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異世界警察官、姫暗殺未遂事件を捜査する  作者: sora


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第七話 聖女の墓地

 王都を出て二日。


 俺たちは、深い森の中にある「聖女の墓地」へ到着した。


 そこは不気味な場所だった。


 数百もの墓石。


 枯れた白い花。


 そして、森の中なのに風がない。


「ここに何があるんでしょう?」


 ミレイユが周囲を見回す。


「魔王軍がわざわざ俺たちを呼び出した場所だ」


 俺は慎重に歩く。


「何か重要なものがあるはずだ」


 レオンは剣に手をかけていた。


「気をつけろ」


「分かってる」


「違う」


 レオンが墓地の奥を見る。


「何者かに見られている」


 俺も気づいた。


 墓石の向こう。


 人影がある。


「誰だ!」


 俺が声を上げる。


 影は動かない。


 レオンが剣を抜き、近づく。


「……子供?」


 そこにいたのは、十歳ほどの少女だった。


 白い服。


 銀色の髪。


 そして首には聖女の紋章。


「あなたたちは……誰?」


 少女が俺たちを見る。


 ミレイユが警戒しながら答えた。


「私たちは王都警察です」


「警察……?」


 少女は首を傾げる。


「この世界にも警察があるんだね」


 俺は違和感を覚えた。


「君は誰だ?」


「私は――」


 少女が答えようとした瞬間。


 墓地の奥から悲鳴が響いた。


「助けて!」


 俺たちは一斉に走った。


 墓石の間に、一人の男が倒れている。


 胸には剣が刺さっていた。


「殺人事件……」


 ミレイユが青ざめる。


 俺は死体を調べる。


「触るな」


 レオンが止める。


「犯人が近くにいるかもしれない」


「だからこそ現場を保存する」


 俺はしゃがみ込んだ。


 傷口。


 血の量。


 倒れている位置。


 足跡。


「……おかしい」


「何が?」


「殺されたのに、血が少なすぎる」


 ミレイユが死体を見る。


「本当です」


「しかも傷口が綺麗すぎる」


 俺は剣を見る。


「これは殺人じゃない」


「では……?」


「死体を後から作ったんだ」


 レオンが驚く。


「偽装殺人?」


「ああ」


 俺は地面を見る。


 死体の周囲には足跡がない。


 つまり――


「この男はここで殺されていない」


 その瞬間。


 少女が呟いた。


「……知ってる」


「何?」


「この人は昨日、もう死んでた」


 俺は少女を見る。


「昨日?」


「うん」


「なぜ知っている?」


 少女は墓地の奥を指差した。


「あそこに埋められていたから」


 俺たちは急いで墓を掘った。


 すると――


 同じ男の死体が出てきた。


「……二体?」


 ミレイユが息を呑む。


 俺は二つの死体を見比べる。


 顔。


 服。


 傷。


 すべて同じ。


「これは……」


 レオンが呟く。


「魔法による複製か?」


「いや」


 俺は首を振った。


「もっと厄介だ」


 死体の指を調べる。


 爪の間に、黒い土が入っていた。


 そして二体とも――


「こいつらは双子だ」


「双子……?」


「兄弟を同じ人物に見せかけている」


 俺は立ち上がった。


「つまり、犯人は二人を使って殺人事件を偽装した」


 少女が俺を見る。


「すごいね」


「君は何者なんだ?」


 少女は笑った。


「私?」


 その瞬間。


 墓地全体に光が走った。


 墓石が次々と光り始める。


 少女の身体が浮かび上がる。


「私は、この墓地を守る聖女」


「聖女……?」


 ミレイユが驚く。


 少女は俺を見る。


「そして――あなたを待っていた」


 俺は銃を構えた。


「俺を?」


「そう」


 少女は微笑んだ。


「あなたの前世を知っているよ」


 俺の心臓が跳ねた。


「……何だと?」


「あなたは昔、この世界に来た」


「俺の魂が?」


「違う」


 少女は首を振った。


「あなた本人が来たの」


 俺は言葉を失った。


「そんな……」


「あなたは一度、この世界で魔王と戦った」


 少女の背後に巨大な幻影が現れる。


 そこには、若い頃の俺がいた。


 そして、その隣には――


 アリシア王女。


「……俺と王女?」


 ミレイユも驚いている。


 少女は続ける。


「あなたは魔王を封印した」


「なら、なぜ俺は日本に?」


「封印の代償」


 少女の表情が曇る。


「あなたは自分の記憶を失い、この世界から追い出された」


「……」


「そして、長い年月を経て――」


 少女は俺を指差した。


「もう一度、この世界へ戻ってきた」


 俺は頭を抱えた。


 日本での人生。


 刑事としての日々。


 それすらも――


 魔王との戦いの続きだったのか。


 その時。


 遠くから鐘の音が聞こえた。


 ――ゴーン。


 少女の顔色が変わる。


「まずい」


「何が?」


「魔王軍が来る」


 森の奥から、大勢の足音が響いた。


 レオンが剣を抜く。


「何人いる?」


「……百人以上」


 ミレイユが杖を構える。


 俺は墓地の入口を見る。


 黒い鎧の兵士たちが姿を現した。


 その中央には――


「ヴァルネア……!」


 第二話で逃げた魔王軍幹部。


 彼女が笑う。


「やっと見つけたぞ、聖女」


 少女の表情が凍る。


「……私を?」


「そう」


 ヴァルネアが手を掲げる。


「お前の魂があれば、魔王は完全に復活する」


 俺は少女の前に立った。


「だったら――」


 銃を構える。


「この事件も、俺が解決する」


 ヴァルネアが笑った。


「警察ごっこはここまでだ」


 百人を超える魔王軍が、一斉に剣を抜いた。


 聖女の墓地を舞台に――


 王都警察対魔王軍、最初の全面戦闘が始まった。

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