第187話 ええ絵
ちょっとしたトラブル(?)があったものの、その後も色んなお肉をおいしくいただいた。
塩のみでもおいしかったが、せっかくもらったことだしと焼肉のたれでも味わってみた。
たれは、昆布のだしがきいたもの、大根おろしや玉ねぎが入ったものなど、何種類もアレンジがあり、どの種類のたれもお肉の味を引き立てるような味付けになっていて、流石は高級店って感じだった。
メイの作ったモツ煮も臭みが全くなかったし、リューナが用意してくれたご飯はこんなこともあろうかと、と高級な銘柄を土鍋で炊いてくれた。
出される料理がどれもこれもおいしくて、ついつい食べ過ぎてしまった。
下手な高級店よりも贅沢な食事をこんなに食べられて、すごい満足感だった。
ごちそうさまでした!
◇
食後、それにしても本当においしかったな、なんて余韻に浸っていると、
「……ハクト。……ヒレとロースは、他の皆とも食べたい」
とメイから希望された。
「そうだな。希少なお肉だし、他の皆にも味わってもらいたいな。……ハヤテが知ったら、いいなーいいなー、なんてしばらく言いそうだし」
「……そうかも」
「明日には調理場は完成しているはずですので、ハクトさんの家で集まりましょうか。こちらの場所でもある程度の人数は入りますが、すき焼き用の鍋を奥には少々狭くなってしまうと思いますので」
ソフィアの中では、すき焼きをやるのが決定事項なのね……。
しかも、俺の家でやることになってるし。
まあ、次回もメニューはソフィアたちに任せるつもりだし、いいんだけどさ。
なんて話をしていると、リンフォンがリーンと鳴った。
誰からだろう? と確認してみると、まさかの神様からだった。
間違えて入れちゃったからやっぱり返して、とかだったらどうしよう。
もしくは、実は人間族が食べると大変なことに、とか。
いや、さすがにそれはないはずだよな、なんて不安に思いつつ内容を確認すると、
『さっそく食べてくれたようだね。それと、今の話も聞かせてもらったよ。あまり大盤振る舞いするわけにはいかないけれど、僕としても天界産のお肉の味は他の人にも味わってもらいたいから、渡した箱に補充しておいたよ。時間が完全に停止してるから、入れておけば問題ないからね。ああ、それと、一か月くらいで補充されるようにしておくから、遠慮せずに皆で食べるといいさ』
と、何か問題があったということじゃないみたいだ。
それよりも、そんな簡単に希少なお肉をもらっていいんだろうか?
……まあ、神様からだし、ありがたく受け取って置こう。
それにしても定期的に補充されるとは、配置薬的な感じだな。何故か無料だけど。
……知らないうちに、新商品って感じで新しい部位のお肉が追加されてたりしてな。
とりあえず、お礼と味の感想を返信しておこう。
◇
あまり遅くならないよう、一時間ほどで雑談を終わりにし、それぞれが帰宅することにした。
次は俺の家でやる予定だけど、皆が中々帰らなそうな気がするな。
まあでも、次はレイも参加するかもだし、お酒を一緒に飲むというのもありか。
部屋でのんびりとそんなことを考えていると、またリンフォンが鳴った。
タイミング的にまた神様からなのかな?
……今お酒のことを考えていたけど、まさかお酒が補充されている、とかはないよな?
神酒を入れておいたよ、とか言って、ネクタル的なお酒が入っていたらどうしよう。
恐る恐る確認してみると、神様からではなくクレアからだったので安心した。
……まあ、ほんのちょっとだけ興味はあったけど。
けど、こんな時間に送ってくるなんてどうしたんだろう?
