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ギスギスオンライン  作者: ココナッツ野山
444/990

人力DPSチェッカー

 1.マールマール鉱山


 カメラを引き連れてモグラさんたちの巣穴を四人でトコトコと歩いている。

 先頭を行くリチェット隊長とサトゥ隊員が元気だ。手足を大きく振って歩きながら、新規ユーザー向けにマールマール鉱山の内部構造や眷属のスペックを紹介している。……こいつらを泣かしたい。俺の負の情念が高まっていく。

 俺の後ろを歩いているセミくんは索敵に集中しているようだ。一言も喋らないしテンションが零下に突入している。カメラに映っていない時のセミくんはこんな感じだ。マールマール発と思しき鳴動が地を伝わってくるたびに堪え切れないとばかりに口元が吊り上がるのが怖い。カメラに映してはいけない男である。

 そしてカメラマンの後ろをぞろぞろと着いてくるマッド廃人がとてもウザい。手持ち無沙汰のようで、野鳥カウンターの具合を確かめるようにカチ…カチ…と鳴らすのはやめて欲しい。あと目が合うと小声で「0231体さん、がんばって……!」とか応援するのもやめて欲しい。なんか俺がひどい目に遭うの確定してるみたいな……。

 つーかよぉ。

 俺はボヤき声を上げた。

 カメラが俺に向く。

 モォ〜……

 肩越しに振り返ったリチェット隊長とサトゥ隊員に、俺は続けて言う。

 あのさ、アレやんないの? アレ。


「アレって?」


 カエルくんがすっとぼけた。

 カメラがカエルくんに向く。

 ゲコッ、ゲコッ、ゲコッ……

 俺はやりにくいと感じながら話を続ける。

 アレだよ、アレ。毎回やってるだろ。紙芝居の。


「探検パート?」


 そう、それ。

 モォ〜……

 ……もしかしてコレ生放送なの?

 俺の疑問をリチェット隊長は無視した。ニマニマと口元をゆるめて何やら嬉しそうである。


「ふ〜ん」


 あんだよ。


「牛さんは私たちと一緒に探検したいんだ?」


 面倒臭い絡み方をしてきたぞ……。

 俺に妙なキャラ付けをしてきたリチェット隊長が、ずっと黙っているセミくんに目を向ける。生存確認かもしれない。


「セミ、聞いた? だってさ」


 カメラがセミくんに向く。

 ミーンミンミンミン……

 セミくんがカメラを意識して昇竜拳(小)を繰り出した。すたっと着地して言う。


「こいつはタンクとヒーラーに甘いからな。隊長、あんたを高く買ってるんだろう」


 シャワシャワシャワシャワ……

 おい。

 モォ〜……

 俺は我慢できずに言った。

 さっきから俺らが話すたびに環境音入れるのやめろ。お前のターンじゃねえからって言われてるみたいで、とても喋りにくいです。

 てか、このセミの人、自分が置かれた状況に疑問とか覚えねえの?

 待ってましたとばかりにリチェット隊長がセミくんに駆け寄ってガッと着ぐるみに腕を回した。


「セミは優秀な隊員だからなっ。プロ意識が高いんだ!」


 ……ええ? 何だろう。リチェット隊長のセミくんに対する評価が高いぞ。

 見ろよ。当のセミくんはノーリアクションじゃねえか。今の場面、俺なら隊長の腰に腕を回して一緒に踊るくらいはやったぞ。俺のほうがセミくんよりやれるんだ。

 俺の中でめらめらと対抗心が燃え上がる。

 俺の視線に気が付いたセミくんが「ハッ……」と鼻で笑った。こ、この野郎……。

 俺の目にびきびきと毛細血管が走り、『!?』のフォントが浮かんだ。マガジンか! 俺は六人衆を怒鳴りつけた。俺で遊ぶな!

