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前世でハマった育成系エロゲのモブキャラに転生した ~主人公ハーレムを眺めたいので、自分を育てつつ主人公をサポートします~  作者: 秋之瀬まこと
第一章

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第18話 体育祭当日(午後の部・下、帰り道)

 波乱の借り物競争が終わり、演目も滞りなく進んでいく。

 男子全員参加の騎馬戦では、なんとなく狙われている気がしたが、ステータスをしっかりと上げていたのが功を奏したようで最後の方まで活躍できた。


(やっぱ常陸院さんと仲良くしてたから、嫉妬されてるのかなぁ……)


 内心でため息が漏れる。

 このままでは本当に咲月と信司以外で友達と呼べる存在ができないという事態になってしまう。


 元ゲーマーとしてはステータスが上がっていく感覚はやり甲斐があり楽しい。

 だが、一人の人間としては友達もそれなりに欲しいと思ってしまうのだ。


(まぁ、みんながみんな、嫉妬の感情を向けてくるとは限らないし……常陸院さん絡みで嫉妬してこない人とじっくりと関係を育んでいけばいいよな……)


 関係ないのに嫉妬を向けてくる人間よりも、ずっといい友人関係を結べるだろう。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 そして体育祭の大トリである学年別クラス代表リレーが始まった。

 陽介はアンカーの一つ前、四番走者だ。

 アンカーは陸上部所属の生徒なので、安心して走れる。


「よろしくな~」

「おう、星崎も頼むぜ!」


 アンカーの五十嵐はカラッとした笑顔を浮かべた。


 午後、嫉妬の視線を感じていた陽介は、五十嵐の普通の態度に嬉しくなる。

 五十嵐と陽介の周りにA組の他の代表リレーの走者も集まってきて、並んでグラウンドに入場するのだった。




 パンッと乾いたピストルの音がグラウンドに響き、第一走者が走り出す。

 第一走者、第二走者は上位争いで抜きつ抜かれつの展開を繰り返していて、応援席は大いに盛り上がっていた。

 そして第三走者にバトンが渡る。


 陽介たちA組の第三走者も決して遅いわけではない。

 だが、C組とE、G組の第三走者が陸上部員だったようで、順位が一気に五位まで落ちてしまった。


(ありゃりゃ……。やっぱ毎日、部活で走り込んで速さを求めてる奴らは速度感が全然違うよなぁ……)


 まずフォームが整っている。見るからに速いことがわかる。

 それでもA組の第三走者もこれ以上は離されまいと、根性で食らいついていた。


(よしっ、俺だって根性見せてやるぜっ!)


 クラスメイトの走りに感化されてテンションが上がった陽介が位置に着く。


「星崎っ、頼んだっ……」

「おぅっ!」


 しっかりと練習通りにバトンを受け取り、陽介はグングンと速度を上げた。

 一人、また一人と抜き、三位まで浮上する。


(せめてあと一人は抜いておきたいっ……! たとえ抜けなくても、できるだけ距離を縮めるっ……!!)


 地面を蹴り、E組の走者を追いかける。

 現在一位のD組との距離も縮まっていく。


 そして位置に着いたアンカーの五十嵐の背中が見えた。


「あとは頼んだっ……!!」


 結局、二位と僅差の三位でバトンをアンカーに渡して、陽介は今出せる全力で走りきったのだった。


「はぁっ、はっ、はぁっ……! はぁぁっ……きっつぅぅっ……!」


 膝に手を置いて荒い呼吸を繰り返しながら、五十嵐を見る。

 すでにE組を抜き、D組のアンカーに迫っていた。


 A組の応援席は大盛り上がりで五十嵐に声援を送っていた。


(熱いなっ……! こういう空気がいいんだよなっ……!!)


 陽介も五十嵐を応援したいと思っているが、まだ呼吸が整わず肩で息をする。


 五十嵐はとうとうD組のアンカーを捉え、そのまま抜き去った。

 その瞬間、陽介は思わず小さくガッツポーズをした。


 こうしてA組は学年優勝を飾ったのだった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 閉会式を終え、教室に戻ってきたクラスの面々の大半は、自分の席でお疲れモードになっていた。

 陽介は隣の席の信司と喋って時間を潰す。


「お互いに、借り物競争は災難だったな……。あの確認係の奴、マジで悪ノリが過ぎるよなぁ……」

「ああ、うん……恥ずかしかったよねぇ……。なんでも二年生の先輩らしいよ?」

「うへぇ……じゃあ下手したら来年も確認係やってる可能性もあるのか……」

「うん、そうなるね……。ちょっと来年は出る種目を考えないとダメかなぁ……」

「障害物競走辺りでいいんじゃないか?」

「確かによさそうかも。来年は玉入れと障害物競走に立候補しようかな」

「いいんじゃないか? ……俺はどうしようかな。玉入れは楽しかったから来年もやりたいな」

「いやいや、星崎くんは五十嵐くんと並んで代表リレーの立役者だったじゃない」

「いや~あれは燃えたぜ。ガチで全力で走ったからな。……お陰で呼吸を整えるのにすげぇ時間がかかったけどさ」


 そんな感じで陽介と信司が気の早い話をしていると、教室の前の扉が開いて、担任の高梨先生が教室に入ってきた。


「はーい。皆、席に……ついてますね。皆、本当にお疲れ様。皆が頑張ったから私たちA組は学年優勝を果たしました! 今日は疲れてると思うから、ホームルームも手短に終わらせましょうね」


