リリララの決意
1.スピンドック平原
女の園に踏み込むまでもなく、リリララはスピンドック平原に突っ立っていた。
冷たい風が平原の草花を寝かしつけ、リリララの長い髪をなびかせる。
いつも一緒に居るモッニカ女史の姿がない。
俺は少し緊張した。
普段はぼーっとしているリリララの表情に何かしらの決意らしきものが宿っていた。
うっかりおっぱい触っても許してくれそうな天然キャラだから忘れがちだが、この女もまた怪物だ。国内サーバーで最高峰の魔法アタッカーであり、何のヒントもなく魔法を使った最初のプレイヤーでもある。
杖を持った手は白く、血色というものを感じられない。よく出来た人形だと言われたなら信じてしまうだろう。それは見た目だけの話ではなく、人間であれば自然と身につく癖らしい癖をまったく持たない。話している時に髪をいじったり、身体を揺らしたりすることがない。逸脱した人間性……。
たび重なるセクハラを見透かされたような気がして、俺の声が上擦る。
り、リリララ〜?
リリララさんは俺に気が付いていたようで、草の上を歩いてこちらにやって来る。
「コタタマくん。サトゥくんは?」
リリララは鼻が利く。俺がここに来る直前にサトゥ氏と会っていたことは分かっているのだろう。
……何のことか分からんが、賭けに乗ってやるって言ってたぞ。
「そう。コタタマくん、モニカたちには黙っててね。戦争になったら、みんな死んじゃうから」
……なんで、今日なんだ? サトゥ氏は何をやろうとしてる?
リリララは何かを言おうとして、やめた。
きっと俺がリリララのために何かしてやろうとしても、それは彼女の邪魔にしかならないのだろう。
リリララが俺に抱きつく。
「……コタタマくん。お願い。今すぐロリコンになって。そうすれば……」
どういうこと? 俺がロリコンじゃないのが悪いみたいな話なの?
そう言いたいのをぐっと堪えて、俺は空を見上げた。この場で彼女を抱きしめたかったが、そうすることで俺がロリコンじゃないと証明してしまうのが怖かった。
だが、リリララのおっきなおっぱいが押しつけられていて、鼻が利く彼女には俺が劣情を催していることなど筒抜けだろう。
結局は同じこと。
俺はリリララを抱きしめようとして、ガインと不可視の障壁に弾かれた。特別な所有権……。お触りすら禁止なのか。俺は絶望した。脈アリとしか思えないのに、手を伸ばせばすぐそこにおっぱいがあるのに、おっぱいに興奮した俺は、彼女の肩に手を置いて慰めてやることすらできない。
涙が出てきた。悔しくて仕方ない。彼女の力になってやりたかった。報酬なんて別に要らない。それでも俺は心のどこかで期待していて、無意識のうちにベッドの上で俺を手招きして「ちょっとだけだよ……?」とか言ってるリリララを妄想している。一度でも意識してしまうと、具体的なシチュエーションが次から次へと思い浮かび、心の中の悪い俺がそこはこうしたほうがいいんじゃないと訳知り顔で脚本に手を加えてくるのだ。
俺は涙を拭うこともせずに問い掛けた。
リリララ。俺はどうしたらいい……。教えてくれ。
リリララはパッと俺から離れて、俺の視線から逃れるように身をよじった。白い頬を薄く染めて、ぼそっと言う。
「……えっち」
リリララが俺を避けて歩き去っていく。
俺はとっさに振り向いて腕を伸ばすが、リリララの長い髪を掴むことに躊躇いを覚えて硬直する。艶やかな黒い髪が、するりと俺の手をすり抜けた。リリララの尻が遠ざかっていく。
……俺は弱い。ギルドの力を手にして、何かが変わったと思っていた。実際に金属片の扱いは以前よりもうまくなったし、エンドフレームはひと回り大きくなって強化された。
でも、本質的には何も変わっちゃいない。人間としてまるで成長していない。
心に思い浮かぶのは、たった一つの真実だ。
リリララのおっぱいは、おっきかった。
2.パピコ砂漠
別に付いてくるなとは言われなかったので、リリララと一緒にパピコ砂漠にやって来た。
リリララいいよなぁ。俺は正直女なら誰でもいいんだけど、付加価値があるに越したことはない。国内最高峰の魔法アタッカーを俺の女だと見せびらかして連れ歩けたら気持ちいいんだろうなぁ。何よりスタイル抜群だしよ。このけしからんおっぱいとねんごろになりたいものである。
道中、俺は俺がリリララに好意的であり、女性に気遣いのできる好男子であることを積極的にアピールした。
なお、リリララはアイドルの卵であり、外で男と一緒に居るのを見られると今後の活動に響くため、今の俺はバンシーモードだ。
話の続きをする。
でな? ムイムイの人らってクラフト技能持ってないのよ。俺さァ、ぴーんと来ちゃったんだよなァ。スキル解除みたいなのはできるってベムやんは言ってたけど、そんなの絶対普段は使わないじゃん? まぁ小銭を稼いでも仕方ねーわな。デカい取り引きともなるとさすがに警戒されるかもしれねー。なら、お互いスキルを警戒しててスキルを使おうとしたら撃つぞ!って状況に持ってけば良くね?って思ったんだよね。まぁ結果から言うとそれが良くなかった。気付いたらマフィアの用心棒みたいになっててよぅ。取り引き現場でアタッシュケース持ってるヤツ見て、あれっ、これルートミスったな?って気が付いてさ〜。お嬢さん……ああ、ボスの娘さんな? その人には色々と良くして貰ってたから抜けるに抜けらんねーって状況で。
おっと。出たな、サトゥ氏……。
リリララが俺の袖をくいくいと引っ張ってせがんでくる。
「続きは? 早く」
俺も話したいのは山々だが、どうやら悠長にフリートークしてる場合じゃなさそうだぜ……。
岩に腰掛けているサトゥ氏が、首筋に注射器の針をブッ刺して内容物を注入した。ハイポーション……。
ふるふると全身を震わせたサトゥ氏の手足が弛緩し、口元からヨダレが垂れる。次の瞬間には肌が張り、びくびくと血管が浮き出た。血走った目でギンとリリララを見据えたサトゥ氏がベロリと舌舐めずりをしてゆっくりと腰の剣を引き抜いていく。言った。
「ヤろうぜ」
国内サーバーで一位二位を争う大型クラン、【敗残兵】と【目抜き梟】を率いるマスター二人の決闘が幕を開ける……。
これは、とあるVRMMOの物語
あー、うん。似合う似合う。そんな服持ってたんだ。可愛いじゃーん。……え? 私の服を買いに行くの? ごはんは? まぁ別にいいけどぉ……。
GunS Guilds Online




