195_行動を思い出して
突然知らない妖から崇拝されてしまった琥太郎も言葉につまる。
「いや、そんな…、召喚って…。だけど、流伽の料理っていつも美味しいと思ってたから、こうしてたくさんの人っていうか妖の皆さんにそれが伝わって、更に流伽がみんなから慕われてるのも判って、そういうのはなんだか俺も嬉しいです。」
その後、綾乃さんの執成し(とりなし)もあり、ちょっと落ち着いた妖達と一緒に飲んでいると、すぐにまた2人組の妖のお客さんがやってきた。更にその後も立て続けにお客さんが入ってくる。既に席は満席になっているのだが、座れないお客さんは壁にある梁をテーブル代わりにして立ち飲みだ。そして、来るお客さん来るお客さんが皆、入店時にママの綾乃さんだけでなく流伽に嬉しそうに挨拶している。なんだか本当に流伽が人気者になっているようだ。流伽もお客さんから声をかけられると、キッチンで笑顔を見せながら楽しそうに言葉を返している。
「綾乃さん、なんだかだいぶ混んできたんで、俺達はこの辺で失礼しますね。」
「あら琥太郎君、そんなの気にしなくても大丈夫よ。」
「いや、だけどもう結構たくさんいただきましたし大丈夫です。流伽の頑張ってる姿も見れたし、凄い人気者になってるのも知れて、今日はなんだか俺も嬉しくなっちゃいました。」
「流伽が料理の天才というのは判ってた。この人気はさすが流伽。」
出てくる料理を黙々と食べていた美澪も、流伽のこの人気には流石に驚いていたようだ。
「流伽ちゃん、琥太郎君と美澪がもう帰っちゃうって。」
「琥太郎、美澪、あんまり相手出来なくて本当ごめんね。」
「そんなの全然構わないって。流伽が頑張ってる姿を見れてよかったよ。だいぶ忙しそうだけど頑張ってね。」
「うん、ありがとう。ふふふっ、こうしてお店で琥太郎や美澪に会って、帰るのを見送るのってなんか不思議な感じ。気を付けて帰ってね。」
琥太郎はお会計を済ませると、少しだけ親しくなった周囲の妖達にも挨拶をして店を出た。帰り際には、何故か立ち上がってまたしても深々と琥太郎に頭を下げている妖達がいたが、それは気にしない事にした。
「流伽に凄い料理の才能があるのはわかってた。だけど、それだけじゃあんなに人気は出ないはず。流伽にはいろんな才能がある。」
「うん、俺も流伽のあの人気にはびっくりした。なんか凄く忙しそうだったけど、流伽は楽しそうに働いてたからそれも良かったなぁ。」
お店を出て今日の感想などを美澪と話ながら歩いていると、琥太郎の携帯電話が鳴った。
「あれっ、滝井さんからだ…。はい、焔です。」
「滝井です。琥太郎君、夜分にごめんなさい。」
「いえいえ、まだ全然大丈夫ですよ。今は美澪と一緒に流伽のバイト先でご飯を食べてきた帰りなんです。」
「あの~、実は今日、お店に黒川さんが来たんです。以前と同じように普通にお客さんとして来たので、私も今まで通り普通に接客してマッサージをしたんですけど、なんだかちょっと様子がおかしかったんです。なんていうか、マッサージ前に施術の準備をしている時とか、マッサージ後のお会計前に私がカルテに書き込みをしてる時とかに、妙にお店の中を歩き回って何かしているっぽかったんです。施術中もキョロキョロと施術室を見回したりしてましたし…。一応黒川さんが帰った後にひととおりお店の中を点検はしてみたんですけど、何かされた様子は見当たりませんでした。だけど、なんだかやっぱりすごく怪しかったんで気になっちゃって、それで琥太郎さんに相談しようと思って電話しちゃいました。」
「えっ、それは気になりますね…、俺達まだ新宿にいるんで、今からお店に行きましょうか。」
「あっ、ごめんなさい。実は今日はもう家に帰ってきちゃったんです。家に帰ってきてから、今日の黒川さんの行動を思い出して、それでなんだか凄く気になってきちゃって…」
「わかりました。じゃあ、明日はどうでしょう。そんなに怪しい感じだったのなら、俺に何が出来るかはわかりませんけど、やっぱり一応見ておいた方が良いと思うんですよね。」
「ありがとうございます。琥太郎君がそう言ってくれるなら、本当にお願いしたいです。」
「明日、仕事が終わったらお店に伺いますね。出来れば風音さんにも来てもらいたいけど風音さんの予定がわからないから…、明日風音さんにも声をかけてみて、大丈夫そうなら一緒に伺いますね。」




