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異世界警察官、姫暗殺未遂事件を捜査する  作者: sora


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第四話 警察署襲撃

 俺は腰の拳銃に手を添えた。


 その時。


 ――カラン。


 遠くで何かが落ちる音がした。


「誰かいる」


 俺たちは音のした方向へ進んだ。


 そこにあったのは、倒れた警備兵だった。


「生きています!」


 ミレイユが駆け寄る。


「眠らされているだけです」


「魔法か?」


「おそらく睡眠魔法です」


 俺は周囲を見る。


 争った形跡はない。


 つまり犯人は、警察署の中へ簡単に侵入している。


「内部の人間が手引きした可能性が高い」


 俺が言った瞬間。


「その通りだ」


 背後から声がした。


 振り返る。


 そこに立っていたのは――


「局長……?」


 王都警察魔導犯罪捜査局の局長、グレンだった。


「黒崎君。こんなところで何をしている?」


「局長こそ」


「私は警察署の警備状況を確認していた」


 俺は局長の手を見る。


 黒い手袋。


 その手袋の甲に、見覚えのある紋章があった。


 逆さの王家の紋章。


 魔王軍の印。


「……局長」


「何だ?」


「その手袋を外してください」


 グレンの表情が変わった。


「なぜだ?」


「確認したいことがあります」


「断る」


 グレンが手を上げた。


 次の瞬間、警察署全体が赤く光った。


「魔法陣……!」


 ミレイユが叫ぶ。


 床に巨大な魔法陣が浮かび上がる。


「この警察署そのものが、魔王軍の魔法陣だったのか?」


「違う」


 グレンが笑う。


「警察署はただの器だ」


「器?」


「ここに集められた犯罪記録、魔導資料、王国の機密情報――」


 グレンが地下を指差す。


「それらすべてを利用して、魔王様を復活させる」


 俺は拳を握った。


「だから警察の捜査資料を狙ったのか」


「そうだ」


 グレンの目が赤く光る。


「王国中の魔力犯罪記録には、魔王復活に必要な情報が記されている」


「馬鹿な……」


 ミレイユが呟く。


「犯罪記録が、魔王復活の材料になるなんて……」


「記録そのものではない」


 俺は気づいた。


「事件の発生場所だ」


「……!」


「魔王軍は長年にわたって、特定の場所で魔法犯罪を起こしていた」


 俺は机の上にあった王都の地図を広げる。


 過去十年間の事件現場。


 盗賊。


 殺人。


 魔術事故。


 失踪事件。


 すべてを地図に書き込む。


「これを線で結ぶと――」


 ミレイユが息を呑む。


「巨大な魔法陣になる……」


「そうだ」


 俺は地図を睨んだ。


「魔王軍は犯罪を起こしていたんじゃない」


「魔法陣を作っていたんだ」


 グレンが拍手した。


「素晴らしい」


 その瞬間。


 地下から巨大な魔力が噴き上がった。


「もう遅い」


「何?」


「魔法陣は完成した」


 グレンが笑う。


「あと一つだけ足りない」


「何だ?」


「王族の血だ」


 その言葉を聞いた瞬間。


 ミレイユの顔が青ざめた。


「王女殿下……」


「そういうことだ」


 俺は走り出した。


「地下牢へ!」


「はい!」


 俺たちは階段を駆け下りる。


 地下牢。


 そこには――


 王女アリシアがいた。


 手足を拘束され、意識を失っている。


「殿下!」


 ミレイユが駆け寄る。


「まだ生きています!」


 俺は周囲を調べた。


 そして気づく。


 王女の手首から、一本の細い血管のような魔法具が伸びている。


「血を魔法陣へ送っている……」


 その瞬間。


 王女が目を開けた。


「……黒崎……」


「殿下!」


「逃げて……」


「何?」


 王女の瞳が赤く光る。


「私の中に……何かいる……」


 俺は凍りついた。


「魔王の魂……」


 王女の口から、別人の声が響いた。


「ようやく……器が完成する」


 王女の背後に、巨大な影が現れる。


 角。


 翼。


 赤い瞳。


 魔王。


 だが――


「まだだ」


 俺は拳銃を構えた。


「何?」


「魔王復活の条件が、王族の血だけなら――」


 俺は王女の手首の魔法具を見た。


「どうしてわざわざ王女を生かしている?」


 グレンの顔から笑みが消えた。


「……」


「お前たちは、王女を殺す必要がない」


 俺は気づいた。


「王女自身を、魔王復活の容器にするつもりなんだ」


 グレンが叫ぶ。


「黙れ!」


 巨大な魔力が爆発した。


 俺たちは吹き飛ばされる。


 そして暗闇の中。


 誰かが俺の耳元で囁いた。


「黒崎蓮」


「……誰だ?」


「お前がこの世界に転生した理由を知りたいか?」


 俺は目を見開いた。


「……何?」


「お前は偶然、ここへ来たのではない」


 赤い瞳が闇の中で笑った。


「お前をこの世界へ呼んだのは――」


 声が途切れる。


 次の瞬間、地下牢が崩れ始めた。


 俺は王女を抱き上げた。


「ミレイユ、逃げるぞ!」


「はい!」


 俺たちは崩壊する地下牢を駆け抜ける。


 だが、俺の頭からあの言葉が離れなかった。


 ――お前は偶然、ここへ来たのではない。


 もし本当にそうなら。


 俺の転生そのものが――


 魔王復活計画の一部だったということなのか。

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