激で震えております。
当日は貴校の素晴らしいヴァイオリン演奏を心よりお待ちしております。
何卒、当日までよろしくお願い申し上げます。
この返信を見た女神たちは、深夜の天界での祝杯を確約した。
「成功よ! あの子を交流会に出せば、人間界の信仰心はすべて真白のもの!」
「さあ、晩餐の準備よ。今夜は特上のお酒を並べましょう!」
真白が知らないうちに、神の威光を轟かせるための、華麗なる舞台は整えられていった。
真白が知らないうちに、神の威光を轟かせるための華麗なる舞台は整えられていった。専属メイドの手によって排除された「汚れ」など、今の真白には目にも留まらない。彼女にとっての日常は、常に洗練された完璧な聖域であり、女神たちが描く「高貴なる生徒」としての物語は、招待状一通によって人間界を震撼させる波紋となって広がっていくのである。




