表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
評価を失った悪役令嬢は、すべてを見返すことにした ~誰かに決められる人生なんて、もう終わりです~  作者: ルナ・ローゼ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/25

第12話 上位へ至る条件

 ――“上位に報告します”。


 その言葉が、静かに尾を引いていた。


 わたくしは振り返らない。


 止められないことは、もう分かっている。


 だから、見るべきは一つだけ。


 ――どこへ繋がるのか。


 扉へ向かって歩く。


 足音が、やけに響いた。


 この空間は静かすぎる。

 思考が、そのまま音になるような感覚。


「……次は、“上位”」


 小さく呟く。


 その言葉に、背後の空気がわずかに動いた。


 白い人物が、何か言おうとして――やめた。


 言えない。


 それが、答え。


 扉に手をかける。


 押す。


 今度は、少しだけ重い。


 開いた瞬間、空気が変わった。


 ――温度。


 ほんのわずかに、暖かい。


 そして。


 音がある。


 人の気配。


 現実の、感触。


 わたくしは外へ出た。


 振り返らない。


 あの場所は、もう理解した。


 あとは。


 “繋がり”を辿るだけ。


「どうでした?」


 すぐ横から声がする。


 カイゼル。


 壁にもたれ、最初からそこにいたような顔。


「期待通りでしたわ」


「それはよかった」


 軽く笑う。


 だが、その目は真剣だ。


「それで?」


 一歩、近づいてくる。


「何が分かりました?」


 試すような問い。


 わたくしは、少しだけ考えるふりをした。


 そして。


「三つ」


 指を立てる。


「評価は決まっていない」


「ええ」


「決めている者はいない」


「……半分正解ですね」


「そして」


 もう一本、指を立てる。


「それでも、止まらない」


 カイゼルの笑みが、深くなる。


「いいですね」


 本当に、楽しそうに。


「では、最後の一つは?」


 わたくしは、少しだけ視線を逸らす。


 そして。


 戻す。


「“上位”が存在する」


 その一言で。


 空気が、わずかに変わる。


 カイゼルは、すぐには答えなかった。


 ほんの一瞬だけ、間を置く。


 それだけで十分だ。


 ――当たり。


「どうやって辿り着くつもりです?」


 彼は問い返す。


 今度は、試すのではなく。


 確認するように。


「簡単ですわ」


 わたくしは、軽く笑う。


「向こうから来るでしょう」


「……なるほど」


 納得する。


「例外は、放置されない」


「ええ」


 白い人物の反応。


 あれが証拠。


「ならば、待てばいい」


 カイゼルは頷く。


「ですが」


 指を一本立てる。


「それでは、遅い」


「そうね」


 同意する。


 待つだけでは、観察される側のまま。


 それでは意味がない。


「では、どうする?」


 問いが続く。


 わたくしは、少しだけ歩き出す。


 回廊。


 夜の学院。


 現実に戻る。


 だが。


 見え方が違う。


 すべてが、“構造”に見える。


「揺らします」


 短く答える。


「何を?」


「評価を」


 その一言で、カイゼルは目を細めた。


「具体的には?」


「小さく」


 立ち止まる。


 そして。


「一人」


 振り返る。


「誰かの評価を、意図的に変える」


 カイゼルの笑みが、消える。


 ほんの一瞬だけ。


 それが、答え。


「それは」


 彼は、ゆっくりと口を開く。


「危険ですね」


「ええ」


 否定しない。


「だから、やるのです」


 静かに言い切る。


 ここまで来た以上、中途半端は意味がない。


 変えるなら。


 “分かる形で”変える。


「……対象は?」


 カイゼルが問う。


 その声は、先ほどよりも低い。


 わたくしは、少しだけ考える。


 そして。


 答えた。


「決まっていますわ」


 その時。


 遠くから、足音が聞こえた。


 慌ただしい。


 そして。


「ルナ様!」


 声。


 振り返る。


 そこにいたのは。


 ミレイア。


 息を切らしながら、こちらへ走ってくる。


 わたくしは、わずかに目を細める。


 ――ちょうどいい。


「どうしたのかしら」


 彼女は立ち止まり、肩で息をしながら言った。


「大変なんです……!」


 その声は、震えている。


「評価が……!」


 わたくしは、ゆっくりと頷く。


「消えた?」


「ち、違います……!」


 首を横に振る。


「……下がったんです」


 その一言で。


 空気が変わる。


 カイゼルの視線が、わたくしへ向く。


 わたくしは、静かにミレイアを見る。


「誰の?」


 問いかける。


 答えは、分かっている。


 けれど。


 言わせる必要がある。


 ミレイアは、唇を震わせながら言った。


「……私の、です」


 沈黙。


 短い。


 だが。


 十分。


 わたくしは、ゆっくりと笑った。


「――そう」


 視線を、カイゼルへ向ける。


 そして。


 もう一度、ミレイアを見る。


「では」


 一歩、前へ。


「試してみましょうか」


 その言葉に。


 ミレイアの目が、大きく開かれる。


「え……?」


 わたくしは、優しく微笑む。


 そして。


 はっきりと告げる。


「あなたの評価を、上げますわ」


 その瞬間。


 世界が、動き出した。

ここで初めて、「他人の評価を動かす」という段階に入りました。


ルナが選んだのは、“誰かを使う”のではなく、“誰かを変える”という選択。

ここから、物語はより感情と結果が絡み始めます。


もし少しでも続きが気になりましたら、ブックマークや評価で応援いただけると嬉しいです。

次話では、初めての“外部への干渉”がどんな結果を生むのかを描きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