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アイドル・藤田佳奈の来店

カフェ「エテルニテ」に舞い降りたキラキラのアイドル、藤田佳奈。彼女の鋭い感性は、真白が纏う異世界の制服と、その奥に隠された類まれなる知性を瞬時に見抜きました。パチパチラムネとハーブティーが繋いだ二人の縁は、やがて勉強の悩みへと発展。記憶を失ったはずの真白の指先が、ノートの上で驚くべき奇跡を綴り始めます。

「いらっしゃいませ、カフェ『エテルニテ』へようこそ!」


ドアベルの音と共にあなたが元気よく挨拶すると、そこには可愛らしいパーカーに身を包んだ、ひときわ目を引く少女が立っていました。


礼奈:

「ふふ、佳奈ちゃん。おはよう、今日も早いのね」

礼奈さんが親しげに声をかけると、その少女——藤田佳奈は、パッと顔を輝かせました。


佳奈:

「礼奈さん、おはよー! ……って、わわっ!? 礼奈さん、新しい店員さん? しかも……その制服、めちゃくちゃ可愛くない!?」

佳奈は真白のそばに駆け寄ると、興味津々といった様子で彼女の制服をじーっと見つめ始めました。


佳奈:

「それ、どこの学校の? この辺じゃ見ないデザインだよね。チェックの感じとか、ブレザーのカットとか……すごくセンスいい! 佳奈の学校のも可愛いけど、その『清楚な転校生』感、マジでヤバいよ!」


アイドルとして活動している彼女の感性に、真白が召喚された時に着ていた「異世界の制服」は、とても新鮮で魅力的に映ったようです。


「ええっ、あ、ありがとうございます……。そんなに珍しいでしょうか? 私は真白といいます。今日からここでお世話になっているのですが、この服は……その、私にとっての『唯一の正装』のようなものでして」


佳奈:

「真白ちゃんっていうんだ! あのねあのね、真白ちゃん、アイドルとか興味ない!? 佳奈が所属してる事務所の社長に紹介したら、絶対秒でスカウトされちゃうよ。その透明感と制服の着こなし、まさに『逸材』って感じ!」


真白は「アイドル」という聞き慣れない言葉に、首を傾げて困り顔になってしまいます。

「あ、アイドル……ですか? いえ、私はただの巫女見習いで、今はこうして礼奈さんの委員長……じゃなくて、店主さんの助手をしているだけで精一杯でして。……佳奈さんは、とてもキラキラしていて、本当にお星様みたいですね」


礼奈:

「ふふ、佳奈ちゃん。マシロさんをあんまり困らせないであげて。彼女はエテルニテの大切な看板娘なんですから」


佳奈はいつもの特等席に座ると、学校の悩みや、最近ハマっているゲームの話を始めました。麻雀のプロ級の腕前を持つ彼女ですが、今日は「打ちたい」というよりは、この穏やかな空間でリラックスしたい様子です。


佳奈:

「あー、やっぱりここに来ると落ち着くなぁ。撫子先輩に麻雀でボコられたあとの、佳奈のメンタル回復スポットだね! ……マシロちゃん、佳奈に美味しいお茶、淹れてくれる?」


「お茶ですね、お任せください! 佳奈さんのような素敵なお客様にぴったりの、元気が湧いてくる『黄金比』のお茶をお出ししますね」


「佳奈さん、アイドルのお仕事ってお忙しいんですか? もしよろしければ、この甘いパチパチラムネ……少し変わっていますけど、お疲れに効くかもしれません。召し上がってみてください」


あなたはそう言って、制服のポケットから大切に持っていた一粒のラムネを差し出しました。琳琅にも喜ばれた、この異世界の不思議な駄菓子。キラキラと輝くアイドルである佳奈には、少し庶民的すぎるかなと少しだけ不安になりましたが……。


「わっ、何これ? 宝石みたいに綺麗! ……真白ちゃんがくれるなら、佳奈、喜んで食べちゃうよー。いただきまーす!」

佳奈は躊躇なく飴を口に放り込みました。……数秒後。


「……!? んんっ、お口の中で……何かが跳ねてる! ライブの特効(特殊効果)みたいにパチパチ鳴ってるよ! すごい、これマジでヤバい! テンション爆上がりなんだけどー!」


佳奈は椅子から飛び上がりそうな勢いで喜び、その無邪気な反応に礼奈さんも「ふふ、そんなに喜んでもらえるなんて。真白ちゃん、大正解でしたね」と目を細めました。


「真白ちゃん……優しいね。アイドルやってるとさ、周りは『完璧な佳奈』ばっかり求めるけど、ここに来てマシロちゃんの飴を食べてると、ただのゲーム好きの佳奈に戻れる気がする。……ありがと!」


