第192話 出店を出店
数日後、ようやく話し合いの日になった。
まだ集合時間までは時間があるのだが、既にアキナにベイラ、ユズが俺の家に来ていた。
俺の家がほぼ完成したのであちこち見て回りたいと、早めに来ていた。
今はリューナが案内しているはずだ。
一方で俺はというと……。
「覚悟は決めてきたとはいえ、やっぱり緊張してくるわねぇ。……念のためにもう一度確認するけれど、今日は私が参加して問題ないのよね?」
「事前に連絡しておいたから、そんなに心配しなくて大丈夫だって。他にも、追加で参加者が来るみたいだしな」
と、相手方に失礼があってはいけないという理由で早めに来た、メレスの相手をしていた。
ちなみにここは会議室で、三十分以上前なこともあってかまだ誰もいない状態だ。
◇
こうなったのはこの前の昼食後、俺がこの街でイベントを計画しているという話を出した時に、メレスが可能なら私も一枚噛みたい、と希望したのが理由だ。
俺としては意見を聞ける人が増えたほうがありがたいので、もちろん歓迎だったのだが、参加メンバーが王女様に魔皇全員とすごいことになっているんだよなぁ……。
「数日後に話し合いを予定しているんだけど、参加者には魔皇が全員とこの国の第二王女がいるんだよね……。もしそれでも大丈夫であれば、皆に追加で参加希望者がいると言っておくよ」
ちょっと前にレイから、追加で参加者を増やしたい、って連絡があったのだが、参加者を増やしたい場合は魔皇の誰かとクレアに伝える、ということになったんだよな。
皆なら、変な人を参加させることはないだろう、って信頼があったしな。
「魔皇全員に王女様まで!? ……そ、そんな場所で、発言ができるかしら。……いえ、けれど、一商売人としてはこんなチャンスは滅多になさそうなのよねぇ。……よし、決めた! 私も参加させてもらうわ! ハクト、連絡の手間をかけることになっちゃうけど、よろしくお願いするわ」
と、悩みつつもメレスは参加を表明した。
◇
メレスと会話、というか心配するメレスを俺が慰めていると、
「おっはよ~、ハクト! 今日はすごい意見をいっぱい出しちゃうから、覚悟しててね~」
「お、それなら、その調子で次の魔皇会議も頼むぜ! 次はオレも楽ができそうだぜ」
「え、え~と。ほ、ほら。その時にいい意見が思い浮かぶかわからないし~」
「それなら、私も司会としてサポートするとしようかな。せっかくハヤテがやる気を出していることだし、何か貴重な意見が聞けるかもしれないね」
「む、む~。……わかったよ~。次の会議ではいたずらを諦めるよ~」
なんて言いながらハヤテ、ホムラ、アオイの三人が部屋に入ってきた。
……ハヤテ、魔皇たちの会議でもお構いなしにいたずらをしてるんだな。
「あ、その人がハクトが言ってた参加者だね~。ボクはハヤテって言うんだ~。よろしくね~!」
「ハクトからは、錬金術やスパイスの調合を仕事としていると聞いたよ。人間界で錬金術がどのような感じなのか、後で聞かせてもらいたいかな。ああ、その前に。私の名前はアオイ。今日はよろしく頼むよ」
「んで、オレはホムラだ。オレとしては錬金術よりスパイスの方が興味があるぜ」
「あ、ええと。……私の名前はメレス。今日はハクトにお願いして参加させてもらったわ。……正直、偉い人たちが集まる会議で気が引けてるけれど、一商人として参加を見送るというのはできなかったわ。……それと実は、前にリューナに会ったのがきっかけで、魔族や魔界について気になっていたのよねぇ。だから、いい機会だとも思ったのよ」
メレスはいざとなると肝が据わるタイプっぽいな。
それと、リューナと会ったことが切っ掛けで魔族や魔界に興味が出たのか。
もしかしたら、今までは遠くの話かと思っていたけど、リューナと出会って考えが変わった、とかだったりしてな。
その後は間をあまり置かず皆がやってきた。