 状態3のスマホを持つネカマ六人衆は拡張現実を添付することができる。拡張現実というか、まぁゲームなのだが。とにかく色々と添付できる。

 見てるだけなら楽しそうなんだけど、状態3のスマホには意思が芽生えるというヤバい噂がある。意思かぁ。意思はちょっとなぁ。エロ動画のサンプルを視聴してたら好みのタイプを把握されてオートでブックマークされたりするんでしょ? それはちょっとな〜。余計なお世話を通り越して「あ、どうも」とか言っちゃうよ。あまりにも未知の感覚すぎて便利なのか便利じゃないのか全然分からない。想像も付かない。てか意思って。角の生え方も個人で違うらしいし。サイドホーンはともかく、バックホーンは不便そう……。

 おっといかん。俺が煩悶している横でリチェット隊長が恒例の紙芝居を始めた。

 尺の都合上、リチェット探検隊の探検パートは紙芝居で行われるのだ。

 俺は気を取り直して紙芝居の観衆に回った。カエルくんの横に座って俺たちの探検を眺める。

 オチは毎回一緒で、やたらと可愛らしくデフォルメされた探検隊が財宝を発見して大喜びで幕を閉じる。おお、俺とカエルくんとセミくんが見たこともないような満面の笑顔で飛び跳ねてるぜ。代わり映えのしねえ構図の紙芝居をリチェット隊長が締め括る。


「こうしてカエルくんと牛さんとセミは山ほどの宝物を見つけたのでした。めでたしめでたし」


 俺たちの探検が終わった。

 小さな子供に言い聞かせるように優しい顔をしていたリチェット隊長が急に感情のスイッチをオフにした。


「では、これより本日のハイライトの収録を行う。オマエらの未来は確定しており、敗北は許されない。分かるな?」


 分からない。何を言っているのかまるで分からない……。

 俺は弱々しくかぶりを振ったが、調教済みのカエルくんは「はーい!」と元気に返事をした。

 セミくんが「くくっ」と含み笑いを漏らす。


「盛り上がってきたな……」


 リチェット隊長が好戦的なセミくんに駆け寄ってバンバンと着ぐるみの肩らしき部位を叩く。


「その意気だっ、セミ! オマエには期待してるぞっ」


 リチェット隊長のセミに対する信頼が厚い。くそっ、こんなの贔屓だろ……。俺は強い危機感を覚えた。セミくんにだけは負けたくないという思い。哺乳類代表としてこのままではいけないという思いがあった。セミくんと楽しそうにお喋りしている隊長を横目に、さり気なくカメラのフレームからアウトして両生類代表を手招きする。

 ちょっと。カエルくん……。


「何かな牛さん」


 しっ。声が大きい。カメラ意識しなくていいから。

 ……あのさ。新入りの虫、ちょっと生意気じゃねえ? 俺らはこうしてテレビに出てる以上、ある種の責任があると思うんだよね。出る杭は打たれるってことをさ、子供たちに教えてやらねえと。メッセージをね。発信してやらないと。そういう義務感、大事だと思う……。

 マイク寄せんな! 俺はスタッフが寄せてきたマイクをばしっと払いのけた。今、カエルくんと内緒話してるでしょ? マイク寄せないで。そういう、カメラ回ってるとか関係ないから。俺らの問題だから。

 で、どうよ? カエルくん。俺はね、お前の味方だから。お前はもっと評価されていいと思ってる。隊長だって分かってくれるさ。今は珍しい虫を見つけて夢中になってるだけ。そいつが居なくなれば、いつも傍らに居てくれたのが誰だったか思い出してくれるんじゃないか……?

 ……もっとも、その誰かは俺ということになるがね。俺は口当たりの良い言葉を囁きながらギュンッと黒魔石を組み上げた。カエルくんの口元に持っていき、あ〜んと差し出す。黒魔石の運用にはどうしても本人の同意が必要なのだ。最低でも食べて貰わねばならない。

 あ〜んと口を開けたカエルくんの舌にちょこんと黒魔石を乗せてやる。よくできました〜。俺はぱちぱちと拍手した。ハイそのままごっくんして? ごっくんだよ〜。

 しかしカエルくんは黒魔石を吐き出して懐に仕舞った。こら! 牛さん怒るよ! ぽかぽかと着ぐるみの頭を叩くと、カエルくんは「やめろよ〜」と無邪気に笑った。こいつぅ〜。

 おっとバッチリ撮影されていた。

 カエルくんはニコッと笑ってカメラマンの六人衆に歩み寄った。

 カメラマンを籠絡しようとしているらしく、甘えるようにしなだれ掛かる。


「ねえ……。イッチ……? カメラ止めて……?」


 何か込み上げるものがあったようで、六人衆が「くっ……!」と目頭を押さえた。カエルくんがキョドる。


「ど、どしたの? え? 泣いてんの?」


 六人衆はスタッフが差し出したティッシュで洟をちーんした。


「いや……。なんか、気が合う友達ができて良かったなって。ぐすっ」

「カエルくん、いつも新メンバーにドン引きされるもんね……」

「新メンバーだって廃プレイヤーなのにね……。感情を捨てろって、カエルくん、たまに、トイレ行くって言うと、トイレ?みたいな顔するからぁ〜……」


 感極まった六人衆がわんわんと泣き声を上げる。俺も混ざった。六人衆の肩にガッと腕を回してわんわんと目から水滴を零す。クソのような廃人を小さな頃から見守ってきたイッチたちを思うと、水滴があふれて止まらなかった。

