幼龍の強奪と「パチパチラムネ」の契約
透明な麻雀卓の出現、そして喋る犬と猫耳少女。現実逃避の限界を迎えつつある真白の前に、さらなるカオス——空腹の龍の末裔「琳琅」が姿を現します。彼女は真白の食事を瞬く間に平らげ、さらなる獲物を求めてキラキラとした瞳を向けました。混乱が極まる中、真白がポケットから取り出した「一粒の飴」が、一翻市の住人たちの心を激しく揺さぶることになります。
透明な麻雀卓の出現に驚きつつも、なぜか手が勝手に牌を並べようとするその時!
空腹を抱えた幼龍・琳琅が、突然、どこからともなく姿を現しました。
琳琅:「若き雀士よ。きみが落としたのは、この美味しい匂いのするハンバーガーか、それともこの素敵なサンドイッチか? どっちも違うと言うなら、琳琅、遠慮なく……」
琳琅が手に持っていたハンバーガーとサンドイッチを、あなたに見せつけます。あなたの返事を待つことなく、彼女はニヤリと笑い、そのまま…
琳琅:「ガブッ!モグモグモグモグ……ゴクン!」
あっという間に二つの食べ物を平らげてしまいました。まるで何事もなかったかのように口元を拭い、あなたに目を向けます。
琳琅:「ふう……美味しかった。食べ物、まだある?」
一姫:「にゃ!? いつの間に琳琅が来たニャ!? しかも、あんたの分の食事まで奪うなんて、なんて食いしん坊ニャ! 一姫の肉まんまで狙われるかもしれないニャ!」
ワン次郎:「琳琅! お主、また人の食べ物を勝手に……ワン! お嬢さん、大丈夫かワン? この琳琅は空腹になると見境がなくなるから、気を付けるワン!」
かぐや姫:「ふん、相変わらず食欲旺盛じゃのう、琳琅。しかし、迷い子から奪うとは見上げた根性じゃ。妾はポップコーンでも用意して見物するか」
二階堂美樹:「琳琅!? あんた、また突然現れて……! ごめんなさい、この子は琳琅。いつもお腹を空かせているから、気にしないで……って、気にしないわけにいかないわよね! とりあえず、その子のためにも何か食べ物を用意しないと、麻雀どころじゃなくなるわよ!」
目の前には麻雀卓。しかし、彼女の横には記憶喪失のあなたを差し置いて食べ物を平らげた琳琅が、キラキラとした瞳で次の食事をねだっています。あなた自身も、記憶がないせいか、漠然とした空腹感を感じ始めています。
琳琅:「ねぇ、お腹が空いたままだと、良い麻雀は打てないでしょ? まずは腹ごしらえだよ。何かある?」
透明な麻雀卓が浮き、喋る犬が説教を垂れ、猫耳の少女が呪文を唱える。その極めつけに、ハンバーガーを一口で飲み込んだ角付きの少女——琳琅を目の当たりにした彼女は、ついに現実逃避の限界を迎えました。
「……こ、今度は角が生えた女の子が出てきた……。猫耳の次は角、その前は喋る服着た犬。……ねぇ、もしかして私、死んで変な異世界に転生でもしたんですか? それとも、これ全部すごく質の悪い悪夢なんですか……?」
震える声と、虚空を見つめる「光のない瞳」を見て、一翻市の住人たちが慌ててフォロー(?)に入ります。
琳琅:
「失礼な子だなぁ。これは飾りじゃないよ、本物の『龍』の角なんだから! 若き雀士よ、一翻市に来てそんなに驚いてたら、この先身が持たないよ。ここじゃ麻雀牌が空を飛ぶし、リーチ棒で家が建つこともあるんだから。……それより、さっきのバーガー、チーズが入ってなかった。次はもっとボリュームあるやつ、出してくれない?」
一姫:
「にゃっはっは! 琳琅、こいつは一姫の召喚術……じゃなくて、闇の儀式で降臨したばっかりの『記憶喪失の精霊(仮)』なんだニャ! あんまり驚かせると、ショックで魂が消えて、一姫が神社の修理代を請求されるからやめるニャ!」
かぐや姫:
