201_手っ取り早そう
「美澪の髪の毛があれば、陰陽術でも居場所を探せたりしないの?」
「確かに、陰陽術でも髪の毛を媒介にして本人の居場所を探す術というのはあります。私はまだ覚えていないですけど…。だけど、さっきは私も気が動転してた上に魔法陣に気を取られちゃってて、美澪とか滝井さんの髪の毛や爪を使って直接探すといった方法まで頭がまわりませんでした。なんだか全く役立たずですみません。」
「それは仕方ないよ…。風音さんだって魔法陣に吸い込まれそうになった直後なんだから。あんな目にあって冷静でいられる人なんていないよ。」
その後、店内の他の場所にも魔法陣らしき物が仕掛けられていないかを確認したところ、トイレの中にもどうやら同じものが仕掛けられているようだった。
「こんばんは~」
「あっ、祟さん、お待ちしてました!」
「あのあと、必要な物をちょっと買い足したりしてたら、思ったよりも遅くなっちゃいました。すみません。」
「いえ、とにかく急がなきゃと思っていたので、すぐに対応してもらえて本当に助かります。それでなんですが、昨日滝井さんのお店に黒川って人が久しぶりにお客さんとして来たらしいんです。滝井さんは普通に接客してマッサージの施術をしたそうなんですけど、その時の黒川の様子が少しおかしかったみたいなんです。店内で何かをしていたっぽいんですよね。それで俺が相談を受けて今日ここに来たんですけど、滝井さんがいなくて様子もおかしいので店内を見て回っていたら、突然魔法陣が起動して美澪が魔法陣に吸い込まれちゃったんです。同時にここにいる風音さんも吸い込まれそうになったんですけど、風音さんは身に着けていた身代わりの形代のおかげで無事でした。その時に、美澪が転移させられちゃった待合室の中の魔法陣は咄嗟に俺が破壊しちゃいました。そのあと、店内を探してみた感じだと、こことトイレの中に同じようなのが仕掛けられてそうです。」
「そうですか。話を聞いた感じだと、転移の魔法陣で間違い無さそうですね。一応ちょっと見てみますね。」
そう言って、祟さんは琥太郎が説明した3か所をざっと見てまわっていた。
「うん、ちゃんと見てはいないのですが、やっぱり魔法陣から転移先を辿るというのは、出来るかもしれませんが効率が悪そうです。それよりも、先ほどお伝えしたように、髪の毛や爪などを使って、直接現在の居場所を特定していった方が手っ取り早そうですね。」
「わかりました。これがさっき自宅のベッドから回収してきた美澪の髪の毛です。」
「おぉ、これだけあれば十分です。今準備をしますのでちょっと待っててくださいね。」
祟さんはそう言って持っていたカバンからテーブルの上に、先日琥太郎も見せてもらった白紙の羊皮紙や、その他にも黒マジック、方位磁石、鉱石、鏡のようなもの、何かの液体が入った小瓶、ろうそく、お香等々、様々なアイテムを取り出した。そして、羊皮紙の真ん中にスラスラと五芒星を書き込んで、そのまま魔法陣と思われる図柄を完成させていく。4方には方角が記載されており、それを方位磁石が指し示す方向に合わせて置きなおした。先日琥太郎が新宿で祟さんと会った際には、普段の仕事では日本古来の術をベースにする事が多いと話してはいたが、こうした魔法陣の扱いにも精通している感じがする。
「祟さんって、いつもこんなにいろんなアイテムを持ち歩いてるんですか?」
「そうですね、お客さんとの打ち合わせの際は羊皮紙とか黒マジックとか、あとこの辺の小物類はカバンの中でスペースを取られるような物でもないので、入れてる事が多いですね。こういうのはどんな魔術でも使う事が結構多いですからね。今日はマジカルオイルは持っていなかったんですけど、ちょうど大久保にいたんで、琥太郎さんの電話を切った後に行きつけの魔術店で購入してきました。たまたま打ち合わせ先が大久保だったんで良かったです。」
そうこうしているうちに、祟さんの準備もできたようだ。




