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ギスギスオンライン  作者: ココナッツ野山
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置き去りの心を探して

 俺はコタタマ。生まれて間もない新規プレイヤー様だ。職業は鍛冶師。平穏をこよなく愛する生産職の一員だ。

 そんな善良な市民たる俺にも悩みはある。

 何かってーと俺に絡んでくるゴミどものことだ。ザコはザコらしく慎ましく死んでればいいものを、ヤツらにはレイド級っつークソ強ぇ怪獣をブッ倒せば能力の一部をコピーできるっつークソ厄介な特性を持っていた。

 無害なNPCに絡むのはヤメロっつってんのにゴミどもは行状を改めようとしねえ。コイツらはブン殴ろうがブッ殺そうが止まらねえ。ゴキブリの方がまだしも可愛げがあるぜ。

 このままじゃいつかNPCに被害者が出る。

 ってな訳で、心優しい俺はNPCのためにとある作戦を考えた。

 泥沼のような戦争を起こしてゴミどもを引きずり込むという完璧な作戦だ。

 話せば分かるって? ははん。バカ言っちゃいけねえよ。話せば分かるようなヤツらなら、別に話さなくとも勝手に察するモンさ。それができねえ時点でコイツらはどうしようもねえクズってこった。

 いずれにせよ、方針は固まった。

 とはいえ。とはいえ、だ。世界の命運を賭けて戦ってる連中が旅の途中ずっとクソ真面目な顔してなくちゃいけねえってのも変な話だ。キレーなチャンネーの尻を追っ掛けるのは世界を救ってからにしろっつー理屈も分からんでもないが、じゃあお前がやれよって言われても困るだろ。何しろウマいメシを酒で流し込んでキレーなチャンネーの尻を追っ掛ける予定がある。世界なんか救ってる場合じゃねえよな。分かるぜ。つまるところ救世主なんてのは暇なヤツらがやればいい。職業に貴賎はないって言うしな。ヒーローにはヒーローの、モブにはモブの事情があらぁな。

 大切なのは役割分担だ。

 俺にはメイヨウ様という心強い相棒が居る。放っておけばメイヨウ様が勝手に何とかしてくれるだろう。俺は応援する係だ。応援してくれるヤツが居るってのは大事だからな。メイヨウを一人にはさせねえ。俺がしてやれるのはそれくらいなのさ。がんばれよ、メイヨウ。お前ならやれる。俺はそう信じてるぜ。



 1.山岳都市ニャンダム


 のしのしと大通りを歩くリュウリュウのたくましい背中にしがみ付いている。

 さながらトトロとメイちゃんのようであり、仲睦まじい親子のようでもある。

 通りすがりのゴミが俺たちの仲に嫉妬してギリッと奥歯を噛み締めた。


「おい、崖っぷち。代われよ」


 嫌だ。死ね。


「代われって。相変わらず口の悪い野郎だな……」


 山岳都市をうろついていたら飛び付きやすそうな背中があったので、ひとまず飛び付いてみた次第だ。リュウリュウの行き先は知らないし、特にこれといって打ち合わせをした訳でもない。

 寡黙なリュウリュウは俺を乗せてのしのしと大通りを歩いていく。

 そうこうしていると、道行く子ティナンどもが俺を羨ましがってわらわらと寄ってきた。リュウリュウの身体にしがみ付いてわらわらと這い上がってくる。俺の特等席を奪おうとする子ティナンどもを俺は巻き舌でもるもると鳴いて威嚇した。下がれキッズどもが! ここは俺の特等席だ! パンダさんに迷惑だるぉろろろ!


「やー!」


 最近の子ティナンどもは遠慮というものを知らない。特に俺に対してはひどい。か弱い俺を力尽くでパンダさんから引き剥がして自律歩行を強要してくる。


「私たちのほうが軽いモン!」

「コタタマは自分で歩くの! 大人でしょ!」


 いっちょ前に理論武装してんじゃねーよ! オメェーらはパンダさんに乗りたいだけだろ! くそっ、なんてパワーだ……! 種族人間とはモノが違う。俺はどうしてこんなヤツらを守ろうとしてるんだ……。