音声モードじゃないから、緊急の連絡、ってことはないと思うんだけど。
いや、考えていても仕方がないし、内容を確認してみるか。
『夜分遅くに申し訳ないのですわ。さきほど明後日の予定が空いたので、急いで連絡をさせてもらったのですわ! 明後日のハクトさんの予定が空いていれば、お城まで来ていただきたいのですわ。皆さんで集まる前に一度確認したいことがあるのですわ。お昼もお菓子もお土産もきっちり用意するのですわ!』
……お昼はともかく、最後の部分は必要なのだろうか?
まあそれは置いておいて、クレアにはイベントの開催をするために色々と確認したいと思っていたから丁度いい
タイミングだ。
クレアの予定次第では事前に確認できないかも、と思っていたけど、渡りに船って感じだ。
とりあえず、明後日で問題ないこと、俺も確認したいことがあることを返信しておこう。
……あ、リューナも確実に同行するだろうし、それも伝えておかないとな。
◇
というわけで、本日は以前案内された迎賓館のような場所に来ている。
なお、リューナが当然といった雰囲気でメイド服を着ていたが、触れると面倒なことになりそうだったので、あえて気にしないことにした。
……多分後でクレアが触れてくれるだろうし。
それにしても、このお城にも何度か来ているのに全然慣れる気がしないな。
道中も毎度丁寧な対応をされるので、こっちは恐縮するばかりだ。
リューナの方は、当然です、って雰囲気で俺の後ろをついて来ていたけど、メイド服を着ているからかそれがちょっと様になっていて、俺だけが浮いている気がしてしまうな。
これが魔皇の城だったらもっと気楽なのにな、なんて思ってしまったけど、そっちに慣れている方がおかしいよな、うん。
とまあ、そんなことを考えているとメアリさんを伴ってクレアが入室してきた。
そしてクレアは俺の対面に座り、メアリさんは斜め後ろに控えた。
「ハクトさん、それにリューナさん、おはようございます、ですわ! 急な連絡にもかかわらず、来ていただけて感謝なのですわ!」
一日空いているし、そこまで急ではないよな?
……なんて一瞬考えてしまったけど、それは普通ではないよな、うん。
とりあえず全員の挨拶を済ませ、まずはお互いの用事を確認することにした、のだけど……。
「俺の方は、今度皆で集まる時に提案したいことがあって、その事前確認をクレアにしたいんだ。場合によっては時間がかかるかもだし、先にクレアの予定を済ませてもらった方がいいかな?」
俺がそう言うと、クレアは悩む素振りを見せ、
「そうですわね……。私の方も後で、と考えていたのですわ。けれど、疑問は早めに解消した方がすっきりしそうなのですわ。ということでメアリ。例の物を持ってきて欲しいのですわ!」
それを聞いたメアリさんは一度退室し、少しして額縁を持ってきた。
「ご苦労、なのですわ。ではメアリ。その絵をハクトさんたちにお見せするのですわ! ……ふふっ。一度はこんなことをやってみたかったのですわ」
クレアが偉そうな人になってメアリさんに指示していた。
……いや、偉そう、ではなくて実際に偉いんだけどさ。
それより、メアリさんが持っている絵を確認……、って、え?
「ええと……。これって、子供が描いた絵、ってことでいいのか? いや、もしかして芸術家が描いた絵なのかもしれないけど、すまんが俺にはそういった教養がなくて……」
メアリさんが持っている絵は、俺から見ると幼稚園児が家族の絵、って感じで描いたようなイラストに見えた。
……仮にこれが芸術家の人が描いたとして、何故俺にこれを見せたのだろうか?
「そんな絵ではなかったはずなのですわ!?」
クレアとしても想定外だったのか、身を乗り出してメアリさんの持つ絵を確認した。
すると、
「こ、この絵じゃないのですわ! これは私が子供の頃に描いた、家族の絵なのですわ!? メアリ、すぐに交換してくるのですわ!」
と、顔を赤くしながらメアリさんに指示していた。
……メアリさん、隙あらばこういうことをするなぁ。
まあ、見てる分にはコントみたいで楽しいんだけどさ。
というか、誰もリューナの格好に触れてくれなかったな……。




