↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/90

目覚め

11/22 加筆修正しました。戦闘の主導権を強化。


5/30まで、平日(土日祝は休み)に投稿していきます。

なお、4/18までは、1日3回投稿します。

 風の冷たさが頬をくすぐる。

 土の匂いがする。それと生い茂る草の青臭さ。頭上から木々の葉のこすれる音が降り注いでいた。


「‥‥‥息が、苦しくない?」


 上半身を起こし、アイダは自分の胸に手を当てる。いつもなら鉛のように重いはずの心臓が、力強く、静かに脈打っていた。指先まで感覚が鋭敏だ。錆びついた機械が新品に戻ったかのような全能感。


 ふと、視界に入った自分の「手」に目が留まった。深夜のコンビニ業務で荒れ果てた、節くれだった四十路の手――のはずだった。だが、目の前にあるのは、厚みのある掌と、逞しい血管の浮いた腕。関節が油を差したように滑らかに動く。男として最も力が充実する、三十代半ばの手だった。


(若返って‥‥‥いる?)


 顎に触れる。無精髭の感触はなく、肌には疲労を知らない張りがあった。


 周囲を見渡す。そこには鬱蒼とした森が視界を埋め尽くす。だが、その中に見覚えのあるものがあった。あの神社の祠だ。ご神木は見当たらず、代わりに樹齢数百年はあろうかという巨木がそびえ立っている。


 そして祠の傍らに『それ』は立てかけられた。漆黒の鞘に収まった、一振りの刀。


「刀‥‥‥? なぜ、こんなところに」


 吸い寄せられたように手を伸ばす。指が柄に触れた瞬間、カチリと何かが嵌まるような感覚とともに、脳の奥底から声が響いた。


『マスター、おはようございます。―――千年ぶりのお目覚めですね、気分はいかがですか?』


 耳元ではなく、頭の内側で反響するような聞き慣れた凛とした声音。


「その声‥‥‥ルルナ? いや、待ってくれ、聞き捨てならない単語があったぞ。せん、ねん?」

『はい、千年です』

「‥‥‥」


 あまりに荒唐無稽な年月に、アイダは絶句した。だが、ルルナは構わずに続ける。


『千年前の「天幻」により、世界の法則が書き換えられました。最先端の文明は滅び、人類はゼロから文明を築き直しています。そしてAIであった私は―――土属性の「聖霊」と呼ばれる存在に転化しました』

「聖霊って‥‥‥お前、神様にでもなったのか」

『似て非なるものです。私はマスターを呼び戻すため、千年をかけてマスターの再構築を行いました。その刀は、この地の民が聖霊に捧げた供物。マスターを現世に繋ぎ止める「依り代」です』


 千年。聖霊。依り代。理解を超える言葉の羅列。だが不思議と、混乱よりも先に、腹の底に静かな納得が落ちてくる。この肉体の若返りが事態を受け入れさせているのかもしれない。


「‥‥‥そうか。なら、まずはこれだけは言わせてくれ。生き返らせてくれて、ありがとうな、ルルナ」

『っ‥‥‥! マスターの復活は世界にとって必要ですから』

「ん? 世界に必要?」

『いえ。なんでもありません』


 妙な引っかかりを覚えたが、問い詰める間はなかった。

 不意にルルナの声が響く。


『―――警告。地表振動を感知。敵性反応、接近します』


 ルルナの声が鋭さを増した。


『戦闘支援モード、起動。聖霊魔法アース・ソナーをマスターに接続。‥‥‥来ますっ』

ご一読いただきまして、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。