 やがてカメラのフレームからアウトしたところで、ようやく俺の水滴がピタリと止まった。さて、さっさとレベル上げに行くとしよう。DPSを測定するだの何だのと不吉な発言はしていたが、今月の俺はコタタマくん強化月間を進行中なのだ。多少の無茶には付き合おう。

 俺は円陣を組む野球部のようなノリでぐっと身を乗り出して二の腕を強調した。吠える。


「本日のハイライトぉ〜!」


 俺たちは一斉にぴょんと飛び跳ねて唱和した。


「リチェット探検隊!」



 2.本日のハイライト


 過去の住人と化した俺たちは確定した未来へと走る。

 確定した未来と言っておきながら財宝などドコを探しても転がっていないのは気に入らないが、尺が余るとリチェット隊長がドヤ顔で「まだ気付いていないのか?」とか言い出して財宝=仲間エンドに素早く舵を切るので俺たちが正史に辿り着くことは永遠にない。


 CM明けにリチェット隊長がキラキラとしたエフェクトを纏いながらカメラを意識した高い声で「本日のハイライト〜」とか言っている後ろで、スタッフが釣ってきたモグラさんの猛攻をカエルくんが死に物狂いでしのいでいる。

 マールマールの眷属は地上でも屈指のパワーファイターだ。まともに受ければ剣がへし折れる。カエルくんはヤバいくらい汗だくになってモグラさんの一撃をいなし、連撃を浴びせる。可愛らしいマスコットを装う余裕などない。モグラさんが仰け反るや雄叫びを上げてあらゆる角度から斬撃を叩き込んでいく。

 これにはリチェット隊長もにっこり。

 が、しかし喜びのアクションはない。

 リチェット隊長の挙動を慎重に観察していたマッド廃人どもがカチカチと野鳥カウンターを打ち鳴らす。

 モグラさんはカエルくんに首ったけだ。レイド級や上位個体の下知は例外として、眷属の行動はヘイトの増減で決まる。ギリギリと弓矢を引き絞ったセミくんが、カエルくんの連続攻撃が途切れる瞬間を狙ってモグラさんの片目を潰した。

 セミくん担当の測定班が旗を振ってリチェット隊長にアピールする。


「007体、部位破壊!」

「デッド!」

「ライッ!」

「デッド!」


 ライブの判定が混ざっているのは角度の問題だろう。まぶたで挟んで矢を止めたという実例がモンスターにはある。

 全身全霊のラッシュを叩き込んだカエルくんはガス欠だ。ぜぇぜぇと息を荒げ、剣を持つ手がだらりと垂れる。

 モグラさんが雄叫びを上げてカエルくんを雑に押しのけた。タゲがセミくんに移った。

 部位破壊の報告を上げた測定員が顔をしわくちゃにして全開の笑顔で強烈にアピールする。


「デッドぉー!」


 これにはリチェット隊長もにっこり。ぐッと握り拳を振り上げる。喜びアクションだ。喜びアクションが出たっ……!

 すかさず測定班がカチカチカチ!と野鳥カウンターを打ち鳴らす。やや判定がバラけた。本来、モグラは長い地中生活で目が退化した生き物だ。目を潰したところで大きな影響はないという判断が判定に影響したか?

 牛さん担当の測定班が祈るように野鳥カウンターを両手でぎゅっと包み持っている。


「0231体さん……」


 やることがなくて暇なのだろう。分かるよ。ゴメンな。でも、まだだ。まだ……。


 突進してきたモグラさんをセミくんが器用に捌いている。セミくんクラスの廃人になると、後衛だから近距離戦は避けるという甘えた考えを持たない。【敗残兵】十八番の空中殺法も当たり前のようにこなす。緩急でモグラさんに揺さぶりを掛けたセミくんが見てると吐き気を催す動きでモグラさんの側面を取り、これでもかと引き絞った矢を至近距離から浴びせていく。弓職の【スライドリード(速い)】は飛び道具にしか作用しない。それゆえに彼らの戦い方はいびつなものになっていく。

 ポーションを打ったカエルくんが、首筋の内出血も鮮やかに戦線復帰した。

 モグラさんは弱っている。カエルくんとセミくんの猛攻に大きく仰け反り、反撃すらままならない様子だ。

 びくりと一度痙攣したモグラさんに、俺は大きく目を見開いた。今ッ!

