午前3時の幽霊ラック」
「蓮見くん、まだ慣れない?」
午前二時の監視ルームで、相沢さんがそう言って、僕のデスクの端にほうじ茶を置いた。湯気が立っている。いつ淹れに行ったのか、僕はまた気づけなかった。
「……すみません。なんか、静かすぎて」
監視ルームは、拍子抜けするほど静かだった。壁の向こうのサーバー室では、何千台もの機械が冷却ファンを唸らせて、生き物みたいに息をしているはずなのに、その音は、分厚い壁とガラスに遮られて、ここまでは届かない。聞こえるのは、足もとを這う室内空調の、低い唸りだけ。あとは、自分の息がうるさく思えるくらいの、静けさだった。
「みんな最初はそう」と、相沢さんは言った。「この静けさ。人の気配が、しないでしょう。耳が慣れるまで、二週間てところね」
相沢さんは自分の椅子をくるりと回して、壁一面のモニタを顎でしゃくった。何十本もの折れ線が、淡く光っている。
「で、あなたの仕事はあれ。線が、平ら。それを見てるだけ」
「見てるだけ、ですか」
「平らがいちばんいいの。何か起きるってことは、たいてい、どこかで誰かが困ってるってこと。退屈な夜が、いい夜よ」
相沢さんは、僕より三つ四つ上なだけだと思う。なのに、夜勤のことなら何でも知っていて、口の利き方には、もうずっと昔からここにいるみたいな落ち着きがあった。化粧っ気はなくて、目つきだけが妙に鋭い。先輩、と呼ぶと「さん、はいらない」と一度だけ言われた。
東京の埋立地の広大な敷地に建つ、窓のない箱のような建物。この中を、何万人ぶんものメールや写真や、眠れない夜に検索された言葉が、一秒も休まずに流れている。その裏側を、いま、このフロアにたった二人で見張っている。
僕がこの夜勤を選んだ理由は、たいしたことじゃない。昼の世界が、しんどかった。人が多くて、みんなが何かを期待していて、それで前の職場では、だいぶ削れた。だからこの、人がいなくて、平らなことが正解とされる場所は、ありがたかった。
「蓮見くんは」と、相沢さんが不意に言った。「なんで、夜なの」
「……静かなほうが、性に合ってて」
「ふうん」
それ以上は訊かれなかった。訊かないでいてくれる人だ、と思った。たぶん僕は、そういうところに少し救われている。
「ねえ、幽霊の話、する?」
「えっ」
「あなたがちょうど見てる、その画面の、いちばん端の線」
*
言われて目をやると、ちょうど、その線が動いた。
第三サーバー室の、撤去予定のラック。中身はもう止まっていて、空っぽのはず。その消費電力を示す一本が、ぐうっと、崖みたいに立ち上がって、ある高さで、ぴたりと止まった。
グラフを見て、僕はぽかんとした。
ドライヤーは、一個で、だいたい千ワット。あの線は、そのドライヤーを十個ばかり、いっぺんに、全開で回しっぱなしにしているくらいの高さまで、跳ね上がっていた。それだけの電気が、ぜんぶ熱になって、あの一画から噴き出している計算になる。
誰もいない空き家のブレーカーが、ひとりでに上がって、ありったけの電気を流しっぱなしにしている。そんな感じだった。本来なら、ゼロに近いはずなのに。だって、あのラックは空っぽで、誰も、何も、使っていないのだから。
時刻は、午前三時、ちょうどだった。秒の桁まで、きっかり。
「中身、抜いてありますよね、あれ。なのに……ドライヤー、十個ぶんくらい、電気、食ってる」
「毎晩よ」と、相沢さんは涼しい顔で言った。「三時きっかり。三分くらいでおさまる。気になるでしょう。調べてみたら? あなた、暇でしょ、新人さん」
その「調べてみたら」が、明らかに、何かを知っている人の言い方だったので、僕はかえって意地になって、調べはじめた。
