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一翻市雀魂異界録 〜記憶喪失の居候少女が、麻雀で神格化して春の女神と呼ばれるまで〜  作者: 莎倫
第三章:真白先生の特別授業と熱狂のデビュー配信
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モニターの向こうの熱狂、「余韻」という名の静寂

配信が終了し、生徒会室という名のスタジオを包んでいた緊張の糸が解けました。しかし、モニターの向こう側では、一翻市の夜を塗り替えるほどの熱狂が冷めることなく渦巻いています。佳奈の称賛と、止まらないコメントの奔流。自分が引き起こした「伝説」の規模に、真白は顔を真っ赤にしながらも、巫女としての、そして一人の少女としての自覚を新たにするのでした。

配信が終了し、モニタの赤いランプが暗い黒色へと変わった瞬間、生徒会室という名のスタジオを包んでいた張り詰めた空気が、ふうっと温かくほどけました。しかし、スタジオの静寂はほんの数秒しか続きませんでした。手元のタブレットや大型モニターに表示されたコメント欄は、配信終了後だというのに、怒涛のような勢いで更新され続けています。


佳奈は、まるで魔法を見せられたかのような呆然とした面持ちで、真白をじっと見つめていました。彼女はプロの配信者として、これまで数多の才能あるタレントを世に送り出し、その現場を仕切ってきましたが、今のあなたの振る舞いは、そのどれとも比較できない異質な輝きを放っていたのです。


「真白ちゃん……すごかった。数学の解説があれほど理路整然と、しかも親しみやすく伝わるなんて、正直驚いたわ。それに最後の……あの祈り。スタジオ全体が、本当に神域に切り替わったみたいだった」


佳奈は感嘆の溜息を漏らし、震える手でモニターを指差しました。「見て、コメントが止まらないの。放送終了画面なのに、『余韻がすごすぎて寝れない』とか『アーカイブ公開はいつ?』っていう要望が、もう数千件超えてるわよ」


真白は、佳奈の言葉に小さく肩を震わせ、自分の手を見つめました。まだ、微かに神社の境内で香るような、澄んだ空気が指先に残っている気がします。


「……ありがとうございます。佳奈さんにそう言っていただけて、少しだけ安心しました。でも、正直に言いますと……。最後の方は自分でも、何をどう説明しているのか、言葉が自分の口を借りて動いているような……そんな不思議な感覚でした。あんな風に、皆さんの前で祈りを捧げるなんて、巫女としての、その……無意識の癖が出てしまって」


真白は顔に熱が集まるのを感じました。耳元まで赤く染まり、まるで真冬の境内に灯る焚き火のように、恥ずかしさで顔から火が出そうでした。


「あんな……あんなことを口走ってしまうなんて。視聴者の皆さんは、きっと驚かれたでしょうね。ただの数学の先生だと思っていたら、急に巫女さんになって……。ああ、本当にどうしましょう。恥ずかしくて、このままどこかに隠れてしまいたいです」


そう言いながら、真白は両手で自分の頬を覆いました。その仕草のあまりの愛らしさに、佳奈は思わず声を上げて笑い、そして優しくあなたの肩を叩きました。


「何を言ってるの。みんな、そんな真白ちゃんのギャップにノックアウトされてるのよ。数学を教える凛とした『生徒会役員』と、神聖な祈りを捧げる『巫女様』。この二面性が、今日という日を伝説にしたのよ!」


モニターの流れるコメントを覗き込むと、そこには熱狂の渦が渦巻いていました。


「待って、アーカイブは!? 早く見逃し配信見せてくれ!!」


「もう10回は見返してる(放送終了画面を)。最後の祈り、音量を最大にして聴いてた」


「ぐーたら猫の神様(一姫)よりも、真白ちゃんという本物の巫女様が降臨したという事実」


「今日から俺たちの信仰対象は真白ちゃんに決定したのだ」


「これ、明日から学校で『真白ちゃん拝み』が流行るぞ」


「制服で巫女の祈り……この絶妙なミスマッチが脳を焼く」


コメント欄には、数学の質問を投げかけていたはずの高校生たちや、彼女の解説に感動していた塾の先生までもが、「神々しすぎて語彙力がない」と書き込んでいます。「見逃し配信を早く」という叫びは、まるで渇いた大地に雨を求めるかのような必死さで、秒間数百件のペースで更新され続けていました。


真白は、そんな画面を見て、ようやく少しだけ余裕のある微笑みを浮かべました。自分の恥ずかしさを飲み込み、この多くの人々に何かが届いたという事実に、心がじんわりと温かくなります。


「……私の言葉が、皆さんの明日の力になるなら、それが一番です。でも、次からはもう少し……落ち着いて振る舞えるよう、精進いたしますね。少なくとも、数学の解説中に『ご加護』を唱えるのは、授業としては少し……イレギュラーですから」


真白は自分を律するように背筋を伸ばし、鏡に向かって髪を整えました。その姿は、先ほどまでの「神聖な巫女」から、再び「清楚な生徒会役員」へと戻り始めていました。しかし、その瞳の奥には、神社の木漏れ日のような穏やかで神秘的な光が、しっかりと宿り続けていました。

「授業」と「祈り」が交差した奇跡の1時間。真白にとっては恥ずかしさの極みであっても、視聴者にとってはこれ以上ない救済となりました。画面が暗くなった後も消えない10万人の待機列は、彼女が単なる「知識の伝達者」ではなく、人々の心に寄り添う「導き手」であることを証明しています。

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