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前世でハマった育成系エロゲのモブキャラに転生した ~主人公ハーレムを眺めたいので、自分を育てつつ主人公をサポートします~  作者: 秋之瀬まこと
第一章

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第16話 体育祭の種目決めと体育祭当日(午前の部・お昼休み)

 土曜日は咲月と映画に行き、日曜日は叔父の喫茶店でバイトに精を出した。

 そして再び学園生活が始まる。


 朝のホームルーム前。隣の席の信司が話し掛けてきた。

 話題はこの間も一緒にプレイしたモンスターを一狩りしに行くゲームだ。


(う~ん……この感じだとちゃんと勉強してなさそうなんだよなぁ……)


 ハーレムルートうんぬんの前に、そもそも勉強はしておいた方がいいと陽介は考えていた。


(ゲームなら学園生活が終われば、エンディングを迎えるけど……ここはゲームシステムが通用するだけで現実世界だ。学園卒業後は俺も、四季こいつも大学に進学したり就職したりと人生は続いていくわけだしなぁ……)


 つらつらとそんなことを考えていると、


「? 星崎くん、どうしたの? 難しい顔してるけど」


 信司が首を傾げながら陽介を見ていた。


「あ、いや、すまん……もうそろそろ体育祭だなぁ、って思い出してさ」


 本当のことを言うわけにはいかないので、それっぽい感じの話題で誤魔化す。


「あぁ、そうだねぇ……。僕はあまり運動が得意じゃないから、ちょっと憂鬱なんだよねぇ……」


 浮かない表情になる信司。


「う~ん、この間行ったバッティングセンターの動きを見てると、運動が苦手って感じはしなかったけどな? 放課後とかジョギングしてみたらどうだ? 体力はつくと思うぞ」

「ジョギングかぁ……」

「最初は十分くらいでいいんだよ」


 渋い顔をする信司に、陽介は心理的ハードルを下げる提案をしてみる。


(まずはやる気を出させるところから、かな? とはいえなぁ……)


 他人のやる気をコントロールすることはできない。

 それにそもそも信司のハーレムルート開放はあくまでも陽介の希望であって、それを信司に無理やり押し付けるわけにもいかない。

 ただハーレムルートを生で見たいのが本音なので、隙あらばステータス上げに誘導するつもりではいるが。


(難しいもんだなぁ……)


 陽介は内心でそっと息を漏らしたのだった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 その日の六限のLHR(ロングホームルーム)は体育祭の出場種目決めの時間に充てられることになった。


 クラス代表リレーは、体育の授業で測定した100m走のタイムを元に決めることになった。


 その結果、陽介はクラスで二番目に速いタイムだったので、クラス代表リレーに参加することになってしまった。

 それ以外は、クラス全員参加の100m走、大縄跳び。男子全員参加の騎馬戦。そして玉入れに参加する。


 ちなみに信司は全員参加以外の競技は玉入れと借り物競争に。

 咲月は女子全員参加のダンスと、障害物競走と借り物競争に参加する。


(ダンスが女子全員ってところがエロゲ世界っぽいよなぁ。実際、体育祭のイベントCGもあったもんな)


 思いの外、スムーズに出場種目が決まっていくクラスの様子を眺めながら、陽介は前世の記憶を思い出していた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 大縄跳びや騎馬戦の練習に青春を感じていると、あっという間に体育祭当日になる。


 ジャージに着替えて、教室で待機するクラスメイトたち。

 その大半はテンションが高めだった。


「適度に曇っててよかったな」


 隣の席で見るからにテンションが低い信司に話し掛ける。


「……そうだね。うぅ~憂鬱だよぉ……」

「もう当日なんだから腹をくくれって。大縄跳びだって一度も引っかかってなかったんだし、大丈夫だろ」

「う~ん……遊びで身体を動かすのは別にいいんだけど、競技とか競うのとかは本当に前から苦手でさぁ……。昔から本番になると緊張でガチガチになって、上手くできないことが多かったんだよねぇ……」