 地べたに放り投げられた俺は一計を案じた。残念そうにかぶりを振り、対ティナン用に携帯している菓子類をチラつかせる。

 あーあ。せっかくお菓子をくれてやろうと思ってたのになぁー。悪い子にはお菓子はあげられないなぁー。くれてやりたかったんだけどなぁー。

 わざとらしく溜息を吐く俺に、子ティナンどもは急にしおらしくなった。


「わ、悪い子じゃないモン……」

「……お菓子、くれないの?」


 俺は歯列をギラつかせて自分が子供たちの味方であることを強烈に示唆した。

 俺は心が広いからな……。一度のミスは許す。しかし……分かるな? お前たちは俺の言うことを聞くんだ。それが良い子の条件だからナ。例えば、そうだな……。手始めにお前らのお友達に貴族が居るなら……。

 ハッ。リュウリュウ。リュウリュウが立ち止まってじっと俺を見つめている。


「……お前はどういう人間なんだ」


 い、イヤだな。俺は子供たちの味方だよ。ほら、お菓子だってあげちゃう。ティナンが大好きなお菓子をねェ〜。

 子ティナンどもにお菓子を配る俺に、リュウリュウは興味を失ったように目線を外した。のしのしと歩行を再開し、それとなく子ティナンどもに声を掛けた。


「ついていく人間を間違うな。人を見ろ。街を見ろ。目を養え。それがお前たちの将来を決める……」


 子ティナンどもは顔を見合わせて、名残惜しそうに俺に菓子を突っ返してきた。パッと身を翻してパンダさんを追っていく。

 俺は焦った。ま、待て! お菓子だぞ! お前たちの大好きなお菓子だぞッ! 俺に付いてくれば好きなだけ菓子をやるッ! 好きなだけだぞーッ!

 誘惑に負けて振り返った子ティナンを、別の子ティナンが引っ張って行く。

 俺は地べたに四つん這いになって、ばんばんと地面を叩いた。くそったれ! くそったれー!

 まぁ子ティナンどもに捨てられたからって別にそんなのはどうでもいい。気を取り直した俺は、すぐに立ち上がってリュウリュウの横に並んだ。気まずそうにしている子ティナンどもに適当に菓子をバラ撒いてやる。おら、やるよ。俺が持ってても仕方ねえ。

 で、リュウリュウ。どこに行くんだ? 方角からいって露店バザーに向かってるようだが……。そのナリだ。お前は何かと注目されてる。一人歩きは感心しねえな。お前が殺られたら先生が悲しむ。

 リュウリュウはどんどん先に進んでいく。

 無視かよ。根暗なやっちゃな。さて、どうしたもんか……。

 話が先に進まない。正直俺は前世のことであまりうだうだ言いたくはないのだが、事が事だけにそういう訳にも行かないようだ。俺は傍らを行くツートンカラーの旦那に忠告をしてやることにした。

 やい、リュウリュウ。他のゴミどもにどこまで情報が渡ってるのかは知らねえがな、お前さんは白龍っつー中国サーバー最強の男の転生体だと疑われてるぜ。先生が諸手を上げて歓迎した新規プレイヤーってだけでかなり怪しい。そいつを先生らしくもない失策と取るか、それとも先生をして隠しきれないと踏んだかと取るかで大分見方が変わってくる。俺は後者と見てる。お前の、その足運びは……ちょっと尋常じゃねえ。武道っつーのとも違う。まぁお前の正体なんざどうでもいい。俺がお前に聞いておきたいのは一つだけだ。それだけで大概のことには対処できる。つまり……。

 お前はこのゲームに何を求めてる?


 リュウリュウは、チラッと俺を見てすぐに視線を外した。菓子をパクつきながらリュウリュウの手を握っている子ティナンに視線を落とし、小さく鼻を鳴らした。

 謎多きパンダが、まっすぐ前を見つめて呟きを零す。


「ついて来い」



 2.ニャンダム山脈-中腹


 露店バザーでタイヤを購入したリュウリュウは、その足でニャンダム山脈に向かった。

 途中で力尽きた俺をおんぶし、山岳都市を一望できる中腹まで登ったパンダさんが、腕に通したタイヤを肩に引っ掛けて言う。


「お前は動きに無駄が多い。だから疲れる」


 そんなことないもん。アットムくんは俺の動きが綺麗だって言ってくれたモン!


「なら、もっと上のレベルでの話だ」


 新規プレイヤーの分際でナマ言ってんじゃねェ〜。

 パンダさんは俺の言葉を無視した。おんぶしている俺の脚を軽く叩いて顔を上げるよう促してくる。


「見ろ」


 俺は顔を上げて、言われるままに山岳都市のどっかでキレーなチャンネーが素っ裸になってやしないかとサーチを掛けた。

 リュウリュウが続ける。


「この街を見ておきたかった。それだけだ」


 待って。もしかして、さっきの話? 信じらんねー。目的とか別にねーのかよ。なんで俺に登山させた? 一言で済んだろ。口下手か。謝って。俺に謝って!

