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鮭おにぎりの温もりと、新しい居場所への予感

魚屋の店主の善意で譲り受けた立派な鮭。真白は、不透明な資金への罪悪感を抱えながらも、それを「徳」の宿る料理へと変え、一姫の心と体を満たしました。平穏を取り戻した魂天神社の翌朝、清浄な空気とは裏腹に深刻な「運営資金不足」に直面した一行は、新たな縁に導かれ、商店街の外れにある一軒のカフェへと目を向けます。

夕食のメインは、八百屋の隣の魚屋で「お嬢ちゃん、これ持っていきな!」と格安で譲ってもらった立派な鮭です。不透明なお金で買ったものとはいえ、店主の善意とおまけが加わったことで、あなたの心は少しだけ救われていました。


「一姫さん、見てください。この鮭、すごく脂が乗っていて美味しそうですよ。安く買えた分、余ったお金はいつか必ず、この街の困っている人のために使わせてくださいね」


一姫:

「にゃあ! その鮭、一姫がさっきからずっと狙ってたやつニャ! 焼ける匂いだけで、お腹と背中がくっつきそうだニャー!」


一姫の期待に応えるように、ふっくらと焼き上げた鮭の身を丁寧にほぐし、ほかほかの炊きたてご飯に混ぜ込みます。


「一姫さん、おにぎりの中に一姫さんの大好きな鮭をたっぷり入れましたよ。……たくさん食べて、明日からまた一緒に神社を盛り立てていきましょう」


一姫の小さな手に握りたての大きなおにぎりを手渡します。それは、罪悪感という名の「毒」を、あなたの真心の温もりで「薬」へと変えた一品でした。


一姫:

「……(はふはふ、と頬張る)……にゃふぅ。……美味しいニャ。あんたの作るご飯は、なんだか胸の奥がじんわり熱くなるニャ。……明日、掃除もっと頑張るニャ。たぶん。少しだけ」


ワン次郎:

「……お嬢さん、お主の料理には『徳』が宿っているワン。ただの空腹を満たす以上の、魂の栄養だワン。一姫がここまで真面目な顔で食べるのは、本当に珍しいことだワン」


「お片付けが終わったら、明日のために早めに休みましょうか。……あ、神様の分のお下がりは、明日また大切にいただきましょうね」


丁寧に食器を乾かし、台所を隅々まで清め終えると、一姫を寝床へと促しました。今日一日の激動に疲れたのか、一姫は布団に入るなり「にゃむ……肉まんが……川を流れてくるニャ……」と寝言を漏らし、間もなく隣の部屋から規則正しい、けれど少し賑やかないびきが聞こえてきました。


一姫の無防備な寝息に口元を綻ばせながら、あなたは自分の部屋へと戻ります。窓から差し込む月光は、彼女が磨き上げた廊下を白く照らし、神社全体が深い眠りにつく準備を整えていました。


深い眠りに落ちると、周囲の景色が静かに変化し始めました。それは夢のようでありながら、現実よりも鮮やかな「神域の静寂」です。


鏡の揺らぎ:

現実の拝殿に置かれた神鏡が、あなたの呼吸に合わせるように微かに波打ち、柔らかな白光を放ちます。その光は、真白が今日一日かけて注いだ「誠実さ」と「謝罪の念」に呼応していました。


浄化の波動:

真白が眠る部屋の空気が、まるでお香を焚いたかのように澄み渡っていきます。今日、商店街で浴びた街の喧騒や、不浄な金に対する罪悪感という名の「心の澱」が、魂天様の加護によって一粒ずつ結晶化し、光の粒子となって消えていきました。


魂の修復:

夢の中で、真白は誰かの温かな手で頭を撫でられているような感覚を覚えます。それは、記憶を失ったあなたの不安を包み込み、「ここに居て良いのだ」と肯定する無言の神託でした。


「……その清らかな心のまま、道を示しなさい」


遠くで鈴の音が鳴り響いたような気がして、真白は夢の中で静かに微笑みます。神職としてのあなたの魂は、この眠りを通じて、魂天様の力とより深く共鳴し、磨き上げられていきました。


「(ふぅ、体がとても軽いです。昨日までの霧が少しだけ晴れたような……)……一姫さん、起きてください! 今日も元気に掃除から始めましょう!」


加護に満ちた目覚めを迎え、元気よく一姫の部屋の襖を開けます。そこには、大の字で寝ていた一姫が「にゃん!? 役満振り込みニャ!?」と飛び起きる姿がありました。掃除を終え、門の前を掃き清めてから数時間。境内に流れる空気はどこまでも澄み渡り、昨日までの澱みは一切ありません。しかし、あまりにも「平穏」すぎて、参拝客の影すら見当たりません。


「……今日も、とっても静かですね。平和なのは良いことですが、誰も来ないとなると……」


一姫:「にゃあ……。平和すぎて、お腹が空くニャ。お賽銭箱の中身は、さっき確認したけど『空っぽ』だったニャ。ネズミの足跡すらなかったニャ……」


ワン次郎:「……昨日のような崖っぷちの雀士が毎日来るわけではないからな。この浄化された空気は素晴らしいが、経済的にはまさに『ハコ点』寸前だワン」


空になった財布(というか、昨日の余りのわずかなコイン)を見つめ、深いため息をつきます。


「……平穏なのは魂天様が守ってくださっている証拠ですが、コインがないと明日からの食材も買えませんね。……ねえ、皆さん。私、どこかでアルバイトをしたほうがいいのでしょうか?」


二階堂美樹:「アルバイト? あなたが? ……そうね、その誠実さと美貌なら、街の喫茶店や雀荘の看板娘として引っ張りだこでしょうけど……」


一姫:「にゃにゃっ!? 代理主がバイトに行っちゃったら、一姫のご飯はどうなるんだニャ! 掃除はどうするんだニャ! ……でも、背に腹は代えられないニャ。肉まん代のためなら、一姫も応援するニャ!」


真白が首をかしげると、情報通のワン次郎が「ふむ……」と顎をさすりました。


ワン次郎:

「それなら心当たりがあるワン。商店街の少し外れにある、落ち着いた雰囲気のカフェだワン。あそこなら、お嬢さんのような穏やかな空気を持つ者は歓迎されるはずだワン」


二階堂美樹:

「ああ、あそこね。確か……七海礼奈ちゃんという子が手伝っているお店よ。彼女、お父様がバリスタだった影響でコーヒーにはすごく詳しいのだけど、少し複雑な事情を抱えていてね」


美樹の話によれば、礼奈さんは過去の悲しい事故でご両親を亡くし、そのトラウマから現在は車椅子生活を送っているのだそうです。足の怪我自体は完治しているものの、心が「立つこと」を拒んでいる……。



「(……心の傷で、立てない……。記憶を失った私と同じように、彼女もまた、過去に縛られているのですね)」


一姫:

「礼奈はいい子ニャ! 一姫がたまに遊びに行くと、美味しいお菓子をくれるニャ。でも、お店の親戚の人が最近忙しそうで、人手が足りないって嘆いてたニャ!」


そのカフェを訪ねてみることにしました。もしそこで働ければ、神社の運営費も稼げますし、何より自分と同じように「心の痛み」を抱える礼奈さんの力になれるかもしれないと思ったからです。

おにぎりに込めた真真心が、一姫のやる気を(少しだけ)引き出し、神域を最高潮にまで清め上げました。しかし「清貧」すぎる現実は、真白を外の世界へと連れ出します。かつての記憶を持たない彼女が、過去の傷に囚われた礼奈と出会うとき、一体どのような「黄金比」の奇跡が生まれるのでしょうか。

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