第4話:友情の境界と虚無の喚声
第一部:ネフルス嵐
「連邦隊員諸君。直ちに自室に戻り、安全確保のための措置を講じよ。『ネフルス嵐』発生。繰り返す、ネフルス嵐だ。」
司令部からのアナウンスは、冷たく金属的な響きとともに学校の壁を揺るがした。部屋の奥で、ウィスタートは本から顔を上げた。周囲の灯りは深く強烈な青色に染まり、「アギト(顎)」の外に潜む危険を知らせる視覚的な合図だった。
ウィスタートはバルコニーへと歩み寄った。空は混沌とした、渦巻く電気を帯びた雲の塊と化し、ネフルスの雷鳴は古代の獣の咆哮のように森を包み込んだ。一瞬のうちに、手に持っていた本が手から滑り落ち、下の階へと引きずり込まれた。
「……ウィレムの本が……!」彼は苦悶の叫び声を上げた。
それは彼にとって唯一の避難所だった。ここ数ヶ月、クラスメイトたちは彼をまるで幽霊のように扱っていた。近づこうとするたびに、彼の血筋から発せられる異様な威圧感に怯え、距離を置こうとした。孤独な学校生活の中で、彼の正気を保っていたのは、リンネルトからもらった本だけだった。
ウィスタートはドアに駆け寄ったが、セキュリティシステムによってロックされていた。彼は閉じ込められた。ドアを叩きながら、彼の思考は数週間前のあの日へと遡った。あの日、すべてが変わり始めた日。
第二部:剣の覚醒
「私はミカス、連邦政府の高官だ。」
威厳のある女性が教室の前に立っていた。「今日、君たちは魔法が全てではないことを学ぶだろう。レベル0Aの悪魔と対峙した時、中途半端な魔法は役に立たない。命を救えるのは、直接的な『魔法の武器』だけだ。」
「これは刀だ。人間界、日本という国からの贈り物だ。今、この刀にその魔力を融合させる。」
ウィスタートが座る場所を探していると、いつものように陰険な囁き声が聞こえてきた。「気味の悪いガキ」「呪われた月の血」……。一人で作業を始めようとしたその時、机の下から少年が飛び出してきて、ウィスタートは驚いた。
「おや!新しい仲間だ!」
ウィスタートは驚いて床に倒れ込み、ミカスが彼の方を振り向いた。少年は立ち上がり、笑顔で手を差し出した。「僕はルルゲン・シグウィン。シグウィン商家の息子です。まだ人と話すのに慣れていないんです。ここに来たばかりで。あなたは……月のウィスタート?」
ウィスタートは立ち上がり、服についた埃を払いながら、彼の名前を訂正した。
「…ウィスタート。第九の青い月の王宮出身だ。」
「あ、ごめんなさい!ウィスタート、なんて素敵な名前!」ルルゲンの目は恐怖の表情を見せるどころか、純粋な好奇心で輝いていた。「友達になりましょう。政治的なことはさておき、あなたは素敵な人みたい。どう思う?」
ウィスタートの胸の奥底に、不思議な温かさが湧き上がった。初めて、誰かが自分のそばにいてくれたのだ。「…うん。会えて嬉しいよ」彼はかすかな笑みを浮かべながら答えた。
第三部:邪眼
二人の協力が始まった。雷を操る才能を持つルルゲンは、刀身に魔力の導管を描き、ウィスタートはエネルギー制御で水晶と金を融合させた。
「風に舞う青と赤の月のように、激しくぶつかり合う光を体現したい」ウィスタートは力強く言った。
しかし、最後の試練は容易ではなかった。目の前に立っていたのは、師匠の双子の片割れ、ヴィクだった。
ウィスタートはヴィクを分析的な目で観察し、奇妙なことに気づいた。「ルルゲン…彼の右目を見て。同心円が描かれている。あれは『魔眼』だ。我々の動きを予測している。」
戦いは一方的だった。ヴィクはまるで煙のように攻撃をかわし、瞬く間に背後に回り込んだ。
「これが『風の隠密』だ。俺の攻撃がお前を傷つけている。」ヴィクは歪んだ笑みを浮かべながら言った。
第四部:影からの警告
授業後、ルルゲンが疲れ切った様子で、しかし興奮気味に近づいてきた。
「やったぞ、ウィスタート!ハイタッチしよう!」
ルルゲンは手を差し出した。ウィスタートが友情の証として初めて手を差し伸べようとしたその時、冷たく低い声が彼の心に響いた。
「ああ、我が子よ…私を傷つけるだけの者の手に触れることなど、決してない。」ウィスタートは凍りついた。ルルゲンを見つめながらも、無邪気な笑みを浮かべたままだった。
「ごめん、ルルゲン。ちょっとめまいがするんだ。」ウィスタートは突然後ずさりした。「部屋に戻るよ。またね…今度。」
ウィスタートは走り去り、唯一の友人を廊下に呆然と残した。一方、学園の影では、イチスと名乗る存在が虚空から様子を伺っていた。
「私の駒を傷つけることは許さない。」その存在は少年を見つめながら囁いた。「特に君には、ウィスタート…ゲームはまだ終わっていない。」