「あ~……なんか、そんな感じするかもな」


 よく言えば優しい。悪く言うとヘタレ。

 まさに古きよきエロゲ主人公だ、と陽介は心の中で信司をそう評した。


 ただ、以前ゲーセンに行った時に格ゲーで陽介をボコボコにしたのは、一体なんだったんだろうか、とも思っていた。


「……まぁ、お楽しみもあるからいいじゃないか」

「お楽しみって?」


 首を傾げる信司。

 そんな彼にグッと顔を近づけて、小声で囁く。


「ほら、お前の幼馴染がダンス踊ってるとこが見れるんだぞ?」

「うっ……別に僕はそういうのは……」


 信司がモゴモゴと言葉を濁す。

 だが、顔には『見たいっ!』としっかりと書いてあった。


(素直に本人に言えば、二人っきりの時なら見せてくれると思うけどな?)


 そんなことを考えていると、担任の高梨先生が教室に入ってきて、体育祭の諸注意を説明し始める。


 話が終わると、陽介たちA組の面々は列を作ってゾロゾロとグラウンドに移動を始めたのだった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 午前中の個人100m走。

 陽介はブッチギリで一位を取り、クラスが湧いた。


「星崎、すげぇな! 他のクラスのやつらも、結構速い奴らが揃ってたのに」

「これはクラス対抗リレーも期待できそうだな」


 等々、クラスメイトに声を掛けられる。


 他のクラス対抗リレーのメンバーも順当に一位を取り、さらに対抗リレーへの期待が高まっていく。


 その後、玉入れでは目立った活躍はできなかったが、そこそこ玉を入れてクラスに貢献した。

 陽介の隣で玉を投げていた信司も、朝の不安げな表情はなんだったのか? というくらい、しっかりとカゴに玉を入れていた。


「四季、お前……普通に活躍してんじゃん」

「いやぁ、玉入れって注目されないじゃん? だから、あんまり緊張しなかったみたいだねぇ……」

「注目されるのに弱いのか……。まあ、次の大縄跳びも個人が注目されることなんてないから、この調子で午前中は頑張っていこうぜ」

「うん、できるだけ頑張るよ……」


 少しはテンションが上向きになってきた信司の肩を叩いて、クラスの応援席に戻る陽介だった。


 そして、クラス対抗の大縄跳びは惜しくも学年で二位だった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 午前の部が終了し、お昼休み。クラスメイトたちと喋りながら教室に戻る。


 叔父に教えてもらったレシピで弁当を作ってきた陽介。

 机に弁当を広げていると、隣の信司が幼馴染の春山葉瑠香(はるか)から弁当を受け取っていた。


 その光景を生暖かい目で見ていると、


「ほ、星崎くんのお弁当、豪華だねっ……! 誰かに作ってもらったの?」


 視線に気づいた信司が照れからか、早口で陽介の弁当を話題にしようする。


「あ、これ? 俺のお手製だぞ」

「え? ま、まじかぁ、凄いねぇ……」

「お前の弁当だって丁寧に作ってあるのが見てるだけでもわかるぞ?」

「僕は作ってもらうだけだからさぁ……星崎くんみたいに自分では作れないから、葉瑠香にはいつも感謝してるし、星崎くんのことも凄いって思うよ」

「お、おう……真っ直ぐ褒められると照れるな……」


 陽介が思わぬカウンターを食らっていると、彼らの席の横を通りかかった咲月が陽介に声を掛けてきた。


「そのお弁当、星崎さんが作られたのですか?」

「えっ? あ、うん。そうだな」


 今まで教室で話し掛けられたことはなかったのでビックリしつつも頷く。


 ただ咲月の声をトーンは二人っきりの時とは違っていて、教室でクラスメイトに囲まれている時の落ち着いたものだった。


「え? 常陸院さんが自分から男子に話し掛けた?」

「常陸院さんと星崎くんが話してるところなんて、見たことないよね?」

「あの二人って接点あったっけ?」


 それでも『完璧お嬢様』が自分から男子生徒に話し掛けたことにクラスメイトたちはざわめく。

 咲月はそんな教室内の空気に気づいていないようで、熱心に陽介が作った弁当を見つめている。


「彩りも綺麗で、とても美味しそうですね」

「あ、はは……ありがとう。バイト先のマスターに教えてもらったレシピなんだ」


 主食はクラブハウスサンド。おかずはハンバーグにポテトサラダ、チーズを入れた洋風卵焼き。そして、ずっと練習を続けているナポリタンスパゲティ。


(ホントはガッツリと、茶色だらけの弁当にしてもよかったんだけどな)


