放課後の決意と「新人JK・真白」の誕生
一翻市の琥珀色の夕陽が差し込むカフェ「エテルニテ」。佳奈の情熱的なプロデュースと礼奈)の温かな後押しによって、記憶を失った巫女見習い・真白の新しい物語が動き出しました。それは「清楚な現役JK」として、自らの知性を武器に世界と繋がる、全く新しい「放課後」の始まりでした。
ふと、彼女は会話の中でふと抱いていた疑問を口にしました。
「そういえば佳奈さん、商店街を歩いているとき思ったんですけど……一翻市の学生さんって、制服を着ていない子も多いですよね? 自由な校風なんですか?」
佳奈はニヒッと笑うと、お茶を一口飲んで言いました。
境界線の曖昧さ: 「ああ、それね! この街は魔法の端っこみたいなところがあるから、制服の概念自体が結構ルーズなんだよ。おしゃれで私服の子もいれば、逆にパジャマで登校する子もいるしね」
龍の子供の日常: 「それにほら、昨日真白ちゃんが会った琳琅ちゃんみたいに、龍の角が生えてる子が普通にキャンディ舐めながら歩いてる街だよ? 誰がどんな格好をしてようと、誰も気にしないのがこの街の流儀なんだ」
巫女装束への視点: 「だからさ、真白ちゃんがいつも着てる巫女装束で街を歩いたって、誰も文句言わないし、むしろ『あ、魂天神社の巫女さんだ』って言われるだけで終わると思うよ?」
思わず吹き出しそうになりながら、エプロンを握りしめました。
「いえいえ、佳奈さん! それはさすがに……街の人から見たら『本格的なコスプレをしている熱心な子』だと思われませんか? 私はあくまで、ここでの生活のために形だけ巫女の代理をさせてもらっている身ですし……」
礼奈さんもカウンター越しに穏やかな笑顔を浮かべています。
礼奈の視線: 「真白ちゃん、コスプレと言われようが、あなたが神社を大切に思ってくれていることは、街の人々もちゃんと見ていますよ。形から入るのも、一つの真実の形かもよ」
窓の外では、朝の霧が晴れて、一翻市特有の賑やかな喧騒が戻ってきました。勉強の合間に交わされる女の子同士の他愛もないおしゃべり。記憶の欠片はまだ戻らなくても、この温かい時間——偏差値の高い解法をスラスラと綴る指先の感覚、佳奈との飾らない会話——そのすべてが、彼女の新しい物語の確かな輪郭を形作っていました。
「佳奈さん、本当に巫女装束で街を歩いたら、通りすがりの人みんなに二度見されてしまいますよ! 『今日、何かのお祭りですか?』って質問攻めにされる未来しか見えませんから」
真白が少し困ったように笑いながらそう言うと、佳奈はテーブルに肘をついて、きらきらと輝く瞳であなたを見つめ返しました。カフェの喧騒が遠のき、二人の間にはまるで放課後の教室のような、親密で穏やかな時間が流れています。気づけば時計の針は大きく回り、西日が『エテルニテ』の大きなガラス窓から差し込み、店内のアンティークな調度品を温かい琥珀色に染め上げていました。
「えー、そうかなぁ。真白ちゃん、顔立ちもすっごく可愛いし、巫女装束を着て歩いていたら、むしろ歩くパワースポットみたいでみんな笑顔になると思うんだけどな!」
佳奈は、先ほど彼女が解いたノートの解答を見つめ、感嘆の声を漏らしました。記憶の断片を紐解くようにスラスラと難問を片付けていくあなたの頭脳の明晰さと、その控えめな可愛らしさのギャップに、彼女の中の「プロデューサーの魂」がさらに刺激されたようです。
「ねえ、じゃあさ。ライブで歌って踊るのが恥ずかしいなら、魂天神社の『主の巫女さん』として、今のその『最強の頭脳』を活かした勉強配信をしてみない? リアルなアイドル配信じゃなくて、お部屋でまったり勉強するスタイルなら、真白ちゃんのその清楚な雰囲気にぴったりだよ!」
佳奈の突拍子もない——けれど、どこか理にかなった提案に、あなたは思わずペンを止めてしまいました。
「勉強配信、ですか……? でも、そんなことを突然始めたら、境内の掃除をサボっている一姫さんに怒られてしまうかもしれません。それに、配信となるとずっとこの格好(制服)で映ることになりますよね。この学校の制服、この街には存在しないデザインだから、みんなに変な目で見られないか心配なんです」
不安げに自分の着ているベージュのブレザーを見つめると、佳奈は「大丈夫、大丈夫!」と大きく首を振りました。
