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評価を失った悪役令嬢は、すべてを見返すことにした ~誰かに決められる人生なんて、もう終わりです~  作者: ルナ・ローゼ


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第13話 その評価は、本当にあなたのもの?

「――あなたの評価を、上げますわ」


 その一言に、ミレイアは完全に固まった。


「え……?」


 理解が追いついていない顔。

 当然だろう。


 評価は“与えられるもの”。

 そう教えられてきたのだから。


「ま、待ってください……そんなこと、できるはずが……」


「できるかどうかは、今から確かめるのです」


 わたくしは一歩、彼女に近づく。


 逃げないように。

 けれど、追い詰めないように。


「あなた、自分の評価がなぜ下がったか分かっている?」


「……分かりません」


 即答だった。


 目が揺れている。


「急に……本当に急にで……」


「ええ」


 頷く。


「急に、ね」


 それが問題だ。


 評価は“積み重ね”のはずなのに、

 結果だけが急に変わる。


 それはつまり。


 ――過程が見えていない。


「では、確認しましょう」


 わたくしは踵を返す。


「どこへ……?」


「記録を見るのです」


 カイゼルが、小さく笑う。


「おや、もう外でやるつもりですか」


「ええ」


 振り返らずに答える。


「中だけで完結しては、意味がないでしょう?」


 評価は“現実”で変わらなければならない。


 でなければ、ただの遊びだ。


 ミレイアは戸惑いながらも、ついてくる。


 その足取りは重い。


 当然だ。


 自分の価値を、今から“確認される”のだから。


 廊下を抜ける。


 人の気配が増える。


 夜だが、まだ完全には静まりきっていない。


 わたくしは、そのまま掲示板の前で立ち止まった。


 評価一覧。


 誰もが見る場所。


 誰もが信じる場所。


「……あ」


 ミレイアが、小さく声を漏らす。


 そこにあったのは。


 明確な差。


「下がっている……」


 彼女の名前の横の数値。


 以前より、確実に低い。


 そして。


 理由は、書かれていない。


「……ねえ」


 わたくしは静かに言う。


「あなた、何をしたの?」


「な、何もしていません……!」


 即座に否定。


 だが、その声は弱い。


「本当に?」


「……はい」


 少しだけ、間があった。


 それで十分。


「“何もしていない”のに、評価は下がった」


 わたくしは掲示板に触れる。


「それはおかしいと思わない?」


「……思います」


 小さく。


 だが、確かに。


「でも……」


 彼女は俯く。


「そういうものだって……」


「誰が決めたの?」


 被せる。


 間を与えない。


「……え?」


「そういうものだって、誰が決めたの?」


 繰り返す。


 同じ言葉。


 だが、意味は深くなる。


 ミレイアは答えられない。


 視線が揺れる。


 周囲の空気も、わずかにざわつく。


 数人が、こちらを見ている。


 いい。


 むしろ、好都合。


「ねえ」


 もう一歩、踏み込む。


「あなたは、自分の評価を“見たこと”がある?」


「……え?」


「結果じゃなくて、“理由”を」


 沈黙。


 完全な沈黙。


 それが、答え。


 わたくしは、静かに笑う。


「ないのね」


「……はい」


 小さく、頷く。


「では」


 わたくしは、彼女の手を取った。


 驚いて、びくりと震える。


「見に行きましょう」


「どこへ……?」


「決まっているでしょう」


 少しだけ、笑う。


「“決まる前”へ」


 その瞬間。


 カイゼルの視線が、わずかに鋭くなる。


「……それは」


 彼が言いかける。


 だが。


 わたくしは止まらない。


「大丈夫ですわ」


 振り返る。


「今回は、“触れるだけ”」


 彼は、少しだけ黙る。


 そして。


「……本当に?」


「ええ」


 嘘ではない。


 ただ。


 全部は言っていないだけ。


 再び歩き出す。


 ミレイアの手は、冷たい。


 震えている。


 だが、離さない。


「……怖いです」


 ぽつりと、彼女が言う。


「ええ」


 あっさりと認める。


「怖いでしょうね」


「じゃあ、どうして……」


「簡単ですわ」


 わたくしは前を向いたまま言う。


「怖いままだと、“決められる側”のままだから」


 その言葉に。


 ミレイアの手が、少しだけ強く握られる。


 ほんの少し。


 だが、確かに。


 変化。


 それでいい。


 十分だ。


 再び、あの場所へ。


 扉の前に立つ。


 今回は、迷わない。


 開ける。


 暗闇。


 静寂。


 そして。


「また来ましたね」


 声。


 同じ。


 だが、少しだけ違う。


 警戒。


「ええ」


 わたくしは答える。


「今回は、一人ではありません」


 ミレイアが、わずかに震える。


「……ここは」


「大丈夫」


 短く言う。


 それだけで、いい。


「質問です」


 わたくしは前に出る。


「この子の評価、どこで決まっていますか?」


 間。


 沈黙。


 そして。


「……ここです」


 答えが来る。


 早い。


 つまり。


 隠すつもりはない。


「では」


 わたくしは帳簿を探す。


 すぐに見つかる。


 名前。


 ミレイア。


 そして。


 評価。


 低い。


「理由は?」


「記録されています」


 見る。


 そこにあるのは。


 ――曖昧な言葉。


「努力不足」

「主体性欠如」


 わたくしは、少しだけ笑った。


「便利な言葉ね」


 何にでも当てはまる。


 何も説明していない。


「ねえ」


 ミレイアを見る。


「これ、納得できる?」


「……できません」


 今度は、はっきりと言った。


 いい。


 それでいい。


「では」


 わたくしは、帳簿に手を伸ばす。


「変えましょう」


「え……」


 ミレイアが息を呑む。


 だが、止めない。


 もう、理解している。


 ここで止めれば、何も変わらないと。


 指先を置く。


 流れ。


 揺れ。


 そして。


「――選択します」


 その瞬間。


 評価が、揺れる。


 書き換わる。


 ほんの、少し。


 だが。


 確実に。


 帳簿を見る。


 そこにあったのは。


「……あら」


 小さく、笑う。


「悪くないわね」


 ミレイアの評価。


 ほんの少しだけ。


 上がっている。


「……え?」


 彼女が、信じられない顔をする。


「本当に……?」


「ええ」


 頷く。


「あなたの評価よ」


 その瞬間。


 空気が、震えた。


 強い圧力。


 今までで一番強い。


「……来るわね」


 わたくしは、静かに言う。


「何が……?」


 ミレイアが震える。


 そして。


 声が響く。


「不正な干渉を確認」


 冷たい声。


 白い人物。


 その背後に。


 さらにもう一つ。


 影。


「複数例外の発生を確認」


 その言葉に。


 カイゼルが、小さく呟いた。


「……早いな」


 わたくしは、笑う。


 楽しくて仕方がない。


「どうやら」


 一歩、前へ。


「“見つかった”ようですわね」

評価は変えられる。

そして、それは一人では終わらない。


ルナが踏み込んだことで、“世界側”の反応も変わり始めました。


ここからは完全に「対立フェーズ」に入ります。


もし続きが気になりましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

次話では、“複数例外”としての扱いがどうなるのかを描いていきます。

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