 ぽかぽかと頭を叩く俺を、リュウリュウは爪に引っ掛けてお姫様抱っこした。


「コタタマとか言ったな。お前がこの街を守れ。お前が向いてる」


 向いてねーよ! 俺は災厄の権化とか言われてンだ! 失礼しちゃうよな!


「いや、向いてる。お前みたいなのは……向いてる」


 ……やっぱり? そんな気はしてたんだよね。

 俺は煽てられて調子に乗った。

 リュウリュウはじっと眼下の山岳都市を見つめている。ぽつりとこう言った。


「俺は、ロストした時の記憶がない」


 なにを当たり前のことを言っとるんだ。


「自分がこのゲームのプレイヤーだったという確証が何もない」


 そんな筈はない。俺は反論した。

 記憶を失ったとしてもハード本体は残る。いや、まさか……。自分で言っておいてすぐにそれが100%ではないことに気が付いた。

 もしもゲームをやっていた本人が全ての痕跡を消そうとしたなら、不可能ではないのかもしれない。例えば、部屋の掃除をしている途中で意図的にロストすれば。人を使うという手もある。


「中古屋でこのゲームのハードを見掛けて、何か引っ掛かるものがあった。俺はヤギとは古い付き合いだ。ヤギがこのゲームをやっていることは知っていたから声を掛けた。それが今言える俺の全てだ」


 ふうん。じゃあ本当に新規ユーザーと何も変わらねえな。俺は先輩だぞ。俺を敬え。

 リュウリュウがキロッと目ん玉を動かして俺を見る。意表を突かれたようにパチパチと瞬きを繰り返してから、コクリと小さく頷いた。


「そうだな。それはそうだ。先輩。よろしく頼む」


 おお、可愛らしいトコもあるじゃねーの。へへっ、任せな。面倒見てやるよ。

 リュウリュウはグワッと犬歯を剥いた。

 ……笑ったつもりなのかな。パンダって間近で見ると普通に熊だな。今にも噛み殺されそうだぜ。

 まぁいいや。俺はリュウリュウの腕の中でぴんと手足を伸ばして、改めて自己紹介した。

 俺ぁコタタマってーんだ! 心ないゴミどもに魔族だの何だの言われちゃあいるが、知る人ぞ知る光の勢力の撃墜王と言えば俺のことだぜ!


「俺はリュウリュウ。戦士だ」


 それだけでは不愛想にも程があると思ったのか、リュウリュウは付け足した。


「ヤギが魔法使いだと言うから戦士にした。酒は、飲める」


 よっしゃ。リュウリュウ! 俺ぁお前の前世がどうたらと言うつもりはねえ。だが使えるモンは使うぜ。ひとまず俺を抱えて山下りだ! 行け!

 リュウリュウは頷き、そして笹食ってる場合じゃねえとばかりに駆け出した。

 上空を旋回するブーンがぢょんぢょんとさえずり、俺たちの門出を祝福しているかのようだった。

 俺とリュウリュウの冒険は始まったばかりだ。



 3.ポポロンの森-人間の里


 地下祭壇から這い出した俺は、シルシルりんとの待ち合わせ場所に向かう。

 別に言ってくれれば露店バザーに向かうのに、どういう訳か人間の里を待ち合わせ場所に指定してきたのだ。もちろん俺は考え直すよう言った。人間の里はエンフレが当たり前のようにうろつく魔境だ。もはや人畜無害な生産職が生きていける環境ではない。

 今も、やたらと醜悪な姿をした巨人が地に這いつくばって、小さくて美味しそうな俺を品定めするようにじっくりと眺めている。凶悪な牙の隙間から寒々しい吐息を漏らし、


【マダ生キ残リガ居タノカ……】


 魔境ロールやめろ。開き直ってんじゃねえ。

 不満を述べる俺に、粗大ゴミは爛々と輝く瞳の瞳孔を収縮して馬鹿デカい図体を揺すった。


【そうは言うがよォ〜。実際んトコどうすんだよ崖っぷちよォ〜。この有様をよォ〜】


 知るかっ。逆に俺が聞きてーよっ。オメェーらはどうしてそうホイホイとエンフレに変身すンだよ。俺のハドラに頼ったら自滅することくらいは分かってんだろ?


