第33話 勉強会メンバーで遊びにいく・その1
(ちょっと早く来すぎたか?)
今日は信司発案の勉強会メンバーでアミューズメントセンターに遊びに行く日だ。
陽介は待ち合わせ場所の駅前ロータリーに、約束の時間の二十分前についてしまっていた。
(ん~……Web小説、読もうかな)
陽介がスマホを取り出した、その時。
(お~、やっぱ常陸院さんは早めに来ると思ったんだよな)
見慣れた黒塗りのセダンが駅前ロータリーに停車して、中から咲月が降りてきた。
今日の服装は、薄いピンクのブラウスに黒のアンクル丈のパンツ、スニーカーという動きやすそうな格好だ。
陽介を見つけた咲月はニコッと笑顔になり、トコトコと近づいてくる。
「こんにちはっ、星崎さんっ♪」
「おう、こんにちは。常陸院さんも早いね」
「はいっ。皆さんと出掛けるのは初めてでしたので、家にいても落ち着かなくて……つい早めに出てきてしまいました」
照れくさそうに頬を染める咲月。
(ははっ。常陸院さん、皆で遊ぶのがホントに楽しみだったんだな)
彼女がワクワクしているのが伝わってきて、陽介は自然と頬を緩ませる。
そんな咲月の全身を改めて見てから口を開く。
「常陸院さんのパンツスタイルって初めて見たけど、すげぇ似合ってるな。……それに、ポニテもスポーティな雰囲気でいいと思うぞ」
咲月が髪を結っている姿が、陽介の目には新鮮に映った。
「ふふっ♪ ありがとうございますっ。本日行くところは動きやすい格好をした方がいいと聞きましたのでっ」
「そうだな~、色んな施設があるから動きやすい格好の方がいいと思うし……多分、スポーツコーナーにも行くと思うしな」
「楽しみですっ! ……星崎さんの今日の服装も似合っていて素敵ですよっ」
フンスッと前のめりになり、両手を胸の前で握る咲月。
その動きに合わせて、ポニーテールがフワッと楽しげに跳ねた。
「ありがと……。まぁ、そのあれだな……せっかくの機会だし、目一杯楽しもうぜ」
(前のめりになると、お胸が強調されるんだよなぁっ……! 無防備にそういう動きをされるのはホント、心臓に悪いっ……)
豊満な胸部に視線が引き寄せられそうになるのを、陽介は必死に抑えるのだった。
陽介と咲月が少しの間、待ち合わせ場所で話していると、改札から三人組がやって来た。
「お? 四季たちも来たみたいだな」
「本当ですね。それにしても三人揃っていらっしゃるとは仲がよいのですね」
陽介たちに気がついた信司が、葉瑠香と奈々を連れて近寄ってくる。
いつもなら小走りで近づいてくるのだが、今日は葉瑠香たちを連れているからだろう。信司は彼女たちに歩幅を合わせているようだった。
「二人とも待たせちゃったかな?」
「いや、大丈夫だ。それにまだ待ち合わせ時間の十分前だしな~」
信司は先日買ったポロシャツとチノパンを早速着ていた。
「こんにちは~。星崎くんと常陸院さん、今日はよろしくねぇ~」
「こんにちはっ! 二人ともよろしくっ」
「はい。春山さん、夏川さん、本日はよろしくお願いいたします」
葉瑠香と奈々に声を掛けられた咲月が外行きの表情で一礼する。
(うわっ、ガチガチになっちゃってる……。でも、常陸院さんは二人と話すことも楽しみにしてたんだし……せっかくなら、このチャンスに二人とちょっとでも打ち解けられたら……)
陽介はさり気なく、咲月の背中に手を添える。
「――ッ⁉」
(女性の身体に勝手に触って、マジですんませんっ……!)
