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聖霊と制御式

5/30まで、平日(土日祝は休み)に投稿していきます。

なお、4/18までは、1日3回投稿します。


「呼吸が苦しくない? ・・・ルルナ、もちろん俺の心臓病は現在進行中なんだよな?」

『いいえ。身体的呪いは、全て解呪してあります』

「解呪? いや、呪いの話をしているんじゃなくて、俺の病気のことなんだが・・・」

「解呪で間違っていません。この世界では、病気の一切は呪いに変換されています。ですので、病気は手術ではなく解呪によって治療されるのです」


 いやいや、そんなわけないだろう、と口元まで出かけたが思いとどまった。


「お、おう。そうなのか。えっと、まあ、心臓の病気が治ったのはありがたい話だ」


 アイダは頭を掻く。「どうにも千年後の世界は、天幻によって不思議世界になってしまったわけ・・・か」なかなか受け入れがたいことだけれども、それがこの世界の常識ならば頷くほかない。「郷に入っては郷に従えっていうからなあ」再び空を見上げて、息を吐く。よし、気を引き締めて行こう。


『マスター、待って下さい。そのゴブリンから生命結晶石を採って下さい』

「結晶石?」

『はい、ゴブリンの頸椎のところに生命結晶石があるはずです。その結晶石がこれからの私たちにとって必要なのです!』


 ふむ、生物に結晶石か。予想だにしなかったことを言われて、少し冷静になった。そして、既に返り血を浴びて血みどろになった自分に改めて気付いて「感染症とかって大丈夫なのだろうか」と不安になる。しかし、『大丈夫ですよ。抵抗力があれば感染症という呪いには掛かりません。マスターには私がいるのです。ゴブリンの呪いなど受け付けません。それよりも、今は生き延びるために必要なことをなすべきだと思うのです!』ルルナは、普段は大人しいのに言葉に強引さを含ませて言ってくる。それだけ結晶石は大事ってことか。俺はこの世界について何も分からないわけで、門外漢は先達には従うほかはない。


「分かったよ。ただ生命結晶石を取り出すのと併せて、ゴブリンの解析をして欲しいんだ。急所や神経とかの場所が分かれば今後の戦いも楽になるだろうからな」


 アイダはルルナに命ずると、胴体と申し訳程度に繋がっているゴブリンの頭をがしっと掴んだ。いったん心を落ち着かせてから頸椎部分に手を突っ込む。あまり気色の良いものではないが、生きるためには必要なのだと胸中で叫びながら、ようやく目当てのものを探り出した。ちょうど五百円玉の大きさの球体。色は琥珀色。


「これで良いんだよな?」


 返事はなく、どうしたのかと緊張が走った。だが、アイダが目にしたのは蒼く浮かぶ一つの綿毛だった。ふわふわとゴブリンの体の上を旋回している。もしかして、


「ルルナなのか?」

『はい、マスター。ただいまゴブリンの解析中です。あっ、驚かせてしまったでしょうか。これは外部接触体です。短時間しか活動できませんが・・・あっ、ただいま解析完了しました。結果をマスターと同期します』


 ふわふわと浮いていた蒼綿毛も溶けるように消えた。同時に、アイダの脳裏にゴブリンの身体構造が知識となって記憶される。人体構造と基本は同じだ。ただ消化器官に聖霊魔法が稼働している部分があり、かなりの悪食の性質がある。


「ありがとよ。これでゴブリンを上手く仕留められるはずだ」

『お役に立てて何よりです。それとマスターが持ってる生命結晶石を手で砕いてみて下さい。そうすることで魔力の補充が出来ます。私の枯渇した魔力も満たされて、攻撃魔法も使用できるようになります』

「へえ。こんな球で魔力を回復させる仕組みなのか。じゃあ、もしかして俺も魔力補充したら魔法出来ちゃうってある?」

『そうですね、少し難しいかもしれません。魔法を使うには制御式の構築と演算しなければなりませんので』


 ルルナは言いながら、アイダの眼前に制御式を構築させてみた。魔法陣のような形の聖霊魔法の制御式。その制御式の中には緻密な数式と幾何学的な模様の組み合わせが見て取れた。これをリアルタイムで暗算して聖霊魔法を現実世界に発現させるのか。アイダは唸った。


「これを演算しろなんて、俺の脳味噌が火を吹いちまう」


 ルルナは聖霊だといっても、元々はAIだからな。演算処理はお手のものなんだろう。魔法はルルナに任せることにする。ただ魔法が使えないことに少し後ろ髪を引かれるのは確かだが、適材適所というやつだ。俺は刀技に専念すればいい。そう心に決めて、生命結晶石を握る拳に力を入れた。すると結晶石は薄氷を割るように簡単に砕けていく。

 きらめく蒼と黄色の光が内部から溢れて、渦を巻くようにアイダの体に吸収されていくのだった。



▢◆ルルナのメモ帳◆▢◇

聖霊魔法を使うには制御式を設計して、それを演算する必要がある。そして発動には魔力カロリックをエネルギー源として使用する。

また、制御式には段階がある。

①標準平面制御式(標準聖霊魔法):効果範囲は術者周囲・単一。魔法化領域は、千年前の世界基準で最先端科学までが効果再現可能。

②高位平面制御式(高位聖霊魔法):任意の一定範囲内・複数。魔法化領域は、SFの世界までが効果再現可能。

③複合立体制御式Ⅰ~(複合聖霊魔法):(理論上の制御式があるらしい?)

◇▢◆メモ 閉じる◆▢◇


 ◇

ご一読いただきまして、ありがとうございます。

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