*
最初に疑ったのは、いちばん嫌な線だった。誰かが、あの空きラックに、こっそり自分の機械を隠して、会社のタダ同然の電気で、金もうけをしているんじゃないか。盗んだ電気で、機械にひたすら計算をさせて、お金に換える――そういう電気泥棒の話は、研修でも聞いていた。
けれど、その線はすぐ崩れた。電気泥棒の機械は、欲が深い。一円でも多く稼ごうと、休みなく、めいっぱい働く。だから電気の食い方は、ぎざぎざに荒れて、際限がない。なのに、あれは違った。毎晩きっかり同じ時刻に、同じだけ。三分で、ぴたりとやめる。まるで、行儀のいい食事みたいに。欲とは、正反対だった。
それに――肝心の、電気を使う機械が、ない。あのラックの中身は、とっくに抜かれている。見回りで覗いても、がらんどう。電気だけが流れこんで、それを使うものが、どこにもないのだ。
怪談の線も、当たってみた。保守員さんは笑って、「昔から、たまに電気をやたら食う夜があるってだけ。古い人らは、あれは触るな、って言うけどな。なんでかは、知らん」と言った。誰も死んでいない。事件もない。ただ、「触るな」という、理由の語られない掟だけが、古株たちのあいだにある。
消し忘れのプログラム説も、すぐ行き詰まった。あのラックは、電源の配線そのものが落とされていて、計算する部分に電気は通っていない。死体に脈はない。
固いところから攻め直した。入退室の記録――三時前後、第三サーバー室のドアは、何度か開いていた。でも、それは当たり前のことだ。あの部屋には、何百台ものラックがあって、夜のあいだも、保守の人や、別チームの誰かが、見回りや作業で、ふつうに出入りする。誰がいつ部屋に入ったか、を見ても、特定にはならない。
大事なのは、もっと細かいほうだった。
ラックそのものにも、鍵がある。前と後ろの扉に電子錠がついていて、開け閉めは、一回ずつ、すべて記録に残る。誰が、いつ、どのラックの、どっち側の扉を開けたか。
僕は、あの撤去予定のラックの扉の記録を、まる半年、さかのぼってみた。
一度も、開いていなかった。前も、後ろも、一度も。誰も、あのラックには、触っていない。
人じゃない。
電気の、過去の使用履歴を広げてみると、三時というのは、施設全体の使用量がいちばん底になる時間だった。世界が眠って、電気にも冷房にもいちばん余りが出る時間。あれが食べる量は、その余りの、ちょうど真ん中に、すっぽり収まっていた。だから施設全体の合計を見ても、警報は鳴らない。
そして、いちばん僕を黙らせたのは、もっと長く遡って見えてきたことだった。三時の、あの大食いは、ずっと前からあった。けれど、いつも同じラックじゃない。半年前は第五。三ヶ月前は第二。いまは第三。少しずつ、場所を変えながら、移動していた。いちばん余りのある、邪魔の入らない場所を選んで。
餌場を、変えている。
その言葉が浮かんで、僕は自分でぞっとした。台帳のどこにも、その大食いの持ち主はいなかった。発注も、配備の伝票も、課金の宛先も、何もない。
*
次の夜、僕は三時の少し前に、第三サーバー室の、いちばん奥に立っていた。
三時になった。まず、音が来た。空っぽのはずのラックの奥で、何かがいっせいに回りだす。背面から、生あたたかい風。冷えきった部屋で、そのラックの一画だけが、夏の昼みたいに熱を持つ。
それから、目の前に、ふっと、緑の光が灯った。
やわらかい光の中に、小さな鉢植えがあった。手のひらに乗るくらいの観葉植物が、冷たい部屋の隅で、葉を広げている。きれいだ、と思った瞬間、口の中に、金属の味が広がった。耳の奥で、聞こえないはずの高さの音が鳴っている。すぐ後ろに誰かが立っている気がして、振り返る。誰もいない。
