神の威光とお茶目な覚醒会長
第一会議室の重厚な扉が開かれた。神聖なオーラを纏い、すべてを射抜くようなアイスブルーの瞳で入室した真白。その姿に、さっきまで軽口を叩いていた女神たちは、冷や汗を流して凍り付く。神の威厳と、いつもの頑張り屋な素顔が混ざり合う、不可思議な会議が幕を開ける。
「お待たせしました、分家の皆様。……あら、どうかしましたか? 皆様」
私は不思議そうに首を傾げ、指定された会議室の席へ優雅に座りました。
「さあ、会議を始めましょう。今日は生徒会室ではないのですね? 珍しい……」
女神たちは顔を見合わせ、脳内でパニック寸前の思念を交わし合います。
(総力戦よ! 彼女の神気を封じて、無理やりにでも寝かしつけるのよ! こんなの想定外だわ!)
「……大丈夫ですよ」
私はその思念にさらりと介入し、微笑みました。
「いつも分家の皆様方にはご迷惑をおかけして申し訳ないと思ってます。今日は、眠くありませんので。……どうして、そんなに怯えているのですか?」
全員が絶句する中、私は無垢な瞳で付け加えました。
「……血筋が繋がっているから、皆様の思念が聞こえるのは当然では?」
(調和の女神・桃子):
「(内心:えっ、繋がってないわよ!? 血液検査の血を繋がってるように見せただけなのに、本人までそう思い込んでるの!?)」
「えぇ……そうですわ! さすが真白様、お見事ですわ!」
(創造の女神・担任):
「(内心:介入術? いえ、ただの天然よ。でもこれ以上は突っ込めないわ……)」
「ふふ、真白様にはすべてお見通しですわね!」
(知恵のソフィア・書記):
「(内心:論理的整合性が取れていないのに、なぜか納得させられる……!)」
「まさに、御意にございます!」
(美のヴィーナス・副会長):
「(内心:今の発言、美しくも無防備すぎる……!)」
「素晴らしい! 感服いたしました!」
(勝負の女神・1年):
「(内心:血筋なんて無いっすよ先輩!でも勢いが凄いっす!)」
「真白様、さすがっす!」
(豊穣のデメテル・会計):
「(内心:この天然っぷり、ある意味最強ですわ……)」
「おっしゃる通りですわね!」
(芸術の女神・2年):
「(内心:彼女の感性は、もはや神話の域だ)」
「まさに、その通り!」
(慈愛の女神・3年):
「(内心:可愛い……でも、ドキドキするわ!)」
「ふふ、その通りですね!」
(龍神の翠・役員):
「(内心:血筋など知らんが、真白が言うならそうなのじゃ!)」
「まさにその通りじゃ!」
その時、脳内に一姫の嘲笑う幻聴が響いた気がしました。
(にゃはっは、真白自身が暴走して自滅するにゃ……!)
(ほんと、一姫は余計なことをしてくれたわね……)と内心で毒づきつつ、私は目の前の商品を確認します。
「真白様、これを見てください。明日のセレクトメニュー、これで完璧ですよ。パスタレンジ調理器も届いています」
「これ……100円ショップのじゃない、少し高めのやつですね。うまく使えるかなぁ……」
私は少し不安げに器具を眺めました。神として覚醒していても、中身はいつもの頑張り屋さん。
すると、私の身体から溢れ出す「春の陽だまりのような香り」が、会議室を包み込みました。
「あー……ダメだわ。私まで……眠気が……」
「なんて抗いがたい癒やしのオーラなの……」
会議室にいる女神たちは、真白の神威という名の「猛烈な眠気」に襲われ、次々と机に突っ伏しそうになっていました。邪神をゴミ箱に捨てたというのに、今の私はただ、明日のパスタの仕上がりを少しだけ心配する、どこにでもいる頑張り屋な生徒会長なのでした。