「この街はさ、龍の角が生えてる子が歩いていても誰も驚かない街なんだよ。真白ちゃんの制服が珍しくても、みんな『あ、新しい個性のファッションなんだな』って、すぐ納得してくれるはずだよ! むしろ、そのクラシカルで清楚なスタイルは、動画配信の画面越しにものすごく映えると思うな。巫女さん見習いが、なぜか不思議な制服を着て、難しい問題をスラスラ解いていく……。それって、最高のキャラクターじゃない?」
佳奈の言葉は、彼女の迷いを少しずつ「新しい挑戦」へと塗り替えていきます。記憶を失った巫女見習いが、この街の片隅で、自分の居場所を見つけるための新しい光——。
「もし、その配信を見てくれた誰かが、私の掃除している境内を訪ねてくれたり、礼奈さんのカフェ『エテルニテ』に興味を持ってくれたりするなら……。形だけの巫女代理ですけど、試してみる価値はあるかもしれませんね」
「礼奈さん、佳奈さんの言う通り、この街ならこの服装でも『個性的なファッション』として受け入れてもらえるでしょうか……。形だけの巫女代理ですけど、もし本当にこの配信が誰かの役に立てるなら、やってみたいです」
少し不安げに礼奈の顔を覗き込むと、礼奈は温かく目を細めて頷きました。
「真白ちゃん、いいと思うよ。あなたがその制服を纏って真剣に学び、誰かに寄り添う姿は、きっと多くの人の心を打ちます。ここ『エテルニテ』も、そんなあなたを全力で応援しますから」
礼奈の後押しを受け、真白が覚悟を決めると、佳奈は「決まりだね!」と弾んだ声でスマホを取り出しました。
「よし、じゃあ早速社長に連絡しなきゃ! 『超絶清楚な新人JK』見つけたって言えば、秒で許可降りるから!」
佳奈の行動力はまさにアイドル級でした。彼女は真白の制服姿を数枚撮影すると、すぐさま所属事務所の社長へ送信し、SNSのDMで「これ、マジで逸材だから! 明日の配信でデビューさせる!」と熱烈なプレゼンを開始しました。
社長からの返信は驚くほど早く、数分後には「最高だ、即座にプロジェクトを始動させろ!」との許可が下りたのです。
「はい、許可完了! 明日からもう配信開始だよ、真白ちゃん!」
「えっ、あ、明日からですか!? 心の準備が……」
「大丈夫、佳奈がバッチリプロデュースしてあげるから!」
その場ですぐに、配信でのあなたのプロフィールが決められていきました。
基本設定: 「一翻市のとある高校に通う現役JK」。
制服: 「私服が自由な校風という設定で、あえて個性的でクラシカルなデザインの制服を『お洒落なこだわり』として着用している」ということに決定。
放課後の顔: 「学校が終われば、お気に入りのカフェ『エテルニテ』でアルバイトに励む、働き者の女子高生」。
休日の顔: 「実家(魂天神社)の巫女代理として、境内の清掃や神域の管理を任されている」。
「完璧なキャラ設定だね! 『昼はカフェ店員、夜は巫女、素顔は最強JK』……これ、人気が出ないわけがないよ!」
打ち合わせが終わる頃には、空はすっかり夕焼けに包まれていました。明日の配信に向けて佳奈とあれこれと話し合っていると、ふと現実的な不安がよぎります。
「……こんなに設定を盛ってしまって、本当に大丈夫でしょうか。私、記憶がないせいで、学校の名前を聞かれたらなんて答えればいいのか、まだ少し不安で……」
すると佳奈は、頼もしそうに胸を張りました。
「大丈夫だよ! 『秘密の多い転校生』ってことにしておけばいいんだから! それに、分からないことは全部、配信中に真白ちゃんの最強の頭脳で解決していこうよ。視聴者と一緒に学んでいくスタイルなら、嘘をつかなくても自然体でいられるでしょ?」
その言葉に、真白は安堵の溜息を漏らしました。
確かに、記憶という「過去」に縛られるよりも、今、目の前にある「配信」という新しい世界で、視聴者と共に新しい思い出を作っていくことの方が、ずっと未来に近い気がしたのです。
「……分かりました。私、やってみます。一姫さんにどんな顔で報告しようか、今からドキドキしますけど……」
真白はカフェの大きな窓に映る、ベージュのブレザーを着た自分の姿を見つめました。それは、記憶を失う前の自分がどうだったかは分かりませんが、今の彼女が「なりたい」と願った、新しい彼女の形でした。
「形から入るのも、一つの真実の形」。礼奈の言葉通り、真白は自らの意志で「生徒会役員風のJK」という新しいアイデンティティを纏いました。明日から始まる配信という荒波。しかし、彼女の持つ天性の聡明さと誠実さがあれば、それは一翻市に新しい奇跡を起こす輝かしい船出となるはずです。