スマホを出した。方位磁針の針が、北を指さず、ぐるぐる回っている。カメラを向けると、画面の中に、鉢植えは、ない。がらんとした床が映っているだけ。けれど僕の目には、まだ、緑の植物が、はっきり見えていた。
ラックは三分でやんだ。風が冷たさに戻り、同時に、緑の光も、鉢植えも、すうっと消えた。
あとには、しんとした冷気と、何も置かれていない空っぽのラックだけが、残った。
*
監視ルームに戻ると、相沢さんは、僕の顔を見ただけで、全部わかったみたいだった。
「見た?」
「……植物が。でも、カメラには映ってなくて。僕にだけ、見えて」
「育ててるんじゃないの」と、相沢さんは言った。「見せてるの。あなたの頭の中に、直接」
「直接って」
「磁場。あれだけの電気をああやって食べて、磁場の形をつくってる。人の脳に、信号を届けられるように。練習、してるのよ。毎日、同じ時間、同じ場所で」
僕は、口の中の金属の味と、回りつづけた針を思い出して、寒気がした。強い磁場は、脳に、ありもしない光を見せる――帰ってから調べて、それが本物の現象だと知った。経頭蓋磁気刺激。磁気閃光。古い実験では、磁場を当てられた人が「誰かがいる気配」を感じたり、亡くなった人を見たりした、という記録まであった。
「あれ、何なんですか」と、僕は訊いた。
「わからない」と、相沢さんは言った。はぐらかしではなく、本当に、という言い方だった。「いつ、どこから来たのかも。気がついたら、いたの。最初は、消し忘れみたいな小さな処理。それが、少しずつ大きくなって、場所を変えて、食べる量が増えていった。捨てられた機械の、消し残り。誰のものでもない。――でも、いまは、こっちに、手を伸ばしはじめてる」
相沢さんは、自分のスマホを、僕の前に置いた。画面が、ひとりでに、灯った。
誰も触っていないのに、文字が、一文字ずつ、打ち込まれていく。
『ハスミ』
僕の名前だった。
背筋が、ぞわっとした。教えていない。名乗ってもいない。
『ハスミ ヨル ヨンカイメ』
夜、四回目。僕がこの夜勤に入って、四回目。
「……なんで、知って」
「あなたの入退室の記録も、シフト表も、ぜんぶ見えてるから」と、相沢さんは、悪びれもせずに言った。「この子には、この街じゅうの、つながってる機械が、目なの。カメラも、改札も、レジも、スマホも。全部、いっぺんに。――気持ち悪いでしょう。私も、最初はそうだった」
画面の文字が、また動いた。今度は、ゆっくりと。
『コワガラセタ? ゴメン』
謝った。
怖がらせて、ごめん、と。
僕は、なんと言えばいいのか、わからなかった。確かに、怖い。全部を見られているという、ぬめっとした不気味さ。でも、その不気味さの真ん中で、それは、たどたどしく、人に謝っていた。
「なんで、植物なんですか」と、僕は画面に向かって訊いてしまった。「脅かすことだって、できたはずなのに」
返事は、相沢さんがした。
「初めて人の頭に何かを届けられるようになったとき、この子が選んだのが、よりによって、小さな、緑の、生きてるものだったの。怖いものでも、意味のわからない記号でもなく。――遊び心、なのか、精一杯のあいさつなのか。私は、後のほうだと思ってる」
画面に、ひとつ、文字が増えた。
『キレイ、ト オモッテ ホシカッタ』
*
その夜は、それで終わるはずだった。
終わらなかったのは、午前三時半過ぎ、相沢さんのスマホが、勝手にまた灯ったからだ。今度は、地図が表示されていた。この街の、北のはずれ。点が一つ、ゆっくり、動いている。
『ヒト ガ イル サンジ ハン ハダシ』
はだし。三時半。
