真っ白なエプロンと朝の光
開店前のカフェ『エテルニテ』。真白の「掃除の本能」が、店内の微かな埃を逃しません。ピカピカに磨き上げられた空間で、礼奈から贈られたのは、清潔感あふれる真っ白なエプロン。ベージュのブレザーにその白を重ね、彼女は今日、本当の意味で『エテルニテ』の看板娘として、新しい朝を迎え入れます。
商店街を通り抜け、大人気カフェ『エテルニテ』の重厚な扉が見えてきました。開店前の準備をしている礼奈さんの姿が、ガラス越しに映っています。
「礼奈さん、おはようございます! ……あ、あそこ! ほんの少しだけ埃が。すぐにお掃除しますね!」
お店の扉を開けるなり、あなたの【神域の天秤】……ならぬ「掃除の本能」が鋭く反応しました。朝の光が差し込む美しい『エテルニテ』の店内に、昨日まではなかった、ほんの僅かな塵。真白は挨拶もそこそこに、慣れた手つきで掃除用具を手に取りました。
「(シュッシュッ、と拭き掃除をしながら)ふふ、やっぱり朝の空気は澄んでいないと! 礼奈さん、このテーブルの角も少し曇っていたので、ピカピカにしておきましたよ!」
礼奈:
「ふふっ、おはようございます、真白ちゃん。……あら、本当。私では気づかないような隅々まで……。真白ちゃんが来てくれると、お店の空気がまるで洗われたみたいに透明になりますね」
車椅子の礼奈さんは、驚きつつも嬉しそうに真白の働きぶりを見つめています。彼女が愛情を込めて守ってきたこの場所が、真白の手によってさらに輝きを増していく光景は、見ていてとても心地よいもののようです。
「お待たせしました! さあ、これで開店の準備は万端ですね。……あ、一姫さんには、今頃神社でしっかり『雑巾がけ修行』をさせていますから、ご安心ください。終わってなかったら、今夜の晩御飯は抜きって約束してきましたから!」
礼奈:
「えっ……ご飯抜きですか? 真白ちゃん、意外と厳しいわね。……でも、一姫ちゃんもたまには体を動かさないと、肉まんの食べ過ぎで丸くなっちゃいそうですものね」
礼奈さんはクスクスと笑いながら、カウンターに二つのカップを並べました。
「あ……!礼奈さん、私、今日もこの制服を着用するんですか?」
掃除の手を止めた真白は、自分のベージュのブレザーとチェックスカートをまじまじと見つめながら問いかけました。記憶喪失のあなたにとって、この服は「昨日礼奈さんが用意してくれた、エテルニテの店員としての制服」という認識です。
礼奈:
「ふふっ、もちろんです。真白ちゃん、その制服姿が本当によく似合ってるし……何より、お客様の間でも『エテルニテに新しく入った、清楚な転校生風の店員さん』として、もう話題になっているんですよ?」
「ええっ、話題に……!? 恥ずかしいです。私はただ、この格好だと動きやすいですし、礼奈さんと一緒にいると本当に学校の放課後にお手伝いをしているような、不思議な安心感があるから着ているだけなのですが……」
少し頬を赤らめながら、スカートの裾を整えました。巫女装束の時は背筋が伸びるような神聖な気持ちになりますが、この制服を着ると、何でもない「等身大の女の子」として世界と向き合えるような気がしています。
礼奈:
「真白ちゃんが掃除してくれたおかげで、お店が昨日よりもずっと広く感じます。……ねぇ、真白ちゃん。今日はその制服に似合うような、新しいエプロンも用意したんです。つけてみてもらえますか?」
礼奈は、エテルニテのロゴが入った、清潔感のある真っ白なエプロンを差し出してくれました。
「わあ、素敵なエプロン……! ありがとうございます、礼奈さん! これでますます『エテルニテ』の一員になれた気がします。早速つけてみますね!」
制服の上からエプロンの紐を背中でキュッと結ぶと、鏡に映る自分は昨日よりもずっと店員らしく、そしてこの場所に馴染んで見えました。
「……よし! これで気合が入りました。礼奈さん、見てください! このエプロンをつけていると、なんだかどんなに忙しくなっても、笑顔で乗り越えられる気がします。私、エテルニテのために一生懸命働きますね!」
礼奈:
「ふふっ、本当に眩しいくらいです、マシロさん。その白さが、あなたの心の綺麗さを表しているみたい。……さあ、間もなく開店です。今日も素敵な出会いがありますように」
カランカラン、と軽やかなドアベルの音が店内に響きました。
「いらっしゃいませ! カフェ『エテルニテ』へようこそ!」
満面の笑みで最初のお客様を迎え入れます。昨日は緊張でおぼつかなかったお辞儀も、今日は自然と体が動きます。お冷を運び、注文を伺い、カウンターでは礼奈さんの所作を盗み見ながら、自分なりの「おもてなしの黄金比」を実践し始めました。
「(……あ、あのお客様、少しお疲れのよう。窓際の、朝日が一番綺麗に見える席へご案内しましょうか。……それから、あちらの常連さんは……)」
「礼奈さん、あちらのお客様、昨日も来てくださった方ですよね? お好みの温度を覚えているので、私が淹れてみてもいいですか?」
真っ白なエプロンを揺らしながら、あなたは『エテルニテ』に新しい風を吹き込んでいます。
掃除で磨かれた窓ガラスのように、真白の誠実な働きぶりは店内の空気を一変させました。真っ白なエプロンは、彼女の純粋さと、この場所を大切に思う気持ちの象徴。記憶を失った少女は今、一翻市の穏やかな朝の中で、自分だけの「居場所」を鮮やかに描き出しています。