 ねぎらいの言葉と、明日以降の連絡事項が伝えられる。

 そして本当に手短に帰りのHRは終了して解散となった。


「……皆、お疲れだねぇ」

「そうだな。このあと打ち上げやろう! とか言われても無理だよな~」

「無理だねぇ……」


 いくら若くて体力が有り余っている高校生とはいえど、一日がかりの体育祭の疲労はかなりのもので、誰一人として打ち上げをやろうとは言い出さなかった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ゾロゾロと教室から出ていくクラスメイトたち。

 信司も春山葉瑠香と夏川奈々に連れられて、一足先に帰っていった。

 教室にはもうほとんど生徒は残っていない。


(ホント、疲れた……。俺もとっとと帰ろ……)


 陽介も早く帰ろうと立ち上がった。

 その時、咲月が声を掛けてくる。


「星崎さん、お疲れ様でした」

「うん、ありがと~。常陸院さんもお疲れ様」


 何か用件があるのだろうか、と思っていると――


「その……よろしければウチの車で一緒に帰りませんか?」


 小声でそんなお誘いを受ける。


(めっちゃ疲れてるから、ものすっごくありがたいけど、俺……汗臭くないかな? 大丈夫だよな……?)


 一応、ロッカールームで着替えた時にデオドラントスプレーは吹きかけたし、汗拭きシートも使ったのだが、車内という密室空間だと、どうしても臭わないか心配になってしまう。


 陽介がアレコレ考えていると、心配そうに眉を八の字にした咲月が上目遣いに見つめてくる。


「あの……ご迷惑だったでしょうか?」

「い、いやっ……全然っ! 迷惑なんてことはないから。ただ……」

「ただ……?」


 可愛らしく小首を傾げる咲月。

 格好が悪いと思いつつも、陽介は考えていたことを素直に口にする。


「今日はいっぱい汗かいたからさ……臭わないかな、って思って……」

「ふふっ、大丈夫ですよ。……この距離でも全く気にならないですから」


 一歩近づいた咲月が、ニッコリと笑みを浮かべる。

 これで断る理由はなくなった。


「……それじゃあ、ご一緒させてもらおうかな」

「はいっ!」


 嬉しそうに笑顔を浮かべる咲月と連れ立って陽介は学園を出るのであった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「あ、瀬戸さん。今日はお世話になります」

「星崎様、安全運転でお送りいたしますので、ごゆっくりお寛ぎください」

「あはは……ありがとうございます」


 校門に停まっている高級セダンに咲月に続いて乗り込んで執事の瀬戸に挨拶する。


「それでは瀬戸、星崎さんのお家に寄ってください」

「はい、お嬢様」

(……あれ? 俺の住んでるアパートの住所、教えたっけ? ん? 色々と調べられてるってことか? ま、まぁ、気にしたらダメなんだろうなぁ……)


 わざわざ虎の尾を踏む必要はないだろう。

 そう判断して陽介は沈黙を選んだ。


 瀬戸が運転する高級セダンは、スッーと滑らかに走り出す。


「ふぅぅっ……」


 座り心地のいい革張りの座席に深く腰掛けると、思わずため息が漏れる。

 陽介が思っていた以上に心身ともに疲労していたようだ。


 そんな陽介に――


「ふふっ、お疲れ様でした。騎馬戦もクラス対抗リレーも大活躍されていましたものね。かっこよかったですよ」

「ど、どうも……真っ直ぐ褒められると気恥ずかしいぞ……」


 ストレートな言葉を伝える咲月。

 陽介は頬をポリポリと掻く。


「特に対抗リレーでは見事にアンカーにバトンを渡した気迫が凄かったです」

「あ~……あれは俺の前の走者が根性見せて食らいついてくれたから、『俺も根性出すぜっ!』って気合が入ったんだよな」

「くすっ。頑張っているかたを見ると、こちらも頑張ろうと思えますよね」

「そうそう。なんていうか、体育祭の熱さを感じたんだよな」

「熱さ、といえば騎馬戦もかなり白熱していましたね。星崎さんも凄く活躍されていましたし」

「あ、はは……まあ、なんだか妙に狙われたからなぁ……」


 さすがに借り物競争で咲月と手を繋いで走ったことで、男子たちから妬まれて集中的に狙われた、なんて伝えられない。

 その代わりに――


「あ~……常陸院さんの借り物競争で俺が借りものになった時は驚いたけどさ、『一番仲のいい友達』っていうお題で俺を選んでくれのは素直に嬉しかったぞ。それに一位でゴールできたし」

