第25話:放課後の噂、等身大の「真白先生」
スーパーの出口で真白と別れた女子高生たち。彼女たちの心の中にあった「遠い世界の巫女様」というイメージは、真白が放った「特売マヨネーズ」というあまりに等身大な言葉によって、鮮やかに塗り替えられました。完璧な知性と、親しみやすい庶民感覚。そのギャップが、一翻市の少女たちの間で新たな熱狂を生み出そうとしています。
スーパーの出口を後にした女子高生グループは、夕暮れの街角で立ち止まり、先ほどまでの「神を仰ぐような緊張感」から解放されたのか、一斉に安堵と興奮が入り混じった溜息をつきました。
「……ねえ、今の聞いた? 真白さん、マヨネーズの確保でガチで作戦会議してたんだよ……」
一人がクスクスと笑いながら言うと、他のメンバーも肩の力を抜いて同意しました。
「正直、昨日の配信の時の凛とした雰囲気からして、もっと近寄りがたい完璧超人というか、別世界の住人だと思ってた。数学の解説も凄かったし、巫女服が似合いすぎていて……でも、さっきの『家計の節約』とか『特売品』の話を聞いて、なんだか急に親近感が湧いちゃった。私たちと一緒なんだね」
「わかる。あの巫女装束で『タイムバーゲン』って言葉が口から出るギャップが最高すぎない? なんか一気に人間味が出て、すごく好きになったかも」
そんな会話をしていると、一人のスマホが軽快な通知音を鳴らしました。画面を覗き込んだ彼女が、驚いたように声を上げます。
「あ、見て! さっき神社に勉強しに行った友達からLINE来た! 『今、魂天神社で真白先生に勉強見ててもらってるんだけど、数学のあの難解な証明問題、一瞬で解き方教えてくれた! さすが生徒会役員、教え方が神がかり的に分かりやすすぎる……』だって!」
「えーっ、やっぱり! しかも直接教えてもらえるとか羨ましすぎる!」
話題は自然と、昨日の配信のあの制服の話題へとシフトしていきました。
「あのさ、昨日の配信の時の制服、本当に可愛かったよね。どこの高校なんだろう? エンジのリボンとベージュのブレザーの組み合わせなんて、一翻市のどの学校でも見たことないよ。やっぱり、偏差値がものすごく高い名門校なのかな? 校則が自由な学校って言ってたし、真白さん自身がアレンジするくらいの余裕があるってことは、やっぱり頭の回転の速さも次元が違うんだよ」
「うん、絶対そうだと思う。あんなにしっかりしてて、庶民的な買い物術も知ってて、勉強も麻雀も教えてくれるなんて……。完璧すぎて逆に怖いけど、今日話してみたら、ただの面白いお姉さんっていうか、すっごく優しい人だって分かったよね」
彼女たちは、手に持った買い物袋を揺らしながら、まるで宝物を手に入れたかのような誇らしげな笑顔を浮かべました。
「高価なお供え物はいらないって言ってたし、本当に純粋に私たちのことを応援してくれてるんだね。あの人、神様とかそういう枠を超えて、単純に『真白さん』という素敵な存在なんだと思う」
「ねえ、私たちも今度テスト前になったら絶対行こうよ! マヨネーズの節約作戦会議の邪魔にならない程度にね!」
夕闇が濃くなる一翻市の街角で、彼女たちの明るい会話が弾みます。真白という少女が放つ「清らかな日常のオーラ」は、確実かつ静かに、この街の少女たちの心を結びつけ始めていました。彼女たちにとって真白は、畏怖の対象から、憧れ、そして「日常の導き手」へと、その輝きを少しずつ変化させていたのです。
崇拝から親愛へ。真白の飾らない言葉が、少女たちの心を強く結びつけました。謎に包まれた名門校の制服への憧れと、スーパーの特売品を巡る共感。相反する要素を併せ持つ「真白先生」という存在は、もはや伝説ではなく、彼女たちの青春を彩る確かな光となっていました。今夜、一翻市のSNSには、また一つ「優しき巫女」の新しい噂が広がっていくことでしょう。