【ンなこと言っても仕方ねぇだろォ〜。向こうが変身したらこっちも変身しねぇと喧嘩にならねぇんだよォ〜】


 それでいい……。俺は内心でほくそ笑んだ。醜い足の引っ張り合いこそが種族人間の本質だ。滅べっ、ゴミども……! 俺は生きるぜ。俺は心優しい善良なプレイヤーたちと一緒に生きていく。さながら牧歌的な暮らしを送る羊飼いのようにな……。

 めぇめぇと鳴く羊たち。つらく険しい外界と柵で仕切られ、優しい世界しか知らない彼女たちと共に生きていこう。

 その代表的なプレイヤーがシルシルりんということになる。

 しかし、おっと? そのシルシルりんが今日は何故か重武装している。最近とんと見掛けなくなった鎧など身に付けて、随分と勇ましい出で立ちだ。

 フルアーマーシルシルりんが、俺に絡んでいる粗大ゴミを見るなり、ガシャガシャと鎧を重たげに鳴らして駆け寄ってくる。やたらとゴツいハルバードを振り上げて、


「えーい!」


 可愛らしい掛け声を上げて、カンカンと粗大ゴミを叩く。


【……?】


 困惑する粗大ゴミ。無理もない。シルシルりんの攻撃はどう見ても戦闘職のそれではなかった。

 個人差はあるものの、金属製の装甲とフレームで全身を構築しているエンフレに少しでもダメージを通そうとするならば急所を狙うしかない。人間で言うなら爪の隙間に爪楊枝をブッ刺すようなものである。大抵のエンフレは装甲やフレームとは別に生体パーツがあるので、そこを狙うのだ。

 ひとしきりカンカンしたシルシルりんは、おそるおそる粗大ゴミの装甲を眺めると、ちょびっと引っ掻いたような塗装の傷を確認して満足そうに頷いた。どうだっとばかりに胸を張って粗大ゴミを見上げる。

 ……粗大ゴミは、ひとまず乗ることにしたようだ。


【ぐわ〜! やられた〜!】


 ごろんと地べたに寝転がる。大根役者にも程がある。

 しかしシルシルりんは真に受けたようで、「えっ」と驚きの声を上げて粗大ゴミに駆け寄った。


「だ、大丈夫ですか!? そ、そんなに強く叩いたつもりは……。あの、ゴメンなさい! し、死なないで……」


【い、いや……】


 己の大根ぶりを自覚していたらしく、演技をやめた粗大ゴミがむくりと上体を起こした。


【えーと……。崖っぷちの知り合いだよな? 俺は大丈夫。その、ゴメン。本当は全然効いてない】


「そ、そうですか……」


 シルシルりんはしゅんと肩を落とした。

 ……何だろう。もしかして戦闘職になるつもりなのかな? ずっと生産職ばかりやってると飽きるだろうし、そういうこともあるかもしれない。

 そういうことなら俺の出番だ。俺はシルシルりんの肩を抱き寄せてレクチャーすることにした。粗大ゴミの生体パーツを指差してエンフレ攻略法を伝授する。

 ほら、シルシルりん。あそこ。なんかグロいトコあるでしょ。俺の場合は目ん玉ってことになるんだけど、エンフレってのは基本ね、人間がベースなんだよ。ああいう柔らかそうなところを抉ってやるといいんだ。中にはそんなトコねーよ!っつー化け物が居るけど、そういうやつは守りが固い代わりに足が遅いタイプが多い。つまり放置して先に進むのが正解なのね。どうしても殺したいならアタッカーを連れて来ないと。で、気を付けて欲しいのは……。


【崖っぷち、崖っぷち】


 ソシャゲーでさぁ。よく属性のジャンケン関係ってあるじゃん? 火は風に強くて風は水に強いみたいな。それに近いんじゃないかって色々と研究してるみたいなんだけど、一概に守備型、攻撃型って割り切れないみたいなんだよ。一番多いのが万能型ってことになる。実際そうなんだろうね。モンスターと戦ってて守備専門ってあんま見掛けねーっつうか、俺の知り合いにヴォルフさんっていうタンクが居るんだけど、


