第12話 一学期中間テスト
GWが終わり、学園生活が再開した。
陽介の隣の席では、信司が少しダルそうにしている。
「四季、どうしたよ?」
とりあえず声を掛ける陽介。
「いやぁ……連休中ってさ、ついついオンラインゲームやって夜ふかししちゃうんだよねぇ……。だからちょっと寝不足気味なんだ……でもそのお陰で新しい装備も作れたんだけどさぁ……ふぁぁ……」
実に信司らしい予想通りの回答に、陽介は肩をすくめる。
「……再来週には中間テスト始まるぞ? 大丈夫か……?」
「うぅっ……嫌なこと、思い出させないよぉ……」
信司が情けない声を出しつつ、ガックリと肩を落とす。
(頑張れよ~。成績悪いとハーレムルートに入れないぞ~)
陽介は内心でエールを送るのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
昼休みの図書室。
今日もまた、陽介は咲月とおすすめの小説について話していた。
一通り互いに最近気になっている小説の話をし終わると、咲月が別の話題を陽介に振る。
「再来週から中間テストですね」
「そうだな~。常陸院さんは入試首席だし、余裕ありそうだな」
「いえいえ、そんなことはありませんよ。毎日、コツコツ自宅学習しています。そういう星崎さんも参考書とか買っていましたし、自宅で勉強されているのでは?」
「ああ、うん。学園から帰って夕飯作るまでの時間はだいたい毎日、予習復習と参考書はやってるかな」
「ふふっ、なら星崎さんも余裕がありそうですね」
「う~ん……どうだろうな? 高校初のテストだし、受けてみないことには勉強時間が足りてるのかわかんないよなぁ……」
中間考査に向けての勉強状況は二人ともに良好なようだ。
「まぁ、お互いに頑張ろうぜ」
「はいっ、頑張りましょうっ」
「でも、早く中間テスト終わって欲しいよな~」
「? テストが嫌というわけではないのですよね? でしたら……テストが終わったら、なにかあるのですか?」
コテン……と小首を傾げる咲月。
サラサラの美しく長い銀髪がなびいて、蛍光灯の光を反射してキラキラと輝く。
絵画のような光景に目を奪われそうになりつつ、陽介は事情を説明する。
「……叔父さんが喫茶店のオーナーやってるんだけど、学園に慣れたらその店でバイトする約束してるんだ。だから中間が終わったらバイトできるんだよ」
「アルバイトですか……」
「欲しい小説とか漫画とかも結構あるしさ、小遣いだけじゃなくてバイト代もあれば今以上に色々な本読めるし。それに筋トレグッズとかも欲しいんだよなぁ」
「くすっ、欲しいものが多いのですね」
「まぁね~。あと叔父さんの料理美味しいから賄いが楽しみっていうのもある」
「それはいいですね。憂いなくアルバイトを始めるためにも、気が抜けませんね」
「それなぁ~」
会話が一区切りついたところで、丁度よく予鈴が鳴る。
「それではそろそろ教室に戻りましょうか」
「うぃ。俺は自販機寄ってから教室戻るわ」
「授業には遅刻してはダメですよ」
「うぃ~」
図書室の前で咲月と別れて、陽介は自販機に向かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
(うん、かなり手応えがあったな)
中間考査、最終日。
最後の科目の問題を全て解き終わって見直しをしながら、陽介は既に達成感を抱いていた。
(前世ではほぼ一夜漬けで平均点辺りをウロウロしてたのになぁ……。やっぱ少しずつでも毎日継続するのが正義だわ)
ゲーム『フォーシーズンズ』に酷似している世界に転生してからの陽介は、ステータス上げに勤しむことがもはや趣味みたいなものになっていた。
なので継続は全く苦痛ではなかった。
試験時間が余っていたので二度ほど見直しをして、静かに息を吐く。
(答案用紙が返ってくるのが楽しみだな。これで心置きなくバイトも始められるぜ)
陽介は椅子の背もたれに身体を預けて、リラックスした状態で終了の合図を待つのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
帰る準備を終えた陽介は、真っ白に燃え尽きて机に突っ伏している信司の肩をポンッと軽く叩いて、足取り軽く教室を出る。
アパートに帰って昼食を食べたあと、叔父の星崎謙吾に電話を掛けた。
「あ、叔父さん? 今、大丈夫ですか?」
「ああ、陽介くん。うん、昼のピークも終わったし大丈夫だよ。それで何かあったのかい?」
ピークが終わったとは言え、叔父は仕事中だ。
なので陽介はさっさと用件を伝えることにする。
「今日で中間テストが終わったんで、そろそろ叔父さんの店でバイトさせてもらおうと思って電話しました」
「そうか、それなら土曜日の二時に店に来てくれるかな? そのまますぐにホールの仕事を教えるし、夕飯は賄いを食べていってくれればいいから」
「わかりました。服装とかはどうすればいいです?」
「う~ん、ウチは制服ないからなぁ……白いシャツと黒か茶色系のチノパンは持ってるかい? とりあえず、大人しめで清潔感があれば問題はないから」
「了解っす。どっちも持ってるから大丈夫だと思います」
「よし、それじゃあ土曜日、待ってるからね」
「はい、よろしくお願いします」
電話を切って、すぐにクローゼットを一応確認する。
(うん、ちゃんとあるな。……でもせっかくだしバイト用に一、二着買っておくのもいいかもしれない)
私服でバイトするのも何か違う感じがする。
それに飲食店のバイトだと服に色々と臭いもつきそうだ。
チラッと時計を見れば、二時半。
(よし、今から買いに行くか)
そう思い立って、陽介は低価格の服屋が入っているショッピングセンターに出掛ける準備をするのだった。




