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評価を失った悪役令嬢は、すべてを見返すことにした ~誰かに決められる人生なんて、もう終わりです~  作者: ルナ・ローゼ


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第11話 処理される側か、選ぶ側か

 ――処理対象です。


 その一言で、世界の温度が変わった。


 冷たい。


 だが、それは感情ではない。


 ――機能。


 わたくしを見ているその視線は、明らかに人を見るものではなかった。


 評価するでもなく、観察するでもない。


 ただ。


 分類している。


「……そう」


 わたくしは、ゆっくりと息を吐いた。


 恐怖はない。


 だが、理解はある。


 これは。


 これまでとは違う。


「あなたが、“処理する側”なのね」


 問いかける。


 白い制服の人物は、わずかに首を傾げた。


「処理は、機能です」


 淡々とした声。


「個人ではありません」


 なるほど。


 責任の所在を、さらに曖昧にする構造。


「では、あなたは何をしているの?」


「確認です」


 即答。


「例外の発生を確認し、修正を行う」


 その言葉に、わたくしはほんの少しだけ笑う。


「修正、ね」


 先ほどの圧力。


 あれが、それ。


「では、わたくしは“誤り”なのかしら」


「はい」


 迷いがない。


 即答。


 そして。


 完全に正しいと信じている声。


 わたくしは、その事実に少しだけ興味を持つ。


「面白いわね」


 小さく呟く。


「何がですか」


「誤りを、誰が決めるのかしら」


 白い人物は、一瞬だけ黙った。


 ほんの一瞬。


 だが、確かに。


「定義されています」


 そう返す。


「どこに?」

「――」


 沈黙。


 やはり、そこは答えられない。


 わたくしは、ゆっくりと一歩踏み出す。


 距離を詰める。


 逃げない。


「では、もう一つ」


 視線を合わせる。


「その“定義”は、変わるのかしら」


 白い人物の目が、わずかに揺れる。


 ほんの、かすかに。


「変わりません」


 だが、即座に答える。


 強い。


 だが。


 わたくしは首を横に振る。


「いいえ」


 否定する。


「変わるわ」


 静かに。


 確実に。


「わたくしが、変えたもの」


 帳簿を示す。


「それは、何?」


 沈黙。


 白い人物の視線が、帳簿へ向く。


 そこに残る一行。


『未確定:観察対象』


「……不正な状態です」


 ようやく、言葉が出る。


 だが、それは。


 確信ではない。


 ――判断だ。


「不正、ね」


 わたくしは、少しだけ笑う。


「では、それを“正す”のがあなたの役目?」


「はい」


 今度は迷いがない。


 戻った。


 安定した答え。


「では」


 さらに一歩、踏み込む。


「やってみなさい」


 静寂。


 完全な静寂。


 白い人物は、わたくしを見る。


 その視線が、わずかに変わる。


 今までの分類ではない。


 ――測定。


「……実行します」


 その言葉と同時に。


 空間が、歪む。


 今度は、先ほどよりも強い。


 圧力。


 押し戻すのではない。


 ――上書き。


 帳簿が、震える。


 文字が、揺れる。


『未確定:観察対象』


 その一行が。


 消えかける。


「……なるほど」


 わたくしは、息を整える。


 来ると思っていた。


 これは。


 ただの抵抗ではない。


 ――競合。


「では」


 指先を、再び帳簿に置く。


「もう一度」


 意識を集中する。


 流れを掴む。


 揺れを、読む。


 そして。


「維持」


 短く、言葉にする。


 その瞬間。


 力がぶつかる。


 見えない力同士が。


 押し合う。


 引き合う。


 帳簿の上で。


「……なぜ」


 白い人物の声が、わずかに揺れる。


「なぜ、維持できる」


「簡単ですわ」


 わたくしは、視線を外さない。


「あなたが、“決めていない”から」


 その一言で。


 流れが、変わる。


 圧力が、弱まる。


 ほんの一瞬。


 だが。


 それで十分。


「あなたは、“定義に従っている”だけ」


 さらに言葉を重ねる。


「つまり、“選んでいない”」


 帳簿の文字が、安定する。


 戻る。


『未確定:観察対象』


 完全に。


 わたくしは、ゆっくりと笑う。


「だから、勝てない」


 静かに言い切る。


 白い人物は、動かない。


 だが。


 その沈黙が示している。


 ――理解している。


「……記録」


 彼が、呟く。


「例外の強度、上昇」


 わたくしは、少しだけ首を傾げた。


「それは評価かしら」

「違います」


 即答。


「現象です」


 なるほど。


 評価ではなく。


 観測。


「では」


 わたくしは、一歩下がる。


「次はどうするの?」


 問いかける。


 白い人物は、しばらく黙っていた。


 そして。


「上位に報告します」


 静かに言う。


「対応は、委ねられます」


 わたくしは、ほんの少しだけ笑った。


「やはり」


 予想通り。


「あなたは、決めないのね」


「……はい」


 それは、肯定だった。


 そして。


 この世界の、核心だった。


「では」


 わたくしは、背を向ける。


「わたくしは、選びます」


 その言葉に、空気が揺れる。


 白い人物は、何も言わない。


 止めない。


 止められない。


 それが、答え。


「……次は」


 小さく呟く。


 視線を、扉へ向ける。


「“上位”かしら」


 その言葉に。


 初めて。


 白い人物の表情が、わずかに歪んだ。


 ほんの一瞬。


 だが、確かに。


 それを見て。


 わたくしは、確信する。


 この先に。


 さらに上がある。


 そして。


 そこには。


 ――まだ、“決めている存在”がいる。

ついに「処理側」との正面衝突が起きました。


評価に従う者と、選ぶ者。

ルナは初めて、“構造に勝つ”という体験を得ます。


そして見えてきた「上位」という存在。


もし続きを読みたいと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援いただけると嬉しいです。

次話では、“上位”に向かうための動きが始まります。

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