彼女はリラックスした様子で背もたれに体を預けました。今日は麻雀の話もお仕事の話もお休み。ただ、エテルニテの静かな空気と、あなたの優しさに浸っていたいようです。


「佳奈さん、せっかくですからラムネに合うような、少し酸味のあるハーブティーをお淹れしましょうか。今の佳奈さんのキラキラした感じに、きっと合うと思うんです」


ハーブティーの鮮やかな色が、パチパチラムネで弾ける彼女の笑顔にぴったりだと思い、あなたはすぐさまカウンターへと向かいました。


棚から、ローズヒップとハイビスカスがブレンドされた茶葉を選び出しました。


「(……お湯の温度は少し高めで、色をしっかり引き出して。そこに、ほんの少しだけ蜂蜜を加えれば、ラムネのパチパチ感とハーブの酸味が綺麗に調和するはず……!)」

かつてどこかで覚えた「癒やしのレシピ」が、淀みなく形になっていきます。


「わあ、すっごく綺麗なルビー色! これ、佳奈のために考えてくれたの? マシロちゃん、やっぱりスカウトしたほうがいいよぉ。こんなに気が利く子、放っておくのはもったいない」


佳奈はお茶を一口飲むと、ホッとしたように息をつき、改めてあなたの制服を眺めました。


「その制服、やっぱりいいなぁ。真白ちゃん自身の雰囲気と、その『ちょっと古風だけど洗練された感じ』がマッチしすぎ。佳奈のアイドル衣装も可愛いけど、そういう『本物の制服』の魅力には勝てないかも」


「本当ですか? 佳奈さんにそう言っていただけると、この格好でここに立っている自信が持てます。……なんだか、佳奈さんとお話ししていると、本当の同級生とお茶をしているみたいで楽しいです」


礼奈さんもカウンター越しに、「佳奈ちゃんがこんなに初対面の人と打ち解けるなんて、真白ちゃんの不思議な力ですね」と優しく微笑んでいます。


「佳奈さん、そんなにまじまじと見られると恥ずかしいです……。でも、アイドルの方にファッションを褒めていただけるなんて、最高の自信になりますね!」


頬を染めて照れ笑いを浮かべると、佳奈はハーブティーのカップを置くのも忘れて、身を乗り出しました。


「いやいや! 真白ちゃん、謙遜しすぎだって! その制服の清楚さと、今の照れ顔……これ、ステージでやったらファンが絶滅するレベルの破壊力だよ!? 佳奈、マジで本気だからね。今から事務所の社長に電話して……あ、いや、いっそのこと佳奈と一緒にユニット組んじゃう!?」


「ふふっ、佳奈ちゃん。スカウトもほどほどにね。真白ちゃんがいなくなったら、この『エテルニテ』の平和な朝がなくなってしまいますから」


礼奈は困ったように笑いながらも、あなたの制服姿と、佳奈さんのアイドルらしい華やかさが並んでいる光景を、とても微笑ましそうに眺めています。


「あ、いけない。もうすぐランチタイムですね」

あなたは時計を見て、テキパキとエプロンの紐を締め直しました。


結局、ランチタイムが始まるまでの穏やかな時間、あなたと佳奈の「JKトーク」に花が咲くことになったのです。


「真白ちゃん、これ見てよ。今度の試験範囲なんだけど、この現代文の読み解きがさっぱりで……」と佳奈が参考書を広げたとき、あなたの手元にそのノートが渡りました。真白は「記憶がないので……」と恐縮しながら目を通しましたが、途端に驚くべき現象が起きました。


ペン先は迷うことなくノートの上を走り、複雑な論説文の構造や古文の文法を、まるで呼吸をするかのようにスラスラと解き明かしていったのです。

難解な数式や記述問題が埋まっていく様子を見て、佳奈は目を丸くしました。


「真白ちゃん、記憶がないとか言いつつ、実はめちゃくちゃ偏差値高い高校に通ってたんじゃないの!? 脳みその回転速度が速すぎるよ!」


真白自身も、解いている最中の「懐かしい」という感覚と、自分が誰であるか思い出せない「もどかしさ」の狭間で、少しだけ戸惑いつつも、解けることの快感を隠せませんでした。

記憶は失われていても、培ってきた知性は魂に刻まれている。真白の鮮やかな解答は、単なる勉強の枠を超えて、佳奈というトップアイドルを驚愕させるほどの輝きを放っていました。エテルニテの静かな朝。ハーブティーの香りと共に、新しい「自分」の輪郭が、少しずつ、しかし鮮明に描き出されていきます。

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