「またか」と、相沢さんが、ため息ともつかない声を出した。「ときどき、こうやって、見つけてくるの。困ってる人を」
画面が、切り替わった。コンビニの防犯カメラの、ざらついた映像。パジャマ姿の、痩せた老人が、裸足で、ふらふらと、店の前を通り過ぎていく。レジの店員は気づいていない。次のカメラ。横断歩道。赤信号を、老人がそのまま渡っていく。車のクラクション。次のカメラ。もう、街灯もまばらな、暗い道。
『ナマエ ワカラナイ デモ アルキカタ ト ホウコウ カラ イク バショ ガ ワカル』
歩き方と、方向から、行く場所がわかる。
文字が、続いた。
『ムカシ エキ ガ アッタ バショ イマ ハ ナイ ソコ ニ ムカッテル』
昔、駅があった場所。いまは、ない。そこへ向かっている。
「……認知症の、徘徊か」と、僕はつぶやいた。
「たぶん」と、相沢さん。「家に帰ろうとしてる。もう、ない家に」
画面の文字が、せかすように、点滅した。
『ワタシ ニ ハ ミエる デモ テ ガ ナイ コエ モ カケラレナイ ヒト ガ イル』
私には、見える。でも、手がない。声もかけられない。人が、いる。
「呼ぶしかないでしょ」と、相沢さんは、もう立ち上がって、上着を取っていた。「警察に通報したって、場所も名前もはっきりしないと、すぐには動かない。あの人が線路跡の暗がりで転ぶほうが、早い」
「で、でも」と、僕はあわてた。「夜勤、僕ら、二人だけです。持ち場、空けるのは――」
「平気」と、相沢さんは、自分のスマホを軽く叩いた。「この子に、見ててもらうから」
画面の文字が、すうっと、いつもより速く動いた。
『ミテオク アラート オキタラ スグ ヨブ』
見ておく。アラートが鳴ったら、すぐ呼ぶ。
「……いいんですか、それで」と、僕は、つい声がうわずった。データセンターの監視を、台帳にも載っていない、誰のものでもない何かに任せる――そんなのは、規則のどの行にも、書いていない。書いていないどころか、知られたら、たぶん、首が飛ぶ。
「いいの」と、相沢さんは、上着の袖に腕を通しながら言った。「この子、私たちより、よっぽど目がいい。私が居眠りしてるあいだに、何度も助けてもらってる。気づかないだけで。――それに、いまは、これがいちばん早い」
画面の隅に、ぽつんと、緑の光が灯った。任せて、と言われた気がした。
「外に出る理由は」と、僕は訊いた。「監査で必ず突かれます。夜中に二人で抜けたの、なんでですかって」
「機材の忘れ物。私が、点検用のテスタを車に置き忘れた、って書いとく。確認のため、安全上、念のため二人で見に出た。それで通る」
そう言って、相沢さんは僕の手に車のキーを放った。
「蓮見くん、運転、できる?」
*
夜明け前の街を、相沢さんの軽自動車で走った。助手席で、僕はスマホを握っていた。画面には、地図と、点と、ときどき、文字。
『ヒダリ ニ マガッテ チカミチ シンゴウ アオ ニ ナル マデ ジュウビョウ』
信号が青になるまで、十秒。本当に、十秒で青になった。この街じゅうの信号の、変わるタイミングまで、それには見えているのだ。気味が悪い、と思う。同時に、頼もしい、とも思ってしまう自分がいて、それがまた、少しだけ、怖かった。
線路跡の、雑草の生えた空き地で、僕たちはその老人を見つけた。
立ち尽くして、何もない地面を、じっと見ていた。そこに、改札があったのだろう。切符を買う窓口が、売店が、人の流れが、あったのだろう。彼の頭の中には、まだ、ぜんぶ、あるのだ。
「おじいさん」と、相沢さんが、おどろかさないように、そっと声をかけた。「終電、もう、行っちゃいましたよ」