【崖っぷち。おい】


 うっせーな。横から口挟むなや。今シルシルりんに大切なこと教えてるじゃろがい。


【いや、多分そういうことじゃねーぞ】


 あん? じゃあどういうことなんだよ。

 おっとシルシルりんの目がぐるぐるしている。詰め込みすぎたか。


「うー……うー……」


 シルシルりんは恨みがましそうに俺を見た。


「……本当に皆そんな複雑なこと考えながら戦ってるんですかぁ? コタタマりん、私に意地悪してません?」


 うーん。こればっかりは慣れだからなぁ。口で説明しようとするとどうしても長くなるんだよ。

 で、どうしたの急に。別に戦闘職を目指してる訳じゃなさそうだし。

 俺は必殺の核心突きを繰り出した。話してれば分かる。シルシルりんは別に戦闘に興味がある訳じゃない。エンフレの具体的なバラし方を教えても目が泳いでいた。

 急な方向転換にシルシルりんは誤魔化すことすら忘れて、身体の前で手を組んでもじもじした。


「いえ、そのぉ……。こ、コタタマりんと、色んなところに遊びに行けたらな、と。思ったりして……」


 ん? よく分からない。それでどうして急に戦装束になるんだ?

 粗大ゴミが横から口を挟んでくる。


【お前、マジで言ってんのか。前々からそうじゃねーかと思ってたが、いよいよ頭おかしくなってんぞ……】


 それは俺も思う。段々人間の細かい機微が分かんなくなってきた。特に生産職と絡んでると、ん?ってなることが多い。

 どういうことなのだねエンフレくん。


【オメェーは放っとくと最前線に突っ込んだりするだろ。そもそもモンスターに脅威を感じてねえ時がある。感覚が麻痺してンだよ。そんなオメェと一緒に遊ぶなら、ちょっとくらいは戦えねえとマズいと思ったんじゃねーか?】


 そうなの、シルシルりん?

 シルシルりんは顔を真っ赤にして俯いている。やがて、コクリと小さく頷いた。


「だ、だって、私たち、お、おおお付き合いを、している訳ですし……」


 いつの間にか俺はシルシルりんとお付き合いをしていたらしい。意外には思ったものの、もちろん大歓迎だ。そういうことなら任せて欲しい。早急にデートプランを練り直すぜ。

 粗大ゴミさんが面白くなさそうに悪態を吐いた。


【けっ! 崖っぷちさんはモテますなァー! いつも別の女を連れ歩いてるだけのことはありますわ! 崖っぷちさんはァー!】


 ふはは。妬むな妬むな。俺は粗大ゴミさんの装甲をゲンコツで軽く叩いた。お前らには積極性が足りてねーんだよ。失うものなんか何もねんだからガンガン行こうぜ。


【プライドがあんだよっ、プライドが! オメェーとは違うの!】


 ふん、そんな安っぽいプライドは捨てちまいな。逆ナン待つくらいなら世紀末のモヒカンのほうがよっぽどモテるぜ。

 なははー! 俺は有頂天であった。念願のシルシルりんを手中に収め、俺のネトゲーライフは絶頂期を迎えたと言っても過言ではない。

 だが、事は俺が思うよりも深刻だった。



 4.曜日ダンジョン-1F


 ……あの、シルシルりん。

 初デートで曜日ダンジョンってのは……どうなのかな? もっとさ、こう、平和的な感じで行きたいなと俺なんかは思うんだけど。

 しかしフルアーマーシルシルりんは気合十分といった風情だ。


「ここなら私も戦えると思うんですっ。一番簡単なダンジョンだってみんな言いますし!」


 そりゃ言うけども。実際そうだろうけども。

 ……ひとまず、それ脱ごうか。

 俺はシルシルりんの鎧に手を掛けた。こんなもの着てたらろくに動けまい。


「ひゃっ!? な、なに? なな、なんで脱がそうとするんですか?」


 いや、だって鎧なんて何の役にも立たないよ。熟練者ならともかく、シルシルりんは逃げ足を遅くしちゃったら本当に何もできないよ?


「え? そうなんですか?」


 うんうん。コクコクと頷く俺に、シルシルりんはあっさりと納得してくれた。


「じゃあ脱ぎます。あ、でも捨てるの勿体ない。どうしよう……」


 途方に暮れるシルシルりんに俺は提案した。

 いったん引き返そう。作戦会議だ!


「作戦会議!」


 作戦会議という響きにシルシルりんはあっさりと納得してくれた。

 ……さて、どう説得したものか。




 これは、とあるVRMMOの物語。

 悪い男とは手を切りなさい。



 GunS Guilds Online


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― 新着の感想 ―
シルシルりんが一番正統派の可愛さで好き
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