「星崎さんには感謝ですよ。星崎さんがいなければ、誰を選べばいいかとても悩みましたから……」


 少し咲月の声のトーンが落ちてしまった。


(まぁ……常陸院さんって、周りに対して一定の距離感を保つスタンスでいるっぽいもんなぁ……『一番』を明言するのって難しそうだ)


 この話題はあまり触れない方がいいだろう。

 なので陽介はさっさと話題を変えた。


「そういえば、チアガールの格好も似合ってたな。ダンスもキレがあって凄く決まってたし。ポーズを決めるところで手足がしっかりと伸びてて、動きてるところとのメリハリがしっかりとしてたよな」

「うぅっ……あの服装は恥ずかしかったですよぉ……」


 咲月が羞恥に耳の先を染めて、小さく身悶える。

 するとシートベルトが胸の谷間に食い込み、豊満な二つの山が強調された。


(うっ……見ちゃダメだっ……! 女子は男のよこしまな視線に敏感だって言うし……)


 理性を動員して必死に誘惑を振り切ろうとする。

 それでも煩悩に負け、チラッ……と視線が引き寄せられてしまう。

 そんな陽介の前で咲月は無防備に笑みを浮かべた。


「でも、ダンスを褒めていただけて凄く嬉しいです」

「あ、ああ……もしかして習い事で舞踊とかもやってたり?」

「はい、中学校に入学するまで日本舞踊を習っていました」


 幼い咲月が着物を着て踊っている光景を空想する。


(かなり絵になるんだろうな……)


 もう少し色々と聞いてみたくなって陽介は話題を向ける。


「へ~他にも色々と習い事やってたりするの?」

「そうですね。幼い頃はスイミングに体操、そろばん、ピアノ、華道、茶道辺りでしょうか? 小学生の高学年になってから体操とそろばんは辞めてしまいました。今はどの習い事も月に一度ほどですね」

「おお~常陸院さんは色々なことを経験してるんだなぁ……」

「経験、ですか?」

「うん。習い事って経験値稼ぎにもってこいだなぁ、なんてゲーム的思考(ゲーミフィケーション)すぎるかな?」

「いえ、そんなことはありませんよ。星崎さんに言われて、確かに経験をたくさんできたのだな、と納得してしまいました」

「ははっ、そんな大層なもんじゃないと思うけどな。思ったことを口にしてるだけだしさ」


 陽介がおどけて言うと、咲月はクスッと上品に笑みを浮かべたのだった。




 不意に車内に沈黙が訪れた。

 だがそれは嫌なものではなく、心地いいと陽介は感じていた。


(沈黙が苦にならない相手っていうのは貴重だって前世の上司が言ってたっけ)


 揺れをほぼ感じない車内でそんなことを思い出す。


 そろそろ陽介のアパートに着きそうになった頃、咲月が口を開く。


「そういえば、両親が星崎さんを夕食にご招待していいと言ってくれているのですが、どうでしょうか?」

「ふぇっ……!? ご、ご両親がっ……!?」


 突然のお誘いに動揺が隠せない陽介。


「はい。私としては是非、お越しいただけると嬉しいです」

「お、おぉ……まさかの夕食にご招待とは……」

(別に断る理由はないんだよなぁ……でも異性の同級生の両親と会うって、ハードル高くね?)


 ニコニコと陽介に笑顔を向けている咲月。

 断られるとは思っていなさそうだ。


(うん。断る選択肢はないっぽな)

「わかった。日程はまた後日決める感じで大丈夫か?」

「はいっ。星崎さんが来てくれるの楽しみですっ」


 話がまとまった時に丁度、アパートの前に黒塗りの高級セダンが到着した。


(瀬戸さんが到着時間をコントロールしてたのかな? さすがは執事だぜ)


「それじゃあ、常陸院さん、送ってくれてありがとな。瀬戸さんもありがとうございました」

「はい、また学園でお会いしましょう」

「うぃ。またな~」


 お礼を言って、車から降りる陽介。

 車が見えなくなるまで見送ってから部屋に帰宅した。


「はぁぁっ……つっかれたぁ……!」


 体育祭で肉体的にも疲れたし、嫉妬の視線で精神的にも微妙に疲れた。

 そして最後の最後に咲月とそのご両親との食事会の約束というイベント発生にドッと精神的に疲れた。


 スクールバッグを置き、陽介は床にへたり込む。


(弁当作る時に夕飯ゆうめし用におかずを多めに作っておいた朝の俺、グッジョブだぜ……)


 さすがに今から料理する気力はもうなかった。


 作り置いておいたおかずを温めて、手早く夕食を済ませる。

 そして風呂に入って、ベッドに倒れ込む。

 数分後にはぐっすりと眠りに落ちていたのだった。

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