 ちょっと凝ったものが作りたくなって、昨日の夜から色々と仕込みをしてしまった。


「……どれか食べるか?」


 咲月があまりにもジッと弁当のおかずを見ているので、その圧に負けた陽介はおずおずと訊ねる。


「いいのですか? それでしたら、私のお弁当からおかずを替わりに取ってください。……星崎さんと違って、私が作ったわけではありませんが」


『完璧お嬢様』に弁当のおかずの交換をお願いされた陽介に、教室中から視線が突き刺さる。

 特に男子からの羨望と嫉妬の視線が痛い。

 逆に女子からは意外そうな顔で見られた。


 ニコニコと外行きの笑顔を浮かべ、自席からお弁当箱を持ってくる咲月。

 彼女の放つ上位者的なオーラのおかげか、陽介に便乗して弁当の交換を申し出るような生徒はいなかった。


 そして、陽介の隣の席の男子生徒《信司》は――


「あ、星崎くん、僕は葉瑠香と食べるから……常陸院さんはこの席、使ってよ」


 弁当を持って、脱兎のごとく席を離れていった。


「ありがとうございます、四季さん。それでは星崎さん、お好きなものを食べてくださいね」


 陽介の机に高そうな漆塗りの二段弁当箱が置かれる。


「うん、ありがとう……常陸院さんもどうぞ」


 おかずの入っている弁当箱を咲月の方にズラしつつ、彼女の弁当を覗き込む。


(おおっ……ローストビーフが入ってるぞ……!)


 陽介も食べ盛りな男子だ。肉には目がない。


「じゃあ、このローストビーフをもらってもいいか?」

「はい、どうぞ。私は……卵焼きをいただきますね」

「どぞどぞ……それじゃあ、早速……」


 咲月の弁当から自分の箸で肉を摘み、見るからに美味しそうなローストビーフを頬張った。


「うまっ……!!」


 噛んだ瞬間にジュワリッ……と口の中に肉の旨味が広がり、思わず声が漏れてしまった。


「ふふっ、お口に合ったみたいでよかったです」


 幸せそうにローストビーフを噛み締める陽介を見て微笑みながら、咲月もチーズ入り卵焼きを上品に口に運ぶ。


「ん~チーズの塩気が丁度いい塩梅ですね。それに卵もふんわりとしていて凄く美味しいです」


 目尻を下げて卵焼きを味わう咲月。

 彼女から高評価をもらえて、陽介は内心でホッとする。


 そのまま陽介と咲月は二人で話しながら食事を続けた。


 互いに自分の箸で相手の弁当箱からおかずを取る。

 陽介も咲月も無意識でやっていた行動だった。


 陽介がクラブハウスサンドを頬張りながら、チラッと信司の方を見ると、原作ヒロインズの中に信司が混じって昼食を取っていた。


(おおっ……!? とうとう四季が秋海綾子と冬谷(ふゆや)文華とも接点を持ったぞ!)


 ゲームだと、ある程度ステータスを上げると接点が生まれる仕組みだったが、この世界だとこういうイレギュラーも発生するのだろう。


(まだハーレムではないけど、あの五人が一緒にいるのを見れるのはいいもんだな)


 そんなことを考えていると、咲月が陽介の視線の先に気がつく。


「星崎さん? どうかしましたか?」

「ん、いや……四季が席を譲ってくれたから、あとでジュースでも奢ろうかなって考えてた」

「ふふっ、星崎さんは律儀なのですね」

「そんなことはないと思うけどなぁ? よくしてくれたんだからお礼くらいはするのが普通だろう」

(実際、席を譲ってくれたお陰で美味しいおかずが食べられたからな)


 あっけらかんと思ったことを口にする。

 陽介のそんな言葉を聞いて、咲月は一瞬目を見開き――


「そういうことをサラッと口にできるところ、凄くいいと思いますよ」


 花の咲いたような笑みを浮かべたのだった。

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