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前世でハマった育成系エロゲのモブキャラに転生した ~主人公ハーレムを眺めたいので、自分を育てつつ主人公をサポートします~  作者: 秋之瀬まこと
第一章

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第19話 こんな休日もたまにはいい

 体育祭の次の日。振替休日で学園は休みだ。

 陽介はいつもの休日と同じようにジョギングをして、アパートに戻ってくる。


 朝食を食べてから、予習復習と参考書をこなし、昼食までの残り時間で筋トレをしていく。


(完全にルーティンにすることができてるな。うん、いいことだ!)


 そして、あっという間に十二時になる。

 昼食を作ろうと冷蔵庫を開けると、食材がほとんど残っていなかった。


(あ~体育祭の弁当作り、張り切りすぎたか。夕方辺りにスーパー行かないとな)


 仕方がないので、残り物を使って焼きそばとスープを作ることにした。


(しっかし、焼きそばって火を入れる順番だけ気をつけて、残り物をとりあえず炒めてソースで味付けすればそれなりの味になるから、こういう時に便利だよなぁ)


 昼食を食べ終わり洗い物をしながら、そんなことを考える。


 叔父――星崎謙吾という料理の師匠もいるし、陽介自身が凝り性なところがあるので、自炊は意外と性に合っていた。


 午後は掃除洗濯をこなしたあとで、ファッション雑誌を読んで流行を学び、『魅力』のステータス上げをする。


(センスを磨くっていうのも難しいよなぁ……俺なんて、マネキン買いばっかりしてるもんなぁ。もっとファッションにこだわりを持った方がいいのか? う~ん……ジョギング、筋トレと勉強はこのまま続けるとして、センスを磨くことも本格的に始めていこう)


 GWに信司と遊んだ時にちょっとアドバイスをした陽介だったが、どんぐりの背比べだなぁと、本人は感じていた。

 だが、それは陽介本人が気ついていないだけで、服のシルエットを見る目や配色を選ぶ感性は実はしっかりと備わっているのだ。


 ペラペラとファッション雑誌を読んでいると、窓の外がオレンジ色になっていた。


(お、もうこんな時間か。意外と興味深くて集中して読んじゃったな……布生地の種類とか気にしたことなかったし)


 予定通り、夕飯や明日以降に使う食材を買いにスーパーに向かう陽介。

 前世の記憶を取り戻してからすっかりと常連になったスーパーだ。

 しっかりとポイントカードも持っている。


「あら、星崎くん。夕飯の買い物かい?」

「竹内さん、こんばんは。ええ、夕飯と明日以降に使う食材を買いに来ました」


 スーパーに入ってすぐに、野菜コーナーで店員に話し掛けられた。

 このスーパーでパートをしている竹内敦子という推定四十代の女性店員だ。


「星崎くんはちゃんと自炊してて偉いわよねぇ……。うちの娘なんて包丁もろくに使えないのよ」

「はは……俺も自炊始める前までは使えなかったですし大丈夫っすよ。……多分」

「そうかねぇ……星崎くんと同じくらいの年なんだけどねぇ……」

「それならもっと無理じゃないっすかね? 高校生で日常的に料理をしている人の方が少数だと思いますよ? 俺の場合はバイト先で色々と教えてもらってるんで、できるようになってきただけですし」


 世間話をしながら、陽介はカゴに野菜を入れていく。


「そういえば、今日はごま油とオリーブオイルがそれぞれ、お一人様一品限りで特売価格になっていたわよ」

「おぉ~ありがとうございます! ちょっと確保しに行ってきます!」


 陽介はその場で竹内と別れ、ごま油とオリーブオイルを確保する。


(スーパーって色々と特売やってくれるから、助かるよなぁ~)


 鶏肉と豚肉をカゴに入れてから、冷凍コーナーを覗く。


(久しぶりに餃子、食べたいな……ごま油も買うし)


 冷凍の餃子を見て、陽介はまた野菜のコーナーに戻る。

 餃子の餡を作るために足りない野菜をカゴに入れて、精肉コーナーで合い挽き肉を二パックほど確保した。

 そのあと、餃子の皮もかごに入れる。

 ひとまずは必要なものは確保できたので陽介はそのままレジに向かった。


 その途中で――


「うぅっ……ママぁ……どこぉ?」


 今にも泣き出しそうな幼児がいた。

 シャツの裾をギュッと握っている姿に胸が締め付けられる。


(迷子か……)


 周りを見ても、幼児に声を掛けようとする人はいなかった。


(う~ん……このご時世だし、厄介事に自分から首を突っ込みたくはないのはわかるんだけどなぁ……)


 それでもあんな小さな子が泣きそうになっているのに、見て見ぬふりをするのは違うように思う。


(俺が声を掛けてもいいけど、怖がられそうだしなぁ……どうしようか……)