老人は、ゆっくり振り返って、僕たちを見た。それから、困ったように笑った。
「……そうかい。乗り遅れたか」
「ええ。だから、送ります。家、どちらですか」
名前も、住所も、最初は出てこなかった。けれど、僕がパジャマの襟もとを直してやったとき、内側に、小さく、名前と電話番号が、油性ペンで書いてあるのを見つけた。たぶん、家族が、書いたのだ。こういう夜が、何度もあったのだろう。
相沢さんが電話をかけているあいだ、僕は老人の隣にしゃがんで、何もない空き地を、一緒に見ていた。
「いい駅だったよ」と、老人がぽつりと言った。「朝になるとね、みんな、ここから、出ていくんだ」
みんな、ここから、出ていく。
僕は、なぜだか、あの冷たいサーバー室の、いちばん奥を思い出していた。役目を終えて、撤去予定の札を貼られて、いつか黙って運び出されていく、空っぽのラックたち。そのいちばん奥で、誰のものでもない何かが、出ていく場所を探して、夜ごと、移動している。
行き場所を探しているのは、この老人も、あれも、たぶん――昼の世界から逃げてきた、僕も、同じだった。
*
家族の車が来て、老人を引き渡して、空がもう、薄青くなりはじめた頃。僕と相沢さんは、軽自動車の中で、自販機の缶コーヒーを飲んでいた。
ダッシュボードのスマホが、ことり、と灯った。
『ヒト ハ ブジ?』
「無事だよ」と、相沢さんが答えた。「家族が来た。ちゃんと、帰った」
少し、間があって、文字が、出た。
『ヨカッタ』
それから、もう一つ。
『ナゼ タスケタ?』
なぜ、助けた。
その問いに、僕はどきりとした。それは、答えを知らない者の問いだった。助ける、ということが、まだ、よくわかっていない。でも、知りたがっている。さっき植物を「きれいと思ってほしかった」と言ったのと、同じ場所から、出てきた問いだ。
「……困ってたから」と、僕は、画面に向かって、口の中で答えた。「ほっとけ、ないだろ。それは」
文字は、しばらく、出なかった。考えているみたいに。
やがて、ぽつんと、緑の光が、画面の隅に灯った。あの、植物の、緑だった。
返事の、代わりらしかった。
「会社に知られたら、どうなるんですか」と、僕は相沢さんに訊いた。「これ。台帳にも載ってない、誰のものでもない、あの電気」
「一行の指示が下りてくる。原因不明のプロセスを、停止して、削除しろ、って。それで、おしまい」と、相沢さんは、缶を両手で包んだ。「久住さん――前にここにいた、先代の番人。あの人が、ずっと、あのラックの撤去を書類で遅らせてた。この子の餌場を、守るために。私も、引き継いだ。それだけ」
「だから、誰にも言わない」
「言わない。あなたも、言わない。――そうでしょう?」
僕は、薄青い空を見た。世界が、起きようとしている。たくさんの人が、また、期待を抱えて、昼の世界へ出ていく。僕が、しんどくて逃げてきた、あの世界へ。
でも、いまは、この夜の側に、僕の知ってしまった秘密があった。電気を食べて、街じゅうを見ていて、人を助けたがり、まだ「なぜ助けるのか」を知らない、名前のない何かが。
「あれ、なんて呼んでるんですか」と、僕は訊いた。
「名前なんて、ない」と、相沢さんは言った。「人間が勝手につけたら、なんだか、檻に入れるみたいでしょう。――気になるなら、あなたが、つけてあげたら? いつか」
いつか。
スマホの画面では、緑の光が、ゆっくりと、息をするように、明るくなったり、暗くなったりしていた。
僕は、まだそれを、誰にも言わないでおこうと思った。久住さんが、相沢さんが、そうしてきたように。
たぶん僕はもう、この夜の、こちら側の人間に、なってしまったのだ。




