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第18話:龍の共鳴、見えない絆

琳琅から贈られた神秘的な勾玉。自分にしか見えないはずのその輝きは、真白が「あちら側」の住人であるという抗えない事実を告げていました。龍の加護による目隠し、そして自分の中に眠る霊力。数式では解けないことわりに戸惑いながらも、真白はその温かな重みを胸に、日常という名の非日常へと再び足を進めます。

「あの、琳琅さん……ちょっと待ってください」


あなたは立ち止まり、首元で妖しく、しかし温かく脈動する勾玉を恐る恐る指先でなぞりました。商店街の喧騒の中で、あなただけの周囲だけが、まるで時間が緩やかに流れるような独特の静寂に包まれています。


「こんなに高価で、見るからにただの石ではない宝物をぶら下げていたら……悪い人たちに狙われたりしませんか? それに、私が身につけた途端、こんなに淡い光を放ち始めて……これじゃあ、周囲の注目を独り占めしてしまいますよ」


あなたの懸念は切実でした。ただでさえ「巫女服の少女」として街の噂になっているのに、胸元で宝石のように輝く異世界の宝物まで身につけていれば、騒ぎはさらに大きくなるに違いありません。


琳琅はあなたの顔をのぞき込み、くすりと楽しげに笑いました。


「真白は心配性なのだ。そんなの、琳琅がちょっとした術をかけているから大丈夫なのだよ」


彼女は小首をかしげ、いたずらっぽく続けます。


「その光が今見えているのは、真白の中に眠る霊力が、この勾玉の龍の意志と共鳴しているからなのだ。普通の人間がこれを見ても、ただの安っぽいガラス玉か、道端に転がっている石ころにしか見えないように、龍の加護で目隠しをしているのだよ。だから真白以外には、これはただの装飾品にしか見えないのだ」


「……えっ。私に、そんな霊力なんてありましたっけ?」


あなたは目を丸くしました。自分が魂天神社の巫女であることは自覚していましたが、それはあくまで長年の習慣や、神様にお仕えするための日課のようなものだと思っていました。自分が「異世界の龍」の宝物と共鳴するような力を持っているなど、考えたこともありませんでした。


「あるのだ! 真白が気づいていないだけで、真白はちゃんと『そちら側』の人間なのだよ。というか、真白がこの世界に来たこと自体が、運命の引き寄せなのだから当然なのだ!」


琳琅の無邪気な断言に、あなたは言葉を失いました。ふと、昨夜の配信の最後に、自分でも無意識に唱えてしまった「祈りの言葉」が脳裏をよぎります。あの時、確かに世界が少しだけ変わったような感覚がありました。


「……はあ。やっぱり、この世界は何でもありなんですね」


あなたは深い溜息をつき、同時に自分が「異世界」という非日常の中にどっぷりと浸かっているという現実を、改めて突きつけられたような気分になりました。数式で割り切れるはずの論理の世界と、龍や勾玉が共存する不思議な日常。その境目に立っているのは、間違いなくあなた自身なのです。


「……でも、さすがにバイトへ行く時は、このままでは目立ちますよね」


あなたは首元の勾玉をそっと握りしめ、冷たい石の感触を確かめました。


「これはポケットに入れておくか、あるいはもっと目立たないように、服の内側に隠すことにしますね。……これ以上、噂の種が増えたら、本当に街中が神殿みたいになってしまいますから」


あなたは苦笑しながら、琳琅の手を引いて再び歩き出しました。下駄の音が、先ほどよりも少しだけ重く、しかし地に足のついた力強さで響きます。勾玉が秘めた温かな光は、服の上からは見えなくとも、あなたの胸の鼓動と重なって、静かに、そして確実に、この街で生きていくための「芯」となっていくのを感じました。


「さて、買い物を急ぎましょう。琳琅ちゃんが待っている『バチバチ飴』、ちゃんと買って帰らないと、今夜は神殿で龍の怒りを買うことになりそうですからね」


「わかってるのだ! 真白、大急ぎなのだ!」


重たい足音を響かせて駆け出す琳琅の背中を見ながら、あなたは首元の勾玉をもう一度だけ確かめました。そこには確かに、異世界からの、あるいは龍からの「加護」という名の絆が、温かな熱として宿っていたのです。

龍の目隠しによって、勾玉の真の姿は真白だけの秘密となりました。しかし、その輝きを知ってしまった彼女の魂は、もはやただの「普通の女子高生」には戻れません。隠された光を胸に抱き、真白は再び賑やかな商店街へと溶け込んでいきます。

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