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前世でハマった育成系エロゲのモブキャラに転生した ~主人公ハーレムを眺めたいので、自分を育てつつ主人公をサポートします~  作者: 秋之瀬まこと
第一章

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第24話 放課後の寄り道

 昼休み。陽介はいつものように咲月と図書室にいた。


「星崎さん。このWeb小説、私の最近のお気に入りなんです」

「へぇ……現代舞台のラブコメかぁ。常陸院さんは異世界モノが好きなイメージがあったから少し意外だな」


 スマホの画面を見せてくる咲月。

 会話の内容はいつも通りの小説の話だ。

 ただ――


(この前までは、テーブル挟んで向かい合って座ってたんだけどさぁ……)


 今日の咲月は陽介の隣に座っていた。

 しかも咲月が椅子を彼の方にズラしたので距離がやけに近い。

 陽介はすぐそばにいる咲月の存在感をつい意識してしまった。


(くぅっ……! 凄く上品で甘い香りがする……。女の子ってなんでこんなにいい匂いがするんだ?)


 鼻腔をくすぐるフローラルな香りにドギマギしてしまう陽介。

 そんな彼の二の腕に咲月が軽く触れる。


「異世界モノはもちろん好きです。ですが、現代舞台のラブコメはそれはそれで面白いです。」

「へ、へぇ……それなら現代舞台のラブコメのおすすめ作品、教えて欲しいな」


 突然のボディータッチにドキドキしつつ、陽介は咲月の話に乗った。

 そうしないと、上手く喋れないくらい余裕をなくしていた。


「はいっ。わかりました。ひとまずこのWeb小説のURLを送りますね」

「うん、ありがと。早速、夜に読んでみるよ」

「感想を話し合えるのを、楽しみにしていますね」


 ニコニコと花の咲いたような柔らかな笑みを浮かべる咲月。


(くっ……常陸院さん、なんだか小悪魔っぽくなってきてないか?)


 さり気ない触れ合いに、年頃男子はソワソワしっぱなしであった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 昼休みに咲月の無意識のスキンシップに悶えた陽介。

 どうにか根性で煩悩を追い出して、午後の授業もしっかりと受けた。

 帰りのHR(ホームルーム)も終わり、陽介は帰り支度をする。


(スーパー寄って食材買って……。う~ん、たまにはどこか寄り道してみるか?)


 朝、部屋を出る前に買い足したい食材はスマホにメモを取ってある。

 なので買い物はすぐに終わるだろう。

 それなら気分転換をするのもありだ。


(問題はどこに寄り道をするか? ってことだよなぁ……)


 趣味といえば、読書に料理、筋トレくらいの陽介。

 参考書を解くのも楽しいが、あれは勉強なので趣味にカウントしたくはない。


(一人でゲーセン行くのもなぁ……それにゲーセンって金かかるし)


 チラッとゲーム仲間でもある信司の方を見る。

 すると、彼はヒロインズ(葉瑠香と奈々)に挟まれていた。

 そんな彼を誘うのははばかられる。


(別に無理に寄り道する必要もないか。今日は普通にスーパーだけ寄って帰るか)


 気分転換はいつでもできる。

 そう結論づけて、陽介は教室を出た。


 昇降口に向かって廊下を歩いていると、


「星崎さん、待ってください」


 後ろから声を掛けられ、制服の袖が掴まれた。


「常陸院さん、どうしたの?」


 何か用事だろうか、と彼女の言葉を待つ。


「えっと……もうお帰りになるのでしたら、ご一緒しませんか?」

「あ、うん。いいよ。でも今日はスーパーに寄って食材の買い足しがしたいから、途中まででもいいか?」

「わかりましたっ。それでしたら瀬戸に言って、スーパーまでお送りしますね」


 陽介の制服から咲月は手を放し、肩が触れ合いそうな距離感で隣を歩き始める。


(今日はホント、やけに距離が近いんだよなぁ……)


 放課後になったばかりの廊下は生徒も多い。

 なので、見方によっては寄り添って歩いているように見える距離感の二人は二度見、三度見されていた。


(ほらぁ……これ、また嫉妬されるパターンじゃないのぉ?)


