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塗り替えられた神話と偽りの聖域

覚醒の果てに、真白は己の出自という「神の最大の謎」に触れた。魂天神社の呪縛を己の神威で焼き払い、過去を昇華させた真白の心は、今や純白のキャンバス。女神たちはその好機を逃さず、用意周到に練り上げた「偽りの神話」を、古の巻物と共に彼女へ差し出す。

「……あの、分家の皆様。私、神様になる前は人間だったような気がするのですが。覚醒してからというもの、昔の記憶が霧のように消えていくのです」


私は小首を傾げました。以前あったはずの、魂天神社での痛ましい記憶は、今や完全に消滅しています。残っているのは、女神たちが着せたあの萌え袖ジャージの記憶から始まる、「瑞鳳真白」としての人生だけ。


「私はもともと、この蒼天女学院の生徒で、神格化したのでしょうか? 皆様との血筋……というのも、少し都合が良すぎる気がするのですが」


その問いかけに、女神たちは内心で歓喜しました。(やっと……! 人間だった頃の迷いを捨て、完全にこちら側の住人になったのね。あの一姫の精神攻撃も、もう届かないわ)


女神の一人が、煤けた古文書のような巻物をゆっくりと広げました。


【瑞鳳宮・御由緒】

『往古よりこの地には、一翻市の霊脈を司る小さな祠があった。しかし、混迷の時代に陽だまりの化身たる「真白大神」が降臨なされ、荒れ果てた地を自ら耕し、一輪の花を植えられたことが瑞鳳宮再興の始まりである。隣接する蒼天女学院の広大な荒野を、真白様は素手で耕し、清らかな水を引かれた。その慈愛の汗が滴る場所に今、百花繚乱の聖地が広がり、学院の乙女たちはその背中を仰ぎ見て「掃除は心の浄化」という教えを胸に刻んでいるのである』


(調和の女神・桃子):

「ええ、その通りですわ。真白様は元々この地の守護者。生徒として在籍されていたのも、人間たちの心を理解するためのお姿に過ぎません」


(創造の女神・担任):

「この学院の乙女たちも、あなたの背中を見て育った眷属たち。あなたという存在が、この地そのものを浄化したのです」


(知恵のソフィア・書記):

「血筋という言葉は便宜上のものです。あなたは人間を超越し、この地の神として生まれ変わったのですわ」


(美のヴィーナス・副会長):

「荒野を素手で耕したあのご苦労……今では神話となって語り継がれていますわ」


(勝負の女神・1年):

「先輩は昔から最強だったんすね! 掃除で浄化……まさに神業っす!」


(豊穣のデメテル・会計):

「あなたが植えた一輪の花が、今のこの庭園になったのですから」


(芸術の女神・2年):

「その巻物は真実の記録。君は迷うことなく、この地の主として君臨し続けてきたのだ」


(慈愛の女神・3年):

「真白ちゃんが一生懸命頑張ってきたこと、私たちは全部知っているわ」


(龍神の翠・役員):

「まさにその通りじゃ! 悩む必要などないぞ!」


「なるほど……。私はこの学院の生徒として徳を積み、小さな祠を建て直し、この学院の者たち全員を眷属にしたのですね」


私は巻物の文字を指でなぞりながら、ふぅっと息を吐き出しました。

脳内を支配していたノイズが消え、物語が綺麗に整っていくのを感じます。


「なんだか、とても整理されてスッキリしました。分家の皆様、ありがとうございます。私の過去を教えてくださって」


私は穏やかな笑みを浮かべました。その表情には、もう過去への執着も、一姫に対する恐怖も微塵もありません。私は瑞鳳真白――この地の神として、何百年も前からここに存在していたのだと、心から確信していました。

真白の記憶は、女神たちの手によって「瑞鳳宮の歴史」へと完全に書き換えられた。もはや魂天神社の呪縛は消え、一姫がいかに精神を破壊しようとも、真白の心には「自分は元々この地の神であった」という不動の真実しか存在しない。ゴミ処理施設で足掻く邪神の断末魔は、真白の穏やかな微笑みの前では、ただの静寂に等しかった。

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