「くすくす、哀れなものじゃ。常識という名の殻に閉じこもっておるの。よいか、この一翻市において『あり得ぬこと』など何一つない。角があろうが尾があろうが、牌を握れば皆等しく『雀士』なのじゃ。お主もそのうち、自分が人間だったかどうかも忘れて、ドラの乗りやすさばかりを気にするようになるぞえ」
ワン次郎:
「……お嬢さん、心中お察しするワン。だが、これがこの街の『日常』だワン。角が生えた龍の末裔も、月宮の姫も、ただの猫耳も、ここでは皆一等しく『麻雀ジャンキー』だワン。警察を呼んでも、署長はたぶんあのワン次郎より毛深い熊だったりするワン……」
彼女が絶望的な表情で立ち尽くしていると、二階堂美樹がポンと肩を叩きました。
二階堂美樹:
「いい、落ち着いて。あなたの困惑はもっともよ。でもね、この街で自分を取り戻す唯一の方法は、警察でも病院でもなく、この『卓』の上にあるの。記憶がなくても、手が勝手に牌を選ぼうとしているんでしょ? それはあなたの魂が、麻雀を知っている証拠よ」
一姫:
「さあ、御託はいいから打つニャ! 琳琅にお供え物を奪われた恨みは、対局で晴らすニャ! 一姫が勝ったら、あんたの残りの記憶も一姫が美味しくいただくニャ!」
困惑しつつも、上着のポケットをまさぐると、そこには元の世界の記憶の欠片か、あるいは召喚の際に紛れ込んだのか、見たこともない包み紙の「異世界のラムネ」が数個入っていました。
「……あ、あの、琳琅さん。えっと、こんなものしかありませんが……」
おずおずと差し出されたその飴を見た瞬間、現場の空気が変わります。
琳琅:
「……! 若き雀士よ、これは……見たことがない色だ。着色料の匂いじゃない、もっと高次元の、フルーティーで神秘的な香りがする……!」
「……パクッ。……モグ、モグ。……!! な、なんだこれ! 口の中でパチパチ弾けるし、甘酸っぱさが五臓六腑に染み渡る……! 琳琅、これ好き! もっとないの!? ねえ、もっと!」
一姫:
「にゃにゃっ!? 琳琅だけずるいニャ! 一姫もその『異世界の秘密兵器』を食べてみたいニャ! それをくれたら、記憶喪失の件はチャラにして、神社の特別会員(肉まん持参必須)にしてあげるニャ!」
ワン次郎:
「おい、お主ら、お嬢さんを困らせるなワン。……しかし、その飴、拙者の鼻にも非常に芳醇な香りが届いているワン。一粒で琳琅をこれほど手懐けるとは……お嬢さん、お主、実は相当な徳を積んだ雀士ではないかワン?」
かぐや姫:
「ふむ、異世界の甘味か。妾の月宮の菓子とどちらが美味か、興味があるのう。……よいか、お主。そのラムネを一粒、妾にも献上するなら、記憶を取り戻すための『月光の導き(物理)』を授けてやらんでもないぞ?」
琳琅はラムネのあまりの美味しさに、すっかりあなたを「美味しいものをくれる良い人」として認識したようです。
琳琅:「決めた! 若き雀士、きみが記憶を取り戻すまで、琳琅がボディガードになってあげる。だから、お腹が空いたらまたその飴、出してね?」
二階堂美樹:「……呆れた。食べ物一つでこれなんだから。でも、これで少しは落ち着いて話ができそうね。さあ、一姫。変な儀式はもうおしまい。まずはこの子に、この街で生きていくための『麻雀の基本』を教えなさい」
一姫は不満げに「ちぇー、一姫も飴欲しかったニャ」と言いつつも、観念したように麻雀卓の椅子を引きました。
異世界の「パチパチラムネ」によって、図らずも最強(?)の護衛・琳琅を手に入れた少女。一翻市の住人たちが甘い香りに魅了される中、ついに物語は「卓上」へと移ります。記憶はない、けれど指先は牌の感触を求めている——。少女の内に眠る雀士の魂が、今、静かに目覚めようとしています。