 ハッとしたモグラさんがこちらを見る。


 体力が著しく低下したモンスターはラストオーダーと呼ばれる最終命令に支配される。

 内容は種族によって異なる。何故ならそれはレイド級の下知であり、レイド級の性格によって違いがあるからだ。

 ヤツらは、種族人間に負けるような出来損ないに敗走と生還を許さない。

 ポポロンは眷属に相討ちを命じる。

 マールマールのラストオーダーは……。

 ヘイト固定だ。


 雄叫びを上げたモグラさんがカエルくんとセミくんを無視して俺へと一直線に向かってくる。

 死を恐れない狂戦士。死兵だ。

 こうなったモグラさんは、トップクラスの廃人ですら手に負えない。

 アビリティ発動時のカエルくんは骨ダンのアンデッドを圧倒したが、常設ダンジョンに出没するモンスターは、地上では生きていけない弱い生き物なのだ。

 種族人間を1確できるからといって、そんなことは何の自慢にもならない。

 何なら地球の飼い猫ですら二本足でのろのろと歩く種族人間を見て、まぁ2確かなくらいは考えているかもしれない。種族人間は、いつも前足でいじっている小さな板を部位破壊されると戦闘不能に陥るのだ。


 最終命令に支配されたモグラさんの肉体は残された全生命力を戦闘力に変換する。ダメージを無視した突進。後退はもちろん、仰け反ることもなくなる。

 そうした戦闘形態を、ゲーマーはこう呼ぶ。

 スーパーアーマーだ!


 例えるならば、刃牙の花山薫。技自慢のグラップラーが「根性?気合い?まやかしですよ」とか言って花山薫が待つ闘技場に向かう感じだ。

 猛速度でカッ飛んでくるモグラさんに、俺は両腕を広げてニコッと笑った。くるりと反転し……ダッと地を蹴って全力疾走する。

 おいおいおい。俺、死ぬわ。

 俺は重要なことに気が付いた。

 武器、持ってねえ。

 おいッ! 俺、ヤサから直行! 朝からずっと手ぶら!


 これにはリチェット隊長もにっこり。

 牛さん担当の測定班がハッとしたが、野鳥カウンターを打ち鳴らすことはできなかった……。

 俺はラストオーダーを掻っ攫ったけど、モグラさんにダメージは与えていなかったから……。


 モグラさんの全力タックル。


「ゲェーッ!?」


 ふわっと幽体離脱した俺を置き去りに吹っ飛んだ俺のボディに、ギャッと地を蹴ったモグラさんが一瞬で回り込んだ。俺の腹に前足を添えてグンと力を込める。運動力を相殺され、ふわっと浮き上がった俺の頭をガッと鷲掴みにした。