心の中で謝りながら、そっと咲月を葉瑠香と奈々の方に押した。
「ぁっ…………えっと、歩きながらお話しませんか……?」
陽介の意図を察したのか、おずおずと二人に話し掛ける咲月。
(ナイスだ、常陸院さん! そのまま、もうちょっとだけ頑張れっ……)
咲月に内心でエールを送り、信司の横に並ぶ。
アミューズメントセンターに向かって、男子二人女子三人でゾロゾロと歩く。
「早速、その服着てきたんだな。やっぱ似合ってると思うぞ」
「あははっ、ありがとう~。星崎くんに選んでもらって正解だったよぉ」
「そう言ってもらえると、俺も選ぶの手伝った甲斐があったぜ」
「うんっ、それに……葉瑠香と奈々にも、似合ってるって褒めてもらったんだ~」
そう言って信司は嬉しそうにはにかんだ。
「おおっ……! それはよかったなっ!」
「これを機にファッションセンス、少しずつでも磨いていくよっ」
「おうっ!」
(四季がやる気になってるぞ。……やっぱ四季のやる気を引き出すには、ヒロインズに引っ張ってもらうのが一番なのかもなぁ)
アミューズメントセンターへの道中、そんなことを考える陽介だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「まずはプリクラからだよねっ! さぁ、行こうっ」
「ま、待ってくださいっ、夏川さんっ……」
アミューズメントセンターに着いて、女子たちは早速プリクラの筐体に向かう。
(おお、流石は夏川さんだ。常陸院さんを物理的に引っ張ってる……)
グイグイ距離を詰めても、嫌な感じにならないのが奈々の凄いところだ。
二人の後ろを葉瑠香がついて行き、さらにその後ろを陽介と信司が歩く。
「あははっ、奈々がだいぶはしゃいでるなぁ~」
「へぇ~俺にはいつもと同じ、元気な夏川さんに見えるけどな」
中学からの仲だから、細かな機微がよくわかるのだろう。
「ほらっ、信司も星崎くんもっ! まずはプリクラ撮ろうよっ」
こちらに向かってブンブンと手を振る奈々。
「……行くか」
「うん、そうだねぇ~」
待たせるのも悪いと思い、足早に女子三人の元へ近寄った。
「……五人で入っても、スペースにまだまだ空きがあるのですね」
初めてのプリクラに、咲月が陽介の横にやって来て筐体内を見回しながら呟いた。
「そうだな。俺もプリクラって初めて入ったけど多分、大勢で撮れるように広くしてるんじゃないか?」
「なるほど……丁度、今の私たちみたいに、ですねっ」
信司と葉瑠香の腕を掴む奈々を見て、咲月が微笑む。
「さ~早く撮ろうよっ!」
最初の一枚は、後ろに陽介と咲月。前に葉瑠香、信司、奈々の並びで撮った。
その後、女子三人が前列、男子二人が後列。その逆など、奈々が並び方を指定し、皆はそれに従って動いたのだった。
「ふふっ、見てくださいっ♪ ここの文字、私が書いたのですよっ」
「お~落書きってこうなるのかぁ」
咲月がテンション高く、陽介に文字やスタンプで装飾したプリクラを見せてくる。
「プリクラは初めての経験でしたが、こうして皆さんと一緒にいたことが形になるのはいいですねっ」
嬉しそうにプリクラを見つめる咲月。
(常陸院さんもちゃんと楽しめてるみたいだし、あの二人ともちょっとは馴染めたっぽいし、よかったなぁ……)
そんなことを考えつつ、陽介は口を開く。
「……これから、もっとこういうのが増えていくんじゃね?」
「そうですねっ! そうなって欲しいですっ」
「……ッ」
華やかな笑みを向けられて、陽介は思わず息を詰まらせた。
教室にいる時の壁を感じる笑顔とも、二人でいる時の無防備な笑顔とも違う。
どこか気品を感じさせる笑顔だった。
「コホンッ…………。さ、しっかり遊び尽くそうぜ」
咳払いをして、心を落ち着かせる陽介。
そして咲月の横に並び、プリクラを備え付けのハサミで切り分けている信司たちの元に向かう。
「あ、星崎くん。これ、星崎くんの分だよ」
「おう、サンキュー」
信司からプリクラを受け取っていると、奈々が声を掛けてきた。
「ねぇねぇ。次はエアホッケーやろうよっ!」
「えぇっ……奈々ってガチで上手いからなぁ……」
奈々の提案に、信司が渋る。
「じゃあ、二対二でやろうよっ」
「ん? それだと一人余るぞ?」
奈々の言葉に今度は陽介が反応した。
「あ~星崎くん、私がいつも観る側に回ってるから気にしないで大丈夫だよ~。私、運動が本当に苦手でねぇ……」
「あ~そうなんかぁ」
疑問に答えた葉瑠香の言葉に納得する。
(ゲームの設定と同じで、ホントに運動が苦手なんだなぁ……。そういえば、体育祭でも特に活躍してるとこは見なかったな。四季に弁当を渡してたくらいか?)
そんなことを考えていると、奈々が笑顔で葉瑠香に抱きつく。
「そういうことだから、二対二で問題ないよっ! それに葉瑠香への埋め合わせは、そのあとで信司がクレーンゲーム頑張ってくれるからっ!」
「なるほど、それならいいか」
自分たちだけが楽しむのは申し訳ないと思ったが、そういうことなら問題ないだろう、と陽介は頷いた。
「それで、エアホッケーですか? そのチーム分けはどうしますか?」
咲月が小首を傾げて、奈々を見る。
(常陸院さん、エアホッケーも分かってなさそうだぞ……)
陽介が咲月に色々と説明しようと思っていると、先に奈々が話を進めてしまった。
「ん~ここは公平にグーパーで決めよっか!」
こうして葉瑠香を除く四人が輪になって手を出す。
「グ~パ~……ジャスっ!」
その結果――
「わぁ、星崎くんと同じチームだ!」
「おう、よろしくな~」
陽介と信司。
「常陸院さんっ、よろしくねっ」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いいたしますね、夏川さん」
咲月と奈々が、それぞれチームとなった。




