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194_尊崇すべき

「いいえ。俺って、子供の頃からこうして妖とか霊なんかが見えてたんです。だけどうちの両親がそういうのを心配して、俺が子供の頃に知り合いの神主さん達に頼んで、俺のこういった能力を封印しちゃったんですよね。その封印がかなり強力だったみたいで、周囲の妖さん達に迷惑がかかっちゃってたんです。まあ俺は能力を封印されてる間は妖も見えなくなってたから、周囲にそんな影響が出てたっていうのも、こうして封印が解けてから知ったんですけどね。それでもなんかすみませんでした。」

「いやいや、俺達は別に特別迷惑なんて被ってねぇからいいんだよ。それよりも、ちょっとした有名人と知り合えたみてぇで嬉しいよ。わははは…」


 百ちゃんさん、白ちゃんさん(こういう場合は百さん、白さんになるのだろうか…)と話しながら飲んでいると、キッチンで料理をしていた流伽が、出来た料理を持ってきてくれた。


「琥太郎も美澪も相手出来なくてごめんね。お客さんでいっぱいになる前にお料理を作っちゃっておかないと間に合わないのよね。それで、こっちが長芋のステーキで、これは鯖と大根の煮つけ。百さんと白さんもどうですか。」

「おぉ流伽ちゃん、流伽ちゃんがこっちに来るの待ってたよ。料理も今日も美味しそうだね。俺は長芋をもらおうかな。」

「俺は流伽ちゃんの料理なら全部食べちゃうからね。両方お願い!。」


 百さんと白さんもさっそく流伽の料理を注文していた。食べてみるとどちらも流石に美味い。いつも流伽の手料理を食べているとはいえ、こうしてお店に来て出してもらうと、なんだか普段とはちょっと違う感じがして、それも新鮮だ。


「流伽の料理はやっぱり美味しい。」

「うん、長芋って、焼いてもこんなに香ばしくて美味しくなるんだね。」

「流伽ちゃんって可愛い上に、こんなにお料理上手だから最近は流伽ちゃん目当てのお客さんばっかりなのよ。って、そんな事言ってたら早速またお客さんみたいね。」


 階段を上ってくる足音が聞こえたかと思うと、2人組の妖がやってきた。


「流伽ちゃん、今日も来たよ~。」

「おぉ~、なんかめちゃめちゃ美味しそうな匂いがするよ流伽ちゃん。」

「なんだいあんた達、流伽ちゃんだけで私には挨拶も無しになっちゃったのかい?」

「いやいや、そんな事ないっすよ。ママもこんばんはっす。」

「ママも今日も美人っす。」

「はぁ…、全く…、最近は誰も彼もみんな流伽ちゃんに夢中になっちゃって、私への対応がなんだかおざなりなのよねぇ。だけどまあ、流伽ちゃんは本当に可愛いからいいんだけどね。」


 綾乃さんはそう言いながら、キッチンで料理をしている流伽を、その大きな胸に押し付けるように後ろからギュッと抱きしめて頭をナデナデしている。


「あわわっ、ママ、ちょっと今は危ないです!」

「ふふふっ、それで2人とも、ビールでいいのよね。」


 しばらく流伽の頭を撫でまわした綾乃さんが流伽から離れて生ビールをジョッキに注いでいると、今やってきた2人組の妖と琥太郎の目があった。


「おっ、今日はなんだか変わったお客さんもいるね。」

「変わったお客さんって、あんたねぇ…。そこの琥太郎君の紹介で流伽ちゃんはうちに来たんだよ。」

「「えぇっ?!!!」」


 流伽が琥太郎の紹介でここに来た事を知った2人の妖は驚いて叫び声をあげると同時に、今座ったばかりの椅子からすかさず立ち上がった。


「なっ、なんと?! この打垂髪に流伽ちゃんを召喚してくださったお方とは。それは、天にまします我らの父が降臨されていらっしゃるという事ですか。あなた様はまさしく、我らが尊崇すべき神です。」

「おぉっ、これは我らが神様仏様、此度は流伽ちゃんを召喚してくださり、本当に本当にありがとうございました。」


 立ち上がった妖達は突然深々と琥太郎に頭を下げながら、なんだかおかしな事を言っている。

 このやり取りをキッチンで聞いていた流伽は、なんだか困惑した表情だ。


「あんたら何突然バカな事言いだしてんだい。琥太郎君も流伽ちゃんも困っちゃってるじゃない。そもそも神様仏様ってねぇ、それを言うなら仏様は琥太郎君じゃなくて流伽ちゃんの方だろう。」


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