メレスは、クレアや他の魔皇ともきちんと会話できていて、問題はなさそうだな。
それと、今回はメレス以外にも追加の参加者がいた。
レイが連れて来たシーラ、何故かハヤテではなくヒカリが連れて来たタニア、早く来てソフィアやメイと読書に励んでいたらしきノベルの三人だ。
というわけで今回の参加者は、魔族側が魔皇全員とシーラ、タニア、ノベル、リューナ。
人間界側で商売をしているのがアキナ、ディニエル、ベイラ、ユズ、そしてメレス。
教会関係者がソフィア、モニカ、王族関係者がクレアとメアリさんだな。
……うーむ、参加者が前回の倍になってしまったな。
今回は俺がイベントについて提案するから、この人数に対して俺が中心となって話を進めないといけないのか。
とはいえ、皆知らない仲ではないし、いい意味で空気を壊してくれそうな人も何人かいるし、大丈夫だと思っておこう。
それに、リューナが書記としてサポートしてくれるしな。
◇
まずは、初見のメンバーもいるということでそれぞれが簡単な自己紹介をした。
……俺以外が。
それが終わると、さっそく話し合いを始めることにした。
「今日は集まってくれてありがとう。まずは改めて、この話し合いのについて説明させてもらうよ。事の始まりは、俺の試練を達成するための条件として魔界と人間界が積極的に交流するための切っ掛けづくり、という内容が提示された事なんだ。それで……」
ほとんどのメンバーは俺の試練について知っているけど、まずはこの話し合いが始まった切っ掛けと目的を話すことにした。
「……って感じで、元々交流を進めてたいと思っていたアキナや魔皇たちが、この話し合いを提案してくれたんだ。それで今回も、前回と同じように話し合う予定だったんだけど、俺から提案したいことがあるんだ」
そして、一部の人には話したけど、と前置きしつつ、俺が考えているイベントについて説明を始めた。
今回は魔皇たちもいるし、色々なアイディアを募集したいから、細かい部分まで説明しないとな。
◇
俺の発言した内容は、ホワイトボード風の魔道具(最新型らしい)にリューナがまとめてくれた。
イベントのコンセプトはもちろん、魔族と人間族の交流。
交流ということなので、魔族側は認識を誤魔化す魔法などで自分が魔族だと偽らずに参加が可能だ。
……ただ、混乱を避けるために、リューナみたいに魔物から魔族になった人に関しては、魔物姿での参加は遠慮してもらわないとだな。
内容としては、魔族側、人間族側双方の名物を出すお店を出店として出店してくれる人を募ったり、教会前の広場では双方の交流を深めるべく、様々な企画をしようと考えている。
企画に関しては、ゴーレムファイトや魔界版の人生双六体験会など、今まで皆に考えてもらっていた内容や、今日の話し合いで色々なアイディアを出してもらいたいな。
それと、現状で思い当たる問題点と、一応の解決方法について考えていることを話した。
まずは言葉の違いだな。
可能であれば翻訳の魔道具をレンタル、それが難しければお店に双方の文字で注文方法が書かれた紙を貼ることで対処できないかな、と考えている。
それと、不特定多数の人が集まるため会場の警備も必要だと思う。
これに関しては、魔皇たちが信頼できる魔族や冒険者ギルドに依頼できないかな、と考えている。
ついでに、お願いした人たちも交替でイベントを楽しんでもらえればいいな、なんてことも思っている。
もちろん、強制はしない方向でね。
それで、魔界側の参加者なのだが、理想を言えば誰でも参加可能としたいけど、流石にそれは色々と問題があるだろうということで、今回は招待制にするつもりだ。
とはいえ、色々な人に参加してもらいたい気持ちもあるため、知り合いの知り合いまでは招待も可能、としたい。
まあ、これに関しては魔皇たちと相談して決めた方がいいだろうな。




