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『弟・異聞 』〜素に戻った五郎様と、時空を越えた共犯者たち〜  作者: 滝丸


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【コメディ回:幻の英雄と、剥奪された栄光 —— 江戸の泥より、友の筆】

会場:江戸城・大広間(アワード特設ステージ)

司会:本多正信(「作者の意向」という名の絶対王政を執行する男)


正信「ククク。さて、そろそろベストシーンを決定しましょうか」

忠勝:「(槍をドンと突き)決まっている! 第一部・三方ヶ原、殿を逃がすため殿しんがりを務めた俺が、敵軍をなぎ倒しながら吠えたあの台詞だ! 『殿の影(正体)はこの俺が守る! 影なくして光なし!』……これぞ『弟』を象徴する最高の名シーンだ!」

正信:「(算盤をパチリ)……平八郎殿、残念ながらそんな少年漫画のような台詞、一行もございません。貴殿の脳内補正1000%の幻につき、失格!!」

忠勝:「(ガクッと膝をつき)……俺の……俺の『影なくして……光なし……(ボソッ)』が……」

五郎:「(鼻を鳴らし)ハッハッハ! 平八もまだまだだな。やはりベストシーンといえば、第三部・江戸開拓の真っ最中、私が泥をかき分け、巨大なカボチャを植えて『これぞ泰平の薬草だ!』と大笑いしたシーンだろう! あの開拓者としての背中、最高だったよな!?」

監督(作者):「……五郎さん。あなた、本編ではカボチャなんて一回も植えてませんよ。」

五郎:「………………えっ?」

監督(作者):「それはあなたが番外編で勝手に騒いでいただけで、本編にはどこにも存在しません。主役なのに、自分の物語をカボチャで上書きするなんて……即・失格!!」 

会場に監督の溜息が響く。五郎は真っ白になって固まっている。

監督(作者):「……本当は、『第二部で、家康の名を背負い、泥だらけになって江戸城を築いていた五郎さんの姿』……あれを全編通しての第1位にする予定だった。主役として、一番美しくて泥臭い、最高の名シーンになるはずだったんだけど……」

五郎:「(パァァァッと顔を輝かせ)お、お……監督! やっぱり見ていてくれたんだな! 俺のあの、泥まみれの……!」

監督(作者):「……でも、自分からカボチャなんて妄想を語り出すような不真面目な主役は失格です! だから、1位を変えます。今回の『弟』全編ベストシーン、第1位は——」

(ジャカジャカジャカジャカ……ジャン!)


監督(作者):「最終章、天海(三成)が五郎の名前をこっそり系譜に書き加え、東照宮に収める……あのラストシーンです!!」


三成(天海):「…………っ!!」

三成は一瞬で顔を茹で上がったカボチャ(幻)のように赤くし、タブレットで顔を隠した。

「……な、何を。……あれは、その……系譜の整合性を保つための、至極論理的な……事務作業であり……。1位になるほどのことでは……(小声)……うれしくなど、ありませぬ……」

五郎:「(絶叫)監督ぅぅぅ!! 俺の泥まみれの城造りが、三成の事務作業に負けたぁぁぁ!? カボチャの……カボチャのせいなのか!? カボチャ一言で俺の四十四年の泥が……泥がぁぁぁ!!」

正信:「(ニヤリとして)……殿、お諦めなされ。黙って貴殿の『生きた証』を永遠にした三成殿の友情こそが、監督の心を射抜いたのです。……さて、1位の三成殿には、監督特製の『赤面防止の薬草茶』でも贈りましょうかな。ククク……」

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