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第31話:守護者の覚悟、洗い場の沈黙

夕食を終えた真白。彼女がいつものように後片付けをしようとしたその瞬間、ワン次郎と琳琅は、あたかも国を揺るがす重大事に立ち向かうかのような気迫で皿を奪い取りました。真白が風呂場へと消えた後、残された三人の守護者。あるじの圧倒的な神性を目の当たりにした二人の忠誠心は、無頓着な一姫の言葉をきっかけに、静かな怒り、そして不退転の決意へと変わります。

「ふぅ、ごちそうさまでした。今日もお腹いっぱいで幸せですね」


あなたが満足げに箸を置くと、広間の空気は再びピンと張り詰めました。あなたが食べ終わった食器をまとめようと立ち上がった瞬間、ワン次郎と琳琅がまるで弾かれたように飛び起き、あなたの手から素早くお盆を取り上げました。


「真白様、そのような下賤な仕事……いえ、後片付けなどは我々にお任せください! 休息こそが真白様の何よりの務め……いえ、我々の切なる願いなのです!」


ワン次郎が尻尾を激しく振って食い下がります。琳琅もまた、普段の威厳をかなぐり捨てて、必死の形相で皿を抱え込みました。


「そうなのだ、真白様! 食べ終わった後のこの食器こそ、我々が清めるべき聖なる品々なのだ。一姫、お前もぼーっとしていないで立つのだ。お前がやった分も含めて、全て片付けるのが道理だぞ!」


一姫はポテチの食べかすで汚れた口元を拭いながら、「えーっ、面倒くさいにゃー。真白がやってくれるなら楽だったのにゃ」と不満げに腰を上げました。


「そんなに言うなら……わかりました。お二人にお任せしますね。一姫さんも、しっかり手伝うのですよ。私は少し疲れましたので、お風呂でゆっくりしてきます」


あなたが困ったように笑いながら台所を後にし、風呂場へと向かうと、ようやくその場には「神性」の重圧から解放された(ように見える)一姫と、安堵の溜息をつく二人が残されました。


風呂場から遠ざかったことを確認すると、一姫は鼻で笑い、尻尾をパタパタと床に打ち付けました。


「それにしても、二人ともどうしちゃったのかにゃ? さっきから真白の顔色ばかり伺ってペコペコして……そんなに恐ろしい奴じゃないにゃ。単なる小娘にゃのに、二人とも頭がおかしくなったのかにゃ?」


一姫の無邪気で不敬な言葉に、ワン次郎は激しく反応しました。彼の顔は怒りで紅潮し、鋭い牙を剥き出しにします。


「一姫ッ! お前という奴は……! 霊力の波長が鈍いのか、それとも魂が怠惰に浸かりすぎて直感が腐っているのか! あの御方の纏う威光、勾玉を粉砕したあの神気の奔流、本当に何も感じていないのか!」


琳琅も、皿を洗う手を止め、一姫を冷ややかに見下ろしました。


「呆れて物も言えないのだ。守護者という立場にありながら、真白様が我々のために食事を作り、お慈悲をかけてくださっていることの重みを、全く理解していないのだな。本来であれば、我々こそが神に供物を捧げ、その恩恵を頂くべき存在……。にもかかわらず、あの御方は、自ら包丁を握り、我々に命の糧を与えてくださっている。これほどのお慈悲を、お前は『単なる小娘』と片付けるのか?」


ワン次郎は皿を洗う手つきに祈りを込め、荒々しくも丁寧に汚れを落としていきます。


「そうだワン。明日からは、神社の掃除も皿洗いも、すべて我々が行う。真白様が『日常』を大切にされているからこそ、その足元が塵一つなく、平穏であるように守り抜くのが我々の役目だワン。一姫、お前も甘えるな。守護者として、あの御方にどれだけの恩があるか、身をもって理解させるからな!」


一姫は「ぶつぶつ言ってるにゃ……。明日から掃除当番が増えるのは面倒にゃ」とまだ気楽に構えていますが、二人の目にはかつてないほどの決意が宿っていました。

真白が望む「ただの女子高生としての生活」。それを守るために、従者たちは「家事という名の献身」にその身を捧げることを誓いました。一姫の不遜ささえも、今は彼らの忠義を燃え上がらせるまきでしかありません。湯気の立ち込める風呂場で真白が休息を取る間、台所では龍と犬が皿を清め、一翻市の守護神社の新しい秩序が築かれようとしていました。

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