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世界の歩き方

5/30まで、平日(土日祝は休み)に投稿していきます。

なお、4/18までは、1日3回投稿します。

 ◇


 小一時間ほど休んだだろうか。

 ゴブリンと戦った場所から少し離れた丘で体を休めていた。ルルナの提案で周囲の状況を見渡せる場所に移動していた。もちろん、さきほど戦ったゴブリンの遺体は聖霊魔法で土中に埋めてあり、血の臭いは消えているはずだ。だから、その臭いを辿って他のゴブリンなどの亜獣は来ないはず。


 アイダは丘から見下ろす景色を見て、またもや息を深く吐く。そのため息の先には村が見えていた。その遠目に見える村に、アイダは悩む。どうやって接触したら一番の好印象を稼げるだろうかと頭を悩ませていたのだった。


「なあ、この世界の文化技術レベルってどのくらいなんだ? 千年後っていうくらいなんだから宇宙開拓時代が到来しているんだろうと思ってたんだよ。だけど、あの村を見るに、どうやっても中世文化の感じがするんだよなあ」


 中世の欧州。おそらく、ろくな銃も、そして鉄道もない15世紀の技術世界だと推測する。


『マスターが仰る通りに15世紀文明レベルと把握しています。というのも、最先端の文明は天幻で滅びました。人類は再びゼロから文明を築き直したわけですが、今度は亜獣や魔獣との種族争いーーー生存競争に晒されています。その争いが生じる度に文明が一進一退を繰り返しているようです。したがって混沌の時代と言えるでしょう。要するに千年前のような人間が世界の支配者ではありません。喰われる立場だと認識して下さい』

「食われる立場か。全く本当にファンタジーな世界だよ。ってことは、さっきのゴブリンみたいなのが優勢な世界なんだな?」

『どちらかといえばゴブリンのような亜獣よりも魔獣の方が優勢でしょうか。魔獣は亜獣よりも格が上ですし、魔獣の襲撃によって文明が致命的なダメージを受けていますから。それに対して亜獣は人型が多いので、人間と同じように文明圏を創り上げています。もちろん人間と混在もしています。ですので、人間国家と同じような争いごとが生じています。それでも魔獣並みの破壊は生じていません。それと、祠に祈りを捧げる村人のなかに亜獣ーーー猫族を確認しています』

「なるほどなあ」


 この世界の輪郭が見えたような気がする。さらに詳しく知るためには村に行って情報を得ることが大事だな。しかし俺には金がない。情報の対価として支払えるのは労力くらいだ。そうなると、俺の服装はこの世界に合っているのかが問題になる。確かに、ルルナの聖霊魔法で小奇麗にしてもらったが、奇天烈な身なりになってはいないだろうか。もし村に受け入れられなかったら、孤独なサバイバル生活に突入してしまう。世捨て人になるには些か早計過ぎる。とにかく今は現在の世界情勢を知ることがなによりも先決だ。そうでなければ自分の今後の身の振り方を考えることさえ出来ない。


「そうなると振出しに戻ってしまうな。俺は村の信用を築かないとならない。そうなると、村人の窮地を助けるのが手っ取り早い近道ではあるんだが、そう都合の良くはならないよなあ」

『なるほど、マスターは信用で悩まれているのですね。それならば問題はありません。私は聖霊なので、先ほどの外部接触体となってマスターを祝福すれば良いのです。そうすれば、聖霊に祝福された聖人であると村人たちに認識されて、敬われること間違いなしです!』

「ルルナ?」


 そんなに簡単に行くはずは・・・ないと思うが。いや、ルルナは聖霊だし、魔法も使えるしな。聖霊を前面に持ち出せば、奇異な服装がかえって見栄えるとか? うーん。そう単純に考えていいのだろうか。つまるところ、


「聖霊の権威を使うと?」

『そうです。祠に祈りに来ているのも、聖霊の力を感じてのことでしょうからね』

「分かるんもんなのか?」

『はい。この世界の住人は聖霊の力が分かるようですよ。大なり小なり、個人差があるようですけど。怖いとか、美しいとか、そんな感覚的なものとして聖霊を感じているようです』


 確かに感度が敏感な者がいれば、反面として鈍感な者もいるというのは世の常。話としては分かる。


『特に聖霊の力に過敏な者は、神官職をしているようですね。そして、マスターの刀も、神官が村の総意として祠に納めた供物になります』

「供物だって? それを俺は勝手に使ってしまったのか。良くないだろう」

『いえ、マスターは供物によって千年前から召喚されたとも言えます。ですので、マスターが使うべきものになります」

「物は言いようだな」


 確かにルルナの策戦に従えば刀を使っていることの方がメリットが大きい。アイダは供物とされた刀をよくよく見る。刀は、打刀で波紋は直刃になっている業物。ふむ、すると村には鍛冶屋がいるのか? それとも村に訪れた商人から購入したものなのか? いずれにしても、それなりの技術もしくは富を蓄えた村ということになる。だとするなら、周辺地域の詳細な知識があるのは確実だろう。


「そうだな、やはりルルナの提案に乗ろうと思う。その方が今後の立ち回りを有利に進められそうだ」

『はい、畏まりました。マスターのためなら何でもしますので、どうぞ何なりと申し付けくださいませ』


 アイダは腰に差した刀に手を置く。よし、村で働こう。小銭が溜まったら、諸国を刀技修行で行脚してもいいかもしれない。せっかく二度目の生を受けたのだから、自分の夢を叶えていくのも悪いことじゃないはずだ。武術、そして刀技を磨いていこうと思う。まあ、どこまでいけるかは分からないけどな。


 ぼんっ


 爆発音が響いた。村の方角から再び閃光きらめき、遅れて黒煙が立ち昇る。


ご一読いただきまして、ありがとうございます。

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