 陽介は迷子の幼児にどう声を掛けようか考える。

 その時、少し離れた場所にパート店員の竹内の姿を見つけた。


(うん、俺一人で話し掛けるよりも、店員を巻き込んだ方が色々と楽だな)


 そう判断すると、小走りで竹内の元に向かう陽介。


「竹内さん~!」

「あら、星崎くん、どうしたの?」

「あそこに迷子っぽい幼児がいるんですけど……」

「まぁ、それは大変じゃないっ! すぐに案内してくれないかしら」

「わかりましたっ」


 陽介は竹内を連れて、幼児のいる場所に戻る。


「坊や、どうしたの~?」


 竹内がしゃがんで幼児と目線を合わせながら、優しい声色で話し掛ける。


「……おばさん、だぁれ?」

「…………お姉さん、よ」


 言葉に確かな圧を感じる。


「……うん」


 幼児もその圧を感じ取ったのだろう。

 素直に頷いた。


 そして圧に当てられたからだろうか、目に溜まっていた涙は引っ込んでいた。


(結果オーライ……とは言えないよなぁ……)


 つい一言、竹内に苦言をていする。


「竹内さん……大人げないですよ……。ちっちゃい子を無闇に怖がらせて、どうするんですか」

「こういうのは譲れないものなのよ。……とりあえず、この子は店員として私が責任を持つから、星崎くんは買い物を続けてちょうだい」


 一瞬このまま竹内に任せていいのか、と考えた。

 だが、そもそも店の中で発生した迷子事案なわけだし、『迷子の幼児の保護』という目的は達成できたので、これ以上自分が首を突っ込むのもよくないだろう。


「わかりました。お願いしますね」

「うん、任せないっ! これでも二児の母なんだからね」

「ははっ、それでは」


 陽介はその場を離れて、買い物を再開する。


 麦茶のティーバッグをカゴに入れ、お菓子のコーナーを通った時、若い女性がキョロキョロと辺りを見回していた。


(ん~? なんか、やけに焦ってるような……? もしかして……)


 あの幼児の母親だろうか、という考えが頭をよぎる。


(声を掛けてみるか……)


 知らない人に話し掛けることに少し抵抗があった。

 だが涙を浮かべた幼児の顔を思い出すとそんなことも言っていられない。


 意を決して、陽介はキョロキョロとしている若い女性に声を掛ける。


「あの、すみません」

「はい? ……なんでしょうか?」


 少し警戒されている気がするが、もう話し掛けてしまったし気にするだけ無駄だ。

 そのまま本題に切り込む。


「もしかして、お子さんが迷子ですか?」

「っ!? そ、そうなんです……どうして、それを」

「いや、なんかやけにキョロキョロしてましたし……。それにさっき、一人で泣きそうになってる幼児を店員さんが保護しているところを見かけたので」

「店員さんが保護してくれたんですかっ……! はぁぁ、よかったぁ……」

「俺が見た時は、あっちの野菜のコーナーにいましたよ。……とりあえず早く行ってみましょう」


 若い女性を先導し、竹内と幼児がいた場所まで戻る。

 幸い、二人はまだその場にいた。


 幼児を見た、若い女性は――


「たっくんっ……!」


 幼児の名前を呼びながら早足で二人の元に向かう。

 女性の声を聞いた幼児は、パッとそちらを見た。


「ママぁ……」


 竹内の側から離れて、女性の元にトテトテと駆け寄る。


「星崎くん、あのお母さんと知り合いだったの?」

「いえ、知らん人ですよ? ただ、お菓子コーナーで慌てながらキョロキョロしてたんで、もしかして、って思って話し掛けてみたんですよ」

「あら、それは名推理ね。なんにしてもすぐにお母さんが見つかってよかったわ」

「そうっすね、泣きそうな幼児って心臓に悪いですし」


 ちょっとしたアクシデントはあったものの、無事に食材も買えた。

 去り際に幼児の母親にお礼を言ってもらい、幼児も笑顔で手を振ってくれて、陽介はいい気分でアパートに帰ったのだった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 夕食に餃子を食べて、陽介は食休みをする。


(今日もいい感じに作れたな。今度は合い挽き肉じゃなくて牛ミンチで作ってみようかな)


 自炊の良さは、自分好みの味に作れることだろう。

 とはいえ、そのためには調理技術が必須なわけだが。


(さすがはゲームシステムが通用する世界だよな。投下した時間の分、きっちりと成長できるんだから。この世界はゲーマーからしたら、やりがいしかないよなぁ)