 頭を掴まれてぶらんと揺れる俺の亡骸を、モグラさんが片手で持ち上げ、捕らえた獲物を見せつけるように掲げる。

 圧巻の死体蹴りにセミくん以外のメンバーが絶叫を上げた。


「う、牛さーん!」


 モグラさんが前足にグッと力を込める。

 マールマール鉱山の片隅に、真っ赤な花が咲いた……。



 3.人力DPSチェッカー


 リチェット隊長いわく、種族人間の攻撃は大別すると二種類に区分される。

 リチェット隊長が気に入らない攻撃と、リチェット隊長に好印象な攻撃だ。

 さらに好印象な攻撃は三つに分かれる。

 リチェット隊長が納得する攻撃と、リチェット隊長が満足する攻撃。そしてリチェット隊長が大満足する攻撃だ。

 これら、計四種類の成果を元に各隊員のDPSを算出していくことになる。

 超主観的じゃんね。

 では野鳥カウンターをカチカチする連中は何をやるのかと言うと、リチェット隊長のご機嫌を伺う係である。

 各隊員は普段通り戦うため、リチェット隊長がいちいち今のは気に入らないだの満足しただのと言っていては追いつかない。

 そこでマッド廃人どもがリチェット隊長のご機嫌を表情や仕草から憶測で計測してカチカチしていく。

 カエルくん牛さんセミごとに担当のカチカチ係が総合点数を提出し、リチェット隊長の印象で最終的なDPSを割り出すという独断と偏見に満ちたシステムを大胆にも採用した。

 こんなのはDPSチェッカーではない。俺はそう思ったが、口出しはしなかった。変に実用化されても困るのだ。



 4.実用化


 でも実用化した。

 番組も終盤に差し掛かろうかというところで、カチカチする測定班をじっと見つめていたネカマ六人衆が余計なことを口にしたのだ。


「なんかぁ、大変そうだね」


 手伝おっか? などと、軽い口調で……。

 俺は、やめるよう言った。

 嫌な予感がしていたのだ。

 この人力DPS測定法は、リチェット隊長の独断と偏見に満ちている。

 そしてネカマ六人衆は、廃人三連星の育ての親のような存在だ。

 ただの無能ではない……。

 俺はやめろと言った。

 しかしカエルくんは最初からそのつもりだったのだ。


 状態3のスマホは拡張現実の機能を持つ。

 ネカマ六人衆はリチェットスタンプを発行し、モグラさんをブッ叩くとリチェット隊長のスタンプがポンポンと出てくるようにした。

 気に入らない攻撃。

 納得する攻撃。

 満足する攻撃。

 大満足する攻撃。

 それらが一目で分かるようになった。

 これにはリチェット隊長もびっくり。

 ネカマ六人衆の判定は完璧であった。

 しかし無能に完璧なまでに感情を読まれたリチェット隊長が妙な対抗心を燃やした。

 おっぱいの前でぎゅっと拳を握って決意を表明している。


「イッちゃんたちには負けないっ」


 ……え? お前、イッチのことイッちゃんって呼んでるの?

 リチェットが素に戻った。子供っぽい呼び方だなぁという自覚はあったのだろう。照れ臭そうに髪をいじくりながら言ってくる。


「へ、変かな?」


「別に?」


 俺はそう言った。もちろん嘘だ。変だと思っている。しかし人の呼び方なんて個人の自由だ。特にネカマ六人衆と廃人三連星の関係は親子に近く、茶化しても笑えない。

 なお、六人衆が無能であり、そんな彼らを最高幹部の三連星が重用しているのは組織として健全とは言えないと正直な感想をお伝えしたスマイルくんは、精神的に一番脆い部分にピンポイントで牙突を叩き込まれて心に深い傷を負ってしまった。

 かようにして世の中にはキャラ次第で踏んでも許される場合と許されない場合がある地雷が埋設されている。

 そこが地雷原であることを教えてくれる者は誰も居ない。デイダラ戦のサスケが写輪眼でチャクラを色分けして見たように、空気を読んで生きていくのだ。


 まぁ少しくらいなら……。

 俺は冗談めかして軽くリチェット隊長をからかってやろうと……。

 視界の端っこでカエルくんが戦うことにしか己の存在意義を見出せないマシーンのような目で俺を見ていた。

 俺は素早く路線変更した。キリッとしてリチェット隊長に「笑わないさ」と告げる。

 俺はチラッとカエルくんを見た。

 カエルくんはにっこり。

 俺もにっこり。

 グッドコミュニケーション!

 地雷原の走破に成功した俺は、生還の喜びに打ち震えた。

 ところが、おっと? こんなところにも不発弾が。

 リチェット隊長が「むむ〜っ」と頬を膨らませていた。

 セミくんが余計なことを口にした。


「……マールマールだ」


 俺は聞こえなかったふりをした。

 しかしリチェット隊長の耳にはしっかりと届いていたようだ。

 パッと顔を上げたリチェット隊長が天啓とばかりにニコッと笑った。


「やっぱり最後はマールマールで〆ないとな!」


 そういうことになった。



 5.マールマール捜索-発見


 お散歩中のマールマールさんを見つけるのは簡単だった。

 居場所を誰かに尋ねるまでもなく、スタッフが掲示板で確認したら載ってた。


 課金アイテムのラジカセからエンディングテーマが垂れ流しになっている。

 カエルくん牛さんセミが大きなモグラさんを見上げる。

 ああ、大きすぎてカメラのフレームに収まらないようですね……。

 マールマールさんはご機嫌斜めのようで、ゴミのような俺たちを睥睨して低い唸り声を上げた。


 Zoooooo……




 これは、とあるVRMMOの物語。

 リチェット探検隊!(ぴょんっ)



 GunS Guilds Online

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