 常陸院咲月は絶世の銀髪美少女で『完璧お嬢様』と陰で持て囃されている。


 なので咲月に友人認定された陽介は体育祭のあと、少しだけ男子たちから嫉妬の視線を向けられた時期があった。

 ただ幸いなことに直接、陽介に文句を言ってくる人間はいなかった。


(まぁ、なるようにしかならないか……)


 せっかく仲良くなれたのに、自分たちに関係ない周り(他人)の妬みを気にして咲月から距離を取るのは違うだろう。


 陽介は意識的に背筋を伸ばして咲月の隣を歩く。

 そして校門前で待機していた執事の瀬戸に挨拶をして、車に乗せてもらうのだった。




 車内で授業の話や期末考査の話をしているうちに、陽介の行きつけのスーパーに到着した。


「常陸院さん、一緒に車乗せてくれてありがとね。瀬戸さんも送っていただき、ありがとうございます」


 二人にお礼を言って、陽介は車から降りようとする。

 すると――


「私も星崎さんがよく行くというスーパーの店内を見てみたいのですが……」


 と咲月が言い始める。

 確かに前に雑談していた時に、行きつけのスーパーだ。という話はした。

 ただのどこにでもある普通のスーパーなのだが。


「ええっと……?」


 陽介が瀬戸を見ると、笑顔で頷いていた。

 これは許可が出た、ということなんだろう。


「うん、わかった。一緒に見て回ろうか」

「はいっ!」


 ニュッと口角を上げて、にこやかな笑みを浮かべる咲月。


(嬉しそうな笑顔が見れたし……まぁ、いっか)


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 陽介は咲月を連れて、スーパーに入る。

 瀬戸はスーパーに併設されている駐車場に車を入れるようだ。


(こんな庶民的なスーパーの駐車場に高級セダンが停まってるっていうのも、なんだか面白いよなぁ)


 そんなことを考えていると、隣で咲月がキョロキョロと店内を見回していた。


「おお~ここがスーパーですか……」


 その様子に陽介は声を掛ける。


「もしかして……もしかしなくても、スーパー初めて?」

「はいっ!」


 パッといい笑顔を浮かべる咲月。


「……せっかくだし、何か買う?」

「いえ、今日は星崎さんについていきます」

「わかった。でも欲しいものがあったら言ってな」


 陽介はカゴをカートに乗せる。

 そしてスマホにメモしておいた買い物リストに沿って、必要なものをカゴに入れていく。


「今日の晩御飯は何にするのですか?」

「カルボナーラにしようと思ってる。最近、パスタソースを作るのにハマっててさ。今日はカルボナーラソースの研究をするつもりだな」


 そう言いながら、生クリームを手に取る。


「いいですね、カルボナーラ。機会があったら、星崎さんのカルボナーラを食べてみたいですっ」

「俺が作ったのでいいなら全然いいぞ。……でも、常陸院さんが食べてくれるなら、今日から気合を入れて研究しないとだな」


 カルボナーラの材料以外にも、明日以降に使う食材や洗剤などをカゴに入れて買い物を終えたのだった。




「ホントに俺についてきただけだったけど……初スーパー、楽しめた?」

「はいっ! 色々なものが売っていて、見ているだけでも楽しかったです。それに星崎さんとおしゃべりもできましたのでっ」


 咲月は屈託のない笑みを浮かべる。


「そっか……楽しめたんならよかったよ。俺も誰かといっしょにスーパーで買い物なんて親以外だと初めてだったから新鮮だったしな」


 スクールバッグからエコバッグを取り出して、購入した商品をサッカー台で詰めていく。

 その様子を咲月が興味深そうに見つめている。


「……これ、エコバッグっていうんだよ」

「エコバッグですか……。それも気になってはいたのですが、コンビニだと店員さんがレジ袋に買ったものを入れてくれますよね?」


 さすがにコンビニには入ったことがあるのか、と安堵しつつ咲月の疑問に答える。


「スーパーでも店によっては、コンビニみたいにレジで店員さんが袋に詰めてくれるよ。この店は自分で袋詰めするタイプの店、ってことだな」

「なるほど……袋詰めは慣れないと大変そうですね」

「まぁね。でも逆に慣れると、自分で詰めた方が納得のいく詰め方ができる……気がするんだよな」

「くすっ、気がするのですか」


 陽介の言い方が面白かったのか、咲月が控えめに笑う。

 そのしとやかな笑顔に目を奪われそうになり、陽介は慌てて視線を逸らす。


(ふぅ……小説大好きお嬢様の不意打ちのナチュラルな笑顔は反則級だよなぁ……)


 スクールバッグとは反対側の肩にエコバッグをかける。


「それじゃあ、駐車場の車まで送ってくぞ」

「いえ、大丈夫ですよ。星崎さんがエコバッグに買ったものを詰めていた時に、瀬戸に連絡しましたので、入り口のそばまで車を回してくれているはずです」

「ん、じゃあそこまで送っていくわ」


 陽介は返事を待たずに、歩き始める。

 この街は治安がいいし入り口はすぐそことはいえ、咲月のような美少女を一人にするのは心配だった。


「あ、待ってくださいよぉ」


 トコトコと早足に陽介の隣に並ぶ咲月。

 咲月が追いついたのを確認して、歩幅を彼女に合わせる。


 結局、咲月を車まで送っていくつもりが、咲月と瀬戸の厚意でそのままアパートまで車で送ってもらった陽介だった。

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