 今の『やればやるだけ伸びていく』という成長具合には、前世の記憶があるだけに違和感も抱いている。


 だが陽介が今、生きている場所はそんな世界である。

 なので大学進学や就職などの将来のことを考えると、できるだけステータスを上げておくことが今後の生きやすさに繋がると思っていた。


(ゲームだった時よりも細かくスケジューリングできるし、今はとにかく三年間の学園生活の中でしっかりと自分を育てよう。あとは四季のステータス上げも……それとなく誘導することは続けていこう)


 長期的な目標と、しばらくの間やることを改めて確認していると、信司から『今、時間ある? よければまた一緒に一狩りいかない?』とメッセージが届いた。


(まぁ、今日やりたいことは全部できたし友人付き合いは大切にしたい。それに息抜きも大事なことだよな)


 陽介はすぐに『OK!』と返信する。

 すると『ありがとう! 今日は五十嵐くんもいるんだけど大丈夫かな?』とメッセージがきた。


『全然、大丈夫だ!』


 速攻で了承の返事をする。


(体育祭の時もカラッとした態度だったし、五十嵐はいい奴っぽいからなっ。そんなクラスメイトと絡めるんだから、こっちとしてはウェルカムだよな)


 その後、信司が作ったボイチャグループに招待された。

 陽介と信司、そして五十嵐の三人がボイチャグループに集合する。


「よろしく~」

信司:『こちらこそ、よろしく』

五十嵐:『よろしくなっ。星崎とゲームするのは始めてだし、楽しみだ』

「だな。俺も五十嵐とも遊べるのワクワクしてるわ」


 陽介たちはボイチャで通話しながら、大型モンスターを狩っていく。


「やっぱり、一人より二人。二人より三人の方が狩りが安定するな」

五十嵐:『ああ、そうだな。ソロじゃ俺には狩れないモンスターだった』

「そう考えると、一番火力出して安定してる四季はすげぇよな」

信司:『いや、まぁ……このゲームのシリーズは昔からやってたから、慣れてるっていうのはあるかも』


 照れた声色の信司。

 彼の言葉に陽介はピンッとくるものがあった。


(なるほど……ゲームのプレイスキルも投下した時間の分、成長してるってことか)


五十嵐:『好きなものを継続するからこそ、なんだろうな』

「あ~なるほど。っていうか好きじゃないと、なかなか続けるのは難しいよなぁ」


(四季は勉強や運動がそこまで好きじゃなさそうだし……もしかしたらステータスの伸びも好き嫌い、興味関心の度合いが関係してそうな気がしてきたぞ?)


 思わぬ考察材料を手に入れた。

 確かに陽介はステータスが上がっていくのがわかるから、勉強もジョギングも筋トレも苦ではなく、むしろ楽しい。


 料理もスキルが上がっていくのがわかるから楽しんでできている。

 逆に、ファッションセンスはまだ『楽しい』という感覚がない。


(俺自身がファッションにもっと興味を持てば、変わっていくかもしれないな……その辺は今後の検証課題にしておこう)


 そんなことを考えていると、信司が次のクエストの音頭を取る。


信司:『とりあえず今度は五十嵐くんの装備品の素材狩りに行こうよ』

「おう、了解っ」

五十嵐:『手伝ってもらってすまんな』

「気にすんなよ。さっきのクエストは俺と四季の装備品の素材狩りだったし」

信司:『そうそう。またこうして一緒に狩りに行くかもしれないしさ』

「四季主導でメンツを集めたチームだな」

五十嵐:『はは、確かに。俺は星崎のID、知らないしな』

「そうだった。五十嵐さえよければ、ID交換しないか?」

五十嵐:『もちろんいいぞ』

信司:『それじゃあ、僕から二人にそれぞれのID送っておこうか?』

「おう、よろしく頼むわ」


 ピロンッと通知音が鳴り、信司からメッセージを受信する。

 こうして陽介は五十嵐とIDを交換した。ついでにゲーム内でもフレンドになった。


信司:『よし、それじゃあクエストに出発しよ~』


 それからも三人は和気あいあいとモンスターを狩って素材を集めていくのだった。


「今日はこの辺にしておくか」

五十嵐:『そうだな。明日も学園あるしな』

信司:『う~ん、残念……。でもしょうがないね』

「また三人で狩りに行けばいいし、信司判断でメンツを増やしてもいいんだぞ?」

信司:『そうだね!』

五十嵐:『おう、そんじゃな~!』

「うぃっ、おやすみぃ」

信司:『おやすみ~』


 いい時間になり、狩りはお開きになった。


 しっかりと湯船に浸かって、風呂上がりにリビングで麦茶を飲みながらスマホをいじる。

 陽介が見ているのはメッセージアプリのホーム画面だ。


(いや~友達、増えたぜ! 誘ってくれた四季には感謝だなぁ~)


 メッセージアプリの友達欄にアカウントが一人増え、ホクホク顔の陽介であった。

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