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193_とびっこ(トビウオの卵)

「琥太郎君達もご飯まだなんでしょ。」

「はい。夕飯もここでいただこうと思って来ました。」

「琥太郎君は苦手な食べ物は特に無かったわよね。美澪は苦手な食べ物って何かある?」

「貝。」


 美澪の育った十兵衛爺ちゃんの道場がある睡蓮堰近くには、小糸川という川が流れている。この小糸川の上流域には、マシジミと呼ばれる2枚貝のシジミが生息している。通常スーパーなどに出回っているシジミはヤマトシジミと呼ばれる種類で、これは河口付近などの塩分を含んだ汽水域に生息するシジミだ。それに対して、マシジミは塩分を含まない淡水に生息するシジミで、ヤマトシジミ同様食用にもなる。味もヤマトシジミと似たような味だ。時折十兵衛爺ちゃんがこのマシジミをもらってきて味噌汁などに入れていたようなのだが、時々入っている砂の触感が嫌いで、その結果、大き目のホタテの貝柱などを除いて美澪は二枚貝が嫌いになってしまったらしい。


「今日は貝は無いから大丈夫ね。とりあえず二人ともこれでも食べていて。」


 綾乃さんが取り合えず頼んだビールと一緒に、プチプチのとびっこと枝豆が入ったポテトサラダを出してくれた。


「あっ、美味しいです。このプチプチの触感がいいですね。」

「それもさっき流伽ちゃんが作ってくれたのよ。」

「へぇ~、さすが流伽だ。」



 流伽はキッチンで何か他の料理を作っているようだ。それでも綾乃さんと琥太郎達の話は聞こえているので、黙って料理をしながらニコニコしている。すると、隣に座って飲んでいた白うかりの妖がまた話しかけてきた。


「流伽ちゃんの料理は本当最高だからなぁ。あっ、ママの料理だって美味しいよ。」

「何とってつけたように言ってんのよ。」

「いや、本当だってば。ははは…。だけど人間の兄ちゃんは流伽ちゃんの知り合いなのか?」

「知り合いも何も、流伽ちゃんは琥太郎君の紹介でここに来てくれたのよ。」

「えぇっ、流伽ちゃんとそんなに親しいって事か。おじさんなんだかジェラシー感じちゃうなぁ。ところで、霊の美澪ちゃんも珍しいけど、普通の人間の兄ちゃんがこんな所に来るのも珍しいな。兄ちゃんは俺達みたいのに囲まれてても平気なのかい?」

「そうですね。なんか子供の頃からこの美澪達と一緒に遊んだりして育ったから、俺の場合は妖とか霊とか、そういうのはあんまり気になんないんですよね。」

「うふふ…、普通の人間だって。ちょっと百ちゃん(ももちゃん)、こんな妖の飲み屋にお客さんとして来てて、霊の流伽ちゃんを紹介してくれるような人が普通だなんて本気で言ってるの? まあ百ちゃんや白ちゃん(しろちゃん)が変な事するとは思わないけどさ、一応言っとくと、琥太郎君はこんな感じでとっても優しい子だけど、人間風情が~なんて考えておかしな事なんかしちゃ絶対ダメな相手だからね。」


 どうやら、隣に座っている百目が百ちゃん(ももちゃん)で、白うかりの方が白ちゃん(しろちゃん)と呼ばれているようだ。


「もしかして、前にムギとミックが言ってた凄え人間の兄ちゃんって、もしかしてあんちゃんの事か。」

「そういやなんか雰囲気が変わってて気づかなかったけど、あんちゃんって前は、なんかえげつねぇ結界を纏ってたあのあんちゃんか。」

「あっ、はい。おそらくそれで間違いないと思います。なんか以前は俺の結界のせいで妖の皆さんにはだいぶご迷惑をかけちゃってたみたいですみません。」

「いやぁ、俺はたまたま一回だけ、そこの通りで見かけただけだからよ。いいんだ、いいんだ。だけどそん時はえらいえげつねえ結界を纏ってんなぁなんて思ったんだけどよ、なんかさっぱりそんなの無くなっちまったな。あんときゃ崇高なお札でも